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▼6.献立会議は順調です

 宿舎の食堂で私と春奈ちゃんは今後の食事メニューについての小さな会議を開いていた。
 とりあえず向こう一週間の献立を、選手たちの好物等を配慮しつつ和洋中の偏りの無いように立てた。さらには旬な食材を取り入れたりデザートも用意して調理する側にも予算的にも問題の無いような献立が出来たと思う。
 後はこれを私がパソコンに入力し選手たちの練習量を考慮しながら栄養のバランスとカロリーが見合うよう食材を変えたり量を決めるだけ。まあ一週間分なのでまた春奈ちゃんか他のマネージャーたちと一週間分ずつ食事内容を決めていきましょう。

「よし。お昼ご飯作るまでまだ時間もあるし、少しお茶でもしてお話しよっか」
「じゃあ私紅茶入れますね!」
「ありがとう」

 ひと段落着いたところで食堂の窓からグラウンドに目をやれば、私の渡した練習メニューをこなしている選手たち。
 紅茶を用意してくれた春奈ちゃんに再びお礼を言って二人で一息ついた。紅茶おいしい。

「そういえば名前さんってお兄ちゃんと面識があるんですか?」
「お兄ちゃん……ああ、鬼道くんね、あるわよ」

 確かあれは去年のフットボールフロンティアの時期、影山さんの依頼で帝国学園へ行った時だった。
 いつものようにマネジメントの依頼で、四十年間無敗を誇っている帝国学園サッカー部だったがより確実なものにするために私のマネジメントを必要としていたらしい。
 その際にキャプテンである鬼道くんを始めとする帝国イレブンと出会ったのだ。FFの結果はもちろん帝国の優勝で幕を収めた。

 でも何故そのことを春奈ちゃんが知っているのかと疑問に思ったが私がコーチとして現れたのは昨日。なんら可笑しな点はなかった。

「昨日お兄ちゃんに名前さんのことを聞いたんです! 同い年なのに賢くて誰よりも大人な人だって」
「ふふ、そんな大人じゃないよ」

 皮肉なものだ。悪魔を使役するようになって考え方も言動さえも歳不相応になってしまった気がする。
 まあこれも私自身なのだから仕方無いことだけど、事務所にいるであろう面々の顔を思い出している私は相当変な顔をしていたのか春奈ちゃんが小さく笑った。

「そんなに変な顔してた?」
「いえっ、可愛らしい顔でした!」
「もー、嘘ばっかり」
「嘘じゃないですよー」

 どうだか。わざとらしく頬を膨らませれば春奈ちゃんが再び笑う。釣られるように私も笑った。

 時間もいい頃合いなので出来上がった献立を元に、春奈ちゃんと二人で昼食作りを開始することにした。
 代表選手とマネージャーと私、監督は大人なので量は多めに、おかわりのことも考えると人数分より多めに作っておこうということで、昼食作りは大忙しね。

 調理中も私たちの会話は途切れることがなく主に春奈ちゃんが話題を振ってくれる。年頃の女の子は話題も可愛らしい。最初はヒロトとリュウジとの関係を聞かれた。昨日私と親しげに話しているのが気になったみたい。それから話はころころと変わっていき、最終的に早河楓の話になっていた。

「名前さんは早河先輩のこと、どう思いますか?」
「早河さんね……あの子仕事してないでしょ」
「そうなんですよ! 私たちが一生懸命仕事しているのに自分は応援しかしてなくて、なのに自分が用意しましたって顔してドリンクとかタオルとか配るんですよ!」

 まさに爆発したという風に春奈ちゃんの中に溜まっていた早河さんへの鬱憤が口から次々と出てくる。
 選手の中でもかっこいい人しか応援はしないし声もかけない、女生徒への態度も悪いし、そのことを言っても誰も信じようとしない。
 むしろ早河さんを非難した人が悪者であるように仕向ける。意地の悪い性格をしているのだとため息を吐いた。
 春奈ちゃん自身、初めて会った時は可愛らしく態度も愛想も良かったので良い先輩だと思っていた分、本性を見たときの裏切られた感じが未だに忘れられないのだと、泣きそうな顔で私に訴えた。

「大丈夫よ、私は春奈ちゃんたちの味方だから、何があっても私は貴女を裏切らない」
「……っ、名前さん!」

 とたんに春奈ちゃんの大きな瞳から涙が溢れ、私に勢いよく抱きついた。
 それだけなら良かったのだけど生憎今は調理中、私の右手には包丁、春奈ちゃんの傍らには火にかけた寸胴なべ、この状態で抱きつくのは危ないから!

「あっ、ちょっと待って、危ないって! 包丁!」


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