▼4.第一接触難航中 なんやかんや三人で思い出に耽っていると向こうから派手な頭の女の子が走ってきた。もちろん早河楓だ。 女子には無関心という話だったので当然のごとく私は無視されヒロトたちに話しかけるものだと思っていた。 「芥辺コーチはじめまして、マネージャーをやってる早河楓です! これからよろしくお願いしまぁす」 そう思っていたからこそ彼女の行動は意外だった。私が上の立場だから媚びを売っているのか、それとも根はよい子なのか。 頭の中で考えを巡らせながら私の方こそよろしくね、と手を差し出せばその手は空を掴んだ。 挨拶はしてくれたのに握手は拒否されてしまった。つくづく噂どおりの子なのかもしれないと溜め息を吐く。 「そんなことよりヒロトとリュウジもあっちでみんなと一緒にお話しよ?」 「……ごめん。俺たち今は名前と話してるんだ」 「そっか……。ううん気にしないで! コーチさんとお話済んだらアタシとお喋りしようね!」 そんなことより呼ばわりされた私が木の陰から出てきたアスタロスを呼びつければ笑顔で私の元へ駆け寄ってくる。 この子は子供の演技がとても上手い。一般人に姿が見えるようにしている時は徹底的に子供を演じているのだ。 「可愛い! コーチの弟ですかぁ?」 「ええまあ」 「こんにちはお姉さん」 アスタロスがぺこりとお辞儀をして早河さんに笑顔を向ければ彼女はますます黄色い声を上げる。ちょっとうるさい。 満面の笑みでアスタロスの頭を撫でていると豪炎寺に呼ばれるがままに駆けて行った。まったく忙しい限りだこと。 早河さんが去っていったのを見計らってリュウジに本当に弟なのか聞かれた。今は一般人にも見えるようにしているとはいえこの子が悪魔であることは二人には言えない。 考え抜いた結果曖昧な笑顔を返すという答えに出た。普通の人ならば分からないだろうが二人は育ってきた境遇が違う、それ以上聞いてはこなかった。 「名前、この人たちは……?」 「私の幼馴染よ。覚えてない?」 「うーん、名前以外に興味ないから」 「それもそっか」 「? 名前ちゃん何の話してるの?」 「ううん、何でもない」 最後にお日さま園にいたときの私やヒロトたちは五歳くらいだったからなぁ、まあ覚えて無くても仕方ない。 アスタロスの手を握って、思い出したように私が気になっていたことを聞いてみることにした。 「それより、二人はあの子のことどう思う?」 「どうって……この間初めて会ったんだけど。何と言うかお日さま園にはいないタイプだよね」 「俺あの子苦手! 何か怖い……」 本性の見えない女の子ほど怖いものはないよね、とリュウジが眉間にしわを寄せた。 確かに見た目は可愛くて性格がきつい子は私も好きになれないや。どうやらヒロトも同意見のようで裏のありそうな子は苦手らしい。 もう大体察しているだろうけど一応早河楓について話しておくことにした。幼馴染がぶりっ子にデレデレしている様は見るに耐えない。 まあ早河さんの全て否定する訳ではないけれど、一応気をつけてという事と彼女に何かしらの変化があれば言ってほしいという事を伝えたかっただけ。 私の話を聞き終えて、リュウジはこれから大変だと眉尻を垂れ下げ、ヒロトは何も言わずただ頷くだけだった。 「……そういえばまだ言ってなかったっけ、二人とも日本代表おめでとう」 「ありがとう、名前コーチ」 「コーチお手柔らかにね!」 |