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▼異国溺泉海賊編04

 ローグタウンの在る島へと着いた麦わらの一行は、各々グランドラインに入るための準備を整えることとなった。
 名前と良牙はというと、島に着くまでの短時間でこの世界のことについてをナミに教わり、彼女から持たされた小遣いをローグタウンを歩いていた。
 誰かと共に行くことも進められたかが彼女は一人で大丈夫だと言い切った。ナミやサンジは年の割にはしっかりした子だと感心していたが、実年齢は彼女らとなんら変わりない。ゾロは相変わらず信用こそしていないが警戒は解いているようだ。

 頭に黒豚を乗せ、店に入るでもなくただ歩いている少女。二人きりのため口調も元に戻っている。
 周りに保護者も連れず、この町の治安が良くなければ人攫いに目を付けられているところだ。ただし実際に人攫いが彼女に目を付けたところで攫うことは不可能なのだが。

「……本当に違う世界に来ちゃったのね」
「ぶきき、ぶき」
「ふふ、その姿じゃ何言ってるか分からないよ」
「ぶき……」

 近くの店へ入りお湯を拝借し、人気のない路地裏へと入り黒豚にお湯をかける。湯をかけられた黒豚は一瞬のうちに人間の男性へと姿を変えた。
 頭にバンダナを巻いた男性こと良牙が名前の手を握ろうとした時だった。

「りょ、良牙くん服! 服着て!」
「あわわわ!」

 頬を染めた名前が、顔を背けながら鞄から取り出した彼の服を差し出したのだ。
 そこでようやく彼も、自分が一糸纏わぬ姿であることを思い出した。彼は羞恥で顔を真っ赤にさせ、差し出された服を着た。水をかけて動物の姿になった際、着用していた衣服が全て落ち脱げてしまうため、湯をかけて元の姿に戻ると全裸になってしまうのだ。
 名前の場合は子供服を着ている状態で元の姿に戻ると服が破れてしまうので、極力入浴時以外にお湯を被るのは避けている。一応着替えは鞄に入れてはあるが、嫁入り前に肌を大衆に晒すのは遠慮したい所。嫁入り後も遠慮するのだが。

 袖口と大きく開いた首周りのみが白色の、黄色い中華風の服に、下は黒いズボンで脚の部分に紐が巻かれている。しっかりといつも着ている服に身を包んだことを確認して、再び名前の手を握る。

「名前さん! すまねぇ、俺があのとき足を滑らせなければ今頃は……!」
「そんなこと言わないで、良牙くんは私を助けようとしてくれたのよ。それに元はと言えば私が……と言うよりあのパンダが悪いのよ。そうよ、あのパンダ親父が自分の体型を考えずに振り返ったりするから私が押されて……」
「あ、あの、名前、さん……?」

 異国溺泉へ落ちた時のことを思い出し父親に対する怒りが沸々と沸きあがる名前。背後には闘気がめらめらと燃え上がっている。油断していた名前にも非はあるがパンダ化していたことを忘れていた玄馬にも非があるのは確かだ。
 しかし、今更誰が悪いかなどど言い合っても現実は変わらない。今は異国溺泉の情報を手に入れ元の世界に帰る方が先決。それまでは良牙と名前の二人だけで何とかするしかない。
 逆を言えば、それまではシスコンな彼女の弟も、うざったらしい久能も、邪魔をする者は誰もいない。名前との仲を深める千載一遇のチャンスとも言い換えられる。人間万事塞翁が馬とはよく言ったものだ。

「とにかく、俺は何が起ころうと貴女を守り通す」
「うん、ありがとう」

 下心も一割ほど含んだ決意。これからどんな場所へ行きどんな相手と対峙しようと自分が名前を守り通す、嘘偽りのない良牙の決意。
 良牙の言葉に、名前ははにかんで笑った。


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