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踊る恋愛白書(仙石視点)


 事件は会議室でもなければ現場で起こってもいない、昼休みの生徒会室で起こったのだ

「名前ちんとやなぎんってウブだよね!」

「えっと……、何が?」
「恋愛だよ! れ・ん・あ・い!」

 今日は生徒会メンバー三人プラス柳夫婦と宮村夫婦でお昼ご飯を食べていたときにレミが放った一言により室内が静かになった
 柳くんが初恋で初めての彼氏である名前にとって恋愛は慎重にならざるを得ないものらしくウブと言えばウブだ、周りから見ても小学生の初恋のようだ
 まあ、その分のストレスは主に俺で発散しているようだが

 図星を突かれたのか名前は明らかな動揺を見せている、普段は少々強気な性格なので桜と宮村夫婦は少し珍しいものを観ているような目をしている
 ちなみにレミはその状況が楽しいのか真っ先に名前へ詰め寄った

「だって名前ちんたちの話聞いてるとキスもあんまりしてないみたいだし」
「それは、だって……ねえ、明音……?」

 名前は隣で未だに驚き固まっている柳くんに助けを求めるよう話を振った
 みんなが柳くんと名前に注目している、京ちゃんに至ってはニヤニヤと今にもお節介を焼かんばかりだ

「やなぎんもちゃんと甲斐性見せなきゃだめだよ!」

 柳くんは何度か目をぱちぱちさせてようやく現状を把握したようで顔を赤くする、こんな柳くんちょっとレアかも

「そうよ! ちゃんとすることはしないと!」

 とうとう京ちゃんも入ってきて、二人して柳夫婦をからかっている、二人とも口元がにやけているのがバレバレだ
 というかこの二人は自分たちのことを棚に上げて何を言っているんだ
 宮村くんも京ちゃんを止めようとしているが無視されている、哀れ宮村くん

「会長も止めてよ!」
「ごめん、俺には無理だ」

 名前は普段堂々としているせいか責められるのには慣れていないようで柳くんと一緒に顔を赤くしている、この顔もレアだ

「あの、えっと、その……」
「明音ぇ、うぅ……」

「名前……逃げよう!」
「えっ!?」

 何を考えたのか柳くんは名前の手を掴んで生徒会室から走り去った
 名前は訳が分からないといった感じに柳くんに引っ張られてゆく
 その後をレミが追いかけていったのを俺は止め損なってしまったが、京ちゃんの方は宮村くんがなんとか止めていた、ナイス!

 しばらくしてレミが満足げに戻ってきた

「逃げられた!」
「その割には楽しそうね……」
「だってあの二人ウブすぎるんだもん!」
「あ、それわかる!」
「堀さんは分からなくていいから!」
「あー、楽しかった」
「明日は何のネタでからかおうかしら」

「お前ら鬼か」

 レミと京ちゃんの笑い声が響く中で、俺は食べかけのお弁当箱の蓋を閉めた


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