U 入隊

「着いて来い」

 私がヴァリアーに入隊したのは13歳の頃だ。丁度XANXUSがボスに就任した頃らしい。私は当時フリーの殺し屋だった。

 私が生まれた家は裕福でなかった。と言ったらオブラートに包んだ言い方だが、母は所謂娼婦であった。誰かも分からぬ男との間に私を生み女手一つで育ててくれたが、流行病で亡くなった。適切な治療さえ受けられたらまず死ぬ事はない病気だったそうだが、その医療に行き着く術を知らない彼女は死んだのだ。
 それから突然社会に投げ出された私には出来ることがほとんど無かった。読み書きは出来る。だが戸籍が無い。母ですら救われなかったこの社会で戸籍すら無い私が生き残る術なんてほとんど無い。身を売るか命を賭すかだ。それは8歳頃の出来事であった為、肉体的に身を売ることは難しい。骨格が仕上がっていない私がそんなことをしたらすぐに体を壊すのは明白だ。

 そこで私は殺しの道を選んだ。なるべく年も性別も不明となるような装いと振る舞いを心がけてて依頼を引き受け始めた。殺すことなんて躊躇いさえ無ければ容易い。人間とは簡単に死ぬのだ。報酬はたくさん貰え、次第に普通の生活が出来る様になっていった。
 それでもやはり殺し以外で生きて行く術の無い私はひたすらに受けた依頼をこなす日々を送った。そしてその内の一つ、最後となったのがとあるファミリーの殲滅だった。
 そのとあるファミリーとは多方面から恨みを買っていた所であり、どのファミリーも潰す機会を伺っていたのだろう。そして適当な隙を見つけたファミリーだか関係者が私に依頼をしたのだ。一人で殲滅するように、と。

 私がこの筋で生きて来られたのはセンスとスキルがあったからで、当然この仕事もこなせてしまった。恐らく依頼した側からしても予想外であっただろう。そして最後の一人を殺したところで彼、XANXUSと出会ってしまったのだ。
 そこで腕を買われ、スカウトされた。保身のことを考えるとフリーにも限界を感じつつあった為、その話を飲むことにした。私の戸籍を作ることと引き換えにして。


 私の名前はアレスという。ギリシャ神話で登場する軍神の名である。私が血の池の真ん中に立っていた光景からXANXUSが名付けてくれた。彼は私の第二の親である。彼は名付けて以来名前を呼んでくれたことはないのだが。


 私が入隊してすぐ、ヴァリアーは反乱を起こした。可哀想なXANXUSの怒りの向くままに、私もそれに従おうと、彼の力になろうと懸命に戦った。だが彼はボンゴレ9代目によって氷漬けにされてしまった。

 それから私には生きる目標が出来た。それはいつか帰ってくるXANXUSの帰る場所を整えておくことだ。ヴァリアーは今ボンゴレ内において信頼が失墜している。この信頼を媚び諂って取り戻す気は毛頭ない。力さえあれば自ずと戻るものだ、と信じて。

 彼が帰って来た頃には私はもう背が15cm以上伸びてしまっていた。体格も変わり、彼と少しの時間を過ごした私は面影程度になってしまっていた。けれど、それからはもう二度と彼から離れないと誓いながら、日々の生活を過ごしている。

 まあ、誓ってから早速、ボンゴレ10代目とボンゴレリングをかけた戦いではゴーラ・モスカを使う為に私は外野にされていたのだが。あの時はムシャクシャして日本のヤクザをいくつか潰して日本国内のパワーバランスを壊してやった。

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