▼オリオンになぞられて07 「楓、行こう。貴女のお父さんの所へ」 「お父さんを返してー!」 「マーベリックだよ!」 「そうだった! 楓久しぶり〜!」 「私も名前に会いたかった!」 「触っちゃダメだぞっ! 能力がコピーされるからな」 「タイガー! メカニックルームに貴方のスーツがあるから使って!」 「私も行くね。楓、また後で!」 「うん! 名前頑張って!」 「名前明るくなったなぁ」 「屋上にみんながいない!」 「ジャスティスタワーのどこかにそれぞれ閉じ込められてる……でもそれが何処なのかは解らない……!」 「私のNEXTをご存知ですよね」 「千里先をも見通す能力。通称“千里眼”だろう? 全く便利な能力だよ」 「確かに、私の能力は通常肉眼では見ることが不可能な場所や人物を、それこそ千里先まで見ることが出来ます」 「……でもそれだけじゃないんです」 「何だい?」 「他人の……心の中も見ることが出来るんです」 「おお、それは知らなかった。だから私を警戒していたのか、納得したよ。……その能力は惜しいが、もうヒーローTVには必要ない。お前がいなくとも視聴率は取れる、お前はもう用済みだ」 「虎徹! 無理だよ!」 「名前!! 大丈夫だ」 能力が減退してるのだから大丈夫な訳がないのに、その表情に何も言えなくなってしまった。 「早く打て!……名前、ありがとうな」 「虎徹っ!!」 「楓と、バニーを、よろしくな」 「虎徹ダメ! しっかりして!」 「名前! 貴女知ってて止めなかったんですか!?」 「だって!……だって、それが、虎徹の意志だから……!」 あの時の顔は名前に友達であり家族だと言った時の、ヒーロー引退のことを話していた時の、それだった。 全てを覚悟したその姿を見て、止められるわけがない。 「楓っ!」 名前は覆い被さるように楓を守る。 「づああぁっ!」 「名前ッ!」 2つの銃声と、2人の悲鳴。 停止したアンドロイドに囲まれていたヒーローたちの意識はすぐさまそちらへと向く。 そこには楓を人質にしているマーベリックと太ももから血を流している名前の姿。 「そこの死に損ないが本当に死ぬことになるぞ」 名前は能力を使い、マーベリックが引き金を引く瞬間に体を反らせ、眉間に当たるのを防いていた。 代わりに銃弾に弾かれバイザーセットが外れてしまい、髪の色が本来の水色に戻り目元も露わになってしまう。 ヒーローTVのカメラに素顔を晒しているが、そんなことはどうでもよかった。 今の彼女を占めるのは楓を守るという使命のみ。 焼けるような熱さに耐えながら、マーベリックの足にすがりつく。 「……楓に、手を出すな」 「私に触るな、死に損ない」 マーベリックは銃口を彼女の眉間に向け、引き金に指をかける。 「名前!」 能力を使ってしまったバーナビーがいくら手を伸ばしても、ただ虚しく空を掴む。 マーベリックは躊躇することなく人差し指に力を入れる。 ぱんっ。 「名前ーッ!!」 辺りにはバーナビーの悲痛な叫びだけが響いた。 |