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片桐高校事件簿後編(宮村視点)


 俺は今生徒会室の向かいの教室にて息を潜ませ携帯を構えている、目的は生徒会室の中の様子を隠し撮りするためだ

 ことの発端は綾崎さんに用があった堀さんにくっついて生徒会室へ行くと何かを叩く音がして中を覗けば柳くんが名字さんを抱き締めていた
 堀さんが会長に問いただせば理由はすぐにわかった、理由を聞いた堀さんは名字さんに抱き付いて辛かったでしょう、と頭をなでてあげていた
 すると名字さんは再び涙を流して堀さんに抱きつき返していた、そしてすぐに堀さんが打倒ストーカーを掲げたのだった

 作戦はこうだ、俺たちが生徒会室から出て行くふりをして近くに待機し、名字さんがストーカーに会いたいとメールをする、そしてのこのこ現れた所をぶちのめす、至ってシンプルだが相手がどんな奴かわからないので一応井浦くんといしかあくんにも応援を頼んだ
 そしてそれぞれ帰るふりをして俺と堀さんと柳くんは向かいの教室、生徒会メンバーと井浦くんといしかあくんはトイレ、一人生徒会室に残った名字さんは心細いことこの上ないだろうが我慢してほしい
 そうこうしている内に生徒会室に誰かが近づいてくるのがわかった、見たことない人だったがここの制服を着ているところを見ると片桐の生徒らしい
 男が生徒会室に入ったところで俺は生徒会室の様子をムービーで収める係に、堀さんたちは何が起こっても良いよう移動して生徒会室の扉に張り付いた

「名前ちゃんからアプローチしてくれるなんて嬉しいな」
「……」
「柳くん止めて俺にしなよ」
「……もう止めて」

 息遣いの荒い男と距離を取って言葉を絞り出した名字さん、携帯のカメラ越しでも微かに震えているのが分かる
 辛そうだけどあと少し、決定的な瞬間さえ捉えればあとはこっちのもの、堀さんに至っては今にも飛び出しそうだ、般若が見える
 柳くんをちらりと見やれば眉を寄せて男を睨みつけている、普段から怒りと無縁な柳くんしか知らないので怒った柳くんは初めてみたと思う
 とりあえず視線を元に戻すと名字さんと男の距離がいっそう近くなっているではないか

「す、ストーカーはもうやめて!」
「それは正式にお付き合いするってことだね、嬉しいなぁ、名前ちゃんから告白してくれるなんて」
「ちがっ……」

 ストーカーって気持ち悪い、進藤はまだましな方なのだと思い知らされたよ
 男は名字さんの手を握って饒舌に話し始めた、もうすぐ突入だ

「名前ちゃん、俺はいつも君を見ているよ、どこにいても、どんなときも」
「気持ち悪い……」
「昨日は確かフリルだったね」
「うう、明音……!」

 やばい、そう思ったときにはすでに遅く、名字さんの瞳から涙がこぼれていて、堀さんたちが生徒会室に突入していた

「名前!」
「もう大丈夫よ!」
「明音ぇ、京子ちゃん、みんなぁ……」

 堀さんに抱きしめられた名字さんを確認した柳くんは男の前へと行き耳元で何かを呟いたようだ、遠くてよく聞こえない
 何かを言われた男はみるみるうちに顔を青くして生徒会室から走り去った、心なしか会長たちの顔も青い
 それを確認した俺は録画を終了しみんなの輪に加わることに、柳くんの言葉を聞いた人たち曰く、もうストーカーはされないとのこと、何言ったのか気になる

「宮村あんたは聞かない方がいい」
「……うん、そうする」

 名字さんを愛おしそうに抱きしめる柳くんを見て思った、柳くんを怒らせるべからず、特に名字さん関連で


 後日、廊下で名字さんにお礼を言われた

「あ、宮部くん、あの時はありがとう」
「宮村です」


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