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 僕の育った村には教育機関と呼べるような立派な施設はなく村の子供たちが集まって勉強を教えてもらう所謂寺子屋のような所が一つだけあって、二分化されていた村でもそこに行けばみんな一つの村の子供だった
 僕とナマエはそこで出会った、いつも何を考えているのかわからないような表情をしているから他の子たちからは一線引かれていたけど僕にはそれが魅力的で仕方がなかった
 彼女が何を考えているのか知りたくて仕方がなくなった僕が彼女に接触を試みれば彼女はあっさりと何も考えていないと答えた、それがまた僕を引き寄せた


 村に日照りが続き作物の収穫量が激減したことを神の祟りだと言って若い女の生贄を捧げることになった
 二分化された村の向こう側はナマエが、こちら側は僕の妹が生贄に選ばれてしまった、なぜこの二人でなければいけなかったのか今でもその答えは出てきてない
 どちらを生贄にするか、今でいうサッカーで決めることになったのだが僕には勇気も無ければ勝つ自信も無かった
 こちら側のチーム、つまり僕が勝たなければ妹が生贄に、僕が勝てば彼女が生贄になる

 僕はもちろん妹をとった、血の繋がった実妹と勉強の時にしか顔を合わせない他人を天秤に掛ける方が馬鹿だと思う
 だから妹を救うために必死になって村中を駆け回った、村長に掛け合っても他の村人に訴えても首を横に振るだけ、僕の努力は全て無駄に終わったのだ
 喉が枯れるまで嘆願してもどんなに額を泥まみれにしようと誰も相手にしてくれない、ならばもう不正を行うしかなかった、それが当時の僕が考え得る最善の方法だった
 僕らと戦う相手のリーダーにわざと負けて欲しいと不正を持ちかけた、見返りは何でも用意するから妹を救ってほしいと頭を下げ続けると相手は了承してくれた
 神聖な試合を金で買ったことはすぐに村中に知れ渡り僕は村から追放され不正を行ったこちら側が生贄を差し出すことになった
 勝てると確信できる力と戦う勇気があったならもしかしたら妹を救えたかもしれない
 村から追放された僕は森の中でただひたすらに自分を呪った、僕が殺したも同然だ
 誰かがここで遊んでいたのだろう、転がっていた球をひたすらに蹴り続けた、食事をする暇も惜しんで息吸う時間さえ惜しいと思えるくらいに自分の弱さを憎み強さを求めた

 もう体も動かなくなり声すら出なくなったときだった、弱まっていく心臓の音を聞きながら思い出したのはナマエの顔だった
 思い出した彼女の顔はどれも笑っておらず結局僕は彼女の笑顔を見ることは無かったのだと死ぬ間際に思い知らされた
 彼女のことを知れば知るほど、今考えれば恋心だったのかもしれないが村を追放され死に逝く僕がその答えを導き出すなど烏滸がましい、彼女のことはすっかり忘れて死んでしまおうと考えた


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