「そうだ、ナマエもサッカーしない? あの頃と違ってなかなか面白いよ」 「……私は、いいや」 シュウの申し出は嬉しかったけれど今から始めたところでたかがしれてるしどうせなら私は観戦している方が楽しめると思う、生贄に選ばれる以前もそうだった 村の長を決めるときなど何かを決める時にいつもやっているそれを、私はただ観ているだけだった 私には関係ないと決め込んで勝敗など気にもとめずただ遠くから試合を観ているだけの存在だった それが急に当事者になってしまったけど生贄というあまりにも非現実的な言葉に違和感を覚えてしまい、結局最後の最後まで私は当事者に成りきれずに終わったのだ だからあの競技も今でいうサッカーも、私にとっては遠くから観ているだけの物なのだ 「じゃあさ、マネージャーにならない?」 「まねーじゃあ?」 シュウの話によればマネージャーというのはシュウたちがサッカーに打ち込めるよう身の回りの世話的なことをする役割のようだ 知っているのに知らない土地になってしまったここでは頼れる人などシュウしかいない 現在の島の状況を考えると私に断るという選択肢はなく、シュウと一緒にいられると言うこともあってか私は安心して了承した サッカー管理組織とやらはマネージャー不足なのか私はすぐにマネージャーになれた 自慢ではないが昔から要領が良かったためにいマネージャーの業務はすぐに覚えられた、シュウの知り合いということもあってか私はエンシャントダークというチームに配属された 「今日からマネージャーをしてくれるナマエだよ」 「……よろしく」 我ながら愛想の少ない女だと思いながらも彼らは快く受け入れてくれ、そのまま練習が始まった エンシャントダークは森の中でそのしなやかさを生かして特訓をしているみたい それからシュウが何も言わないのを良いことにずっとくっ付いていた、木登りなどは昔から得意ではなかったのでシュウに手伝ってもらって登った 木の上でぼんやりと島の外を見ているシュウを見ていると彼の眉がぴくりと動いた、どうやらこの島に誰かが来たらしい 視線の先を見やれば大人たちが私たちと同じくらいの子達を連れて行くのが見えた、けれど私には関係ない 視線をシュウに戻せば目が合い自然と見詰め合う形となる、彼の暗い瞳には何かを求めるような貪欲さが垣間見える 「シュウは、何を求めているの……?」 思わず聞いてしまった、シュウがこの島に留まってでも追い求めたいものは、そんなに大切なものなのだろうか、妹を置いてでもここにいる理由 「……強さだよ」 小さく呟いたシュウの言葉は私に届くことなく風に消えていった |