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片桐高校事件簿中編(桜視点)


「もしかしたらやなぎんからのラブメールかも!」

 放課後、生徒会室に集まった私たちは机上で震える携帯電話の存在に気づいた、本体の色とストラップで名前のものだとわかった
 最初はおもしろ半分だった、
レミの言葉に私も仙石くんも好奇心が押さえられなくなっていたんだ、なんてただの言い訳だ
 私たちは名前のプライベートに介入してしまった、してしまったと言うと介入したくなかったように聞こえるがそうではない、むしろ介入しなくてはいけない問題だった

 二桁の未読メール、差出人は柳くんではない人、中を見た私たちは絶句した、気持ち悪い

「……名前、これはどういうことだ?」
「どういうって……、えっと、」

 タイミングが良いのか悪いのか名前が生徒会室に入ってきた、顔には絶望の色しかない
 仙石くんが名前に問いかければ口ごもって扉の前から動こうとしない
 そんな名前にしびれを切らしたのか仙石くんは名前の元まで行き、腕を掴んで引きずってきた

「名前ちんストーカーされちるの!?」
「あ、その、明音には言わないで!」
「いつからだ?」
「……二週間前くらい」

 何一つ悪いことはしていないのにばつが悪そうに目を伏せる名前、あ、そうか、今まで黙っていたいたのは悪いことだ
 いつもとは立場が逆転している仙石くんと名前に私は口を開く、一応柳くんには知らせた方がいいと
 すると仙石くんも私の意見に同意してくる、彼の行動は素早く、気付けば自分の携帯で柳くんを呼び出していた

「止めてよ翔! これは私の問題なの!」
「何言ってるの! 名前ちんの問題はレミたちの問題だよ!」
「そうだ、もう俺たちの問題になった」
「違うし! 黙れチキン!」

 悪態をつくもいつもの威勢はなくただ悪口を口から出しただけのよう
 それからほどなくして柳くんが生徒会室の扉をノックした

「仙石くんどうし……名前?」
「あ、かね……」
「柳くん、単刀直入に言うけど、名前はストーカーされている」

 仙石くんが言い放つと名前の顔は先ほどより絶望の色が強くなる、柳くんは明らかな動揺が見られ、私とレミはただ黙って見ているしかできない
 名前、一見仙石くんは酷いことをしているように見えるけど全て名前のことが大切だからしていることなのよ

「何で黙ってたの?」
「明音に迷惑かけたくな、!」

 ぱしん、乾いた音が室内に響き私たちは目を見開く、柳くんが名前を平手打ちしたのだ
 名前の目には涙が溜まり、柳くんは今にも泣きそうな名前を抱きしめる

「何でも独りで抱え込まないで、僕に頼ってよ」
「ごめ、なさい……」

 ぽろぽろと涙を零す名前は柳くんに応えるよう何も言わずに抱きしめ返した
 名前、あなたは愛されているの、だからもっと私たちを頼ってよ


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