話はナマエの雄英高校入学の数ヶ月前に遡る。 魔力供給の関係でサーヴァント専用の別宅で生活をしているナマエが雄英高校ヒーロー科からの合格通知を受け取ってから数日後。 「これは?」 「ヒーロー服の申請書。後で郵便局まで行って郵送するの」 「そうですか」 「ちょっと本宅行ってくるわね。すぐに戻るから」 「はい、行ってらっしゃい」 ナマエがいなくなった隙に天草は封筒を開け中の書類を取り出す。 ヒーローコスチューム要望書と印刷された下にはデザイン案を描くであろうスペースがあるのだがほとんど何も描かれていない。ただ彼女の筆跡で“魔術師っぽい服装でお願いします”とだけ記載されている。 「……」 それを確認した天草がどこからか取り出したペンでその記載を二重線で消すと、空いているスペースに衣装のデザインを描き始めたではないか。 いつにも増して真剣な表情の彼が気になったのか他のサーヴァントたちもテーブルの周りに集まってくる。 ニト「あ! それは同盟者が提出する予定の書類では?」 天草「そうですよ。彼女が着るヒーローコスチュームの原案です」 ニト「えぇっ。か、勝手にそんなことをして良いのですか。怒られますよ!」 天草「ええ。ですから内緒にしておいて下さい」 クー「おいちょっと待て。何でお前と揃いの外套なんだ」 天草「そこは相棒特権ということで」 マユ「ちょい待ち。いつからアンタが相棒になった?」 天草「……初めて召喚された時からですかね」 エミ「過ごした月日と親密度は必ずしも比例するとは限らん。それに、それを言い出したら私とナマエは英霊になる前から……」 天草「それよりさっさと終わらせないとマスターに気づかれます」 エミ「おい!」 マユ「裁定者。スカートはもうちょい短い方がオレ的には至高なんだが」 天草「……膝上数センチまでが許容範囲です」 クー「ブーツはショートの方がいい。あとストッキングより生足の方が良い」 天草「ケルトの英雄も好き者ですね。ですが生足は却下です」 エミ「……ストッキングは黒にしたまえ」 ナイ「失礼。この案では応急道具を入れる部分がありません」 天草「ああ忘れてました。ヒーローコスチュームですから必要ですよね。となるとここをこう……」 ナイ「それと、ちゃんとスカートの下にペチコートを入れないと動いた時に見えてしまいます」 天草「なるほど。やはり女性の衣装には女性の意見が大事ですね」 ニト「ではお供にミニメジェド様を……!」 天草「却下」 こうして間関諤々な議論の末ナマエのヒーローコスチュームは、彼女の知らぬ間にサーヴァントたちによって修道服のようなものへと変えられてしまったのであった。 そのことに気づかぬまま書類を郵送するまで、あと四十二分。 [9.5]おまけ・コスチュームデザインについて prev back next |