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▼3.五年越しの再会

 名簿でも見た懐かしい顔が二人ほどいたのだけど私は気づいていない振りをして、自己と娘の紹介をする久遠監督を尻目に静観した。
 久遠監督の視線が娘さんから私へと移動したので私はゆっくりと瞼を下ろし、どんな紹介をしてくれるのかただ黙って待つ。

「それから、今日からお前らのコーチとなる芥辺だ」

 マネジメントが主な仕事だからてっきりマネージャーになるもんだと思っていたのだけどびっくり。コーチですか。
 しかしこれも私が自由に行動が出来るようにという久遠監督なりの配慮だろう。

 おもむろに瞼を上げ選手たちを一瞥する。ついでにマネージャーたちも見やり、再び選手たちに目線を向ける。
 それなりの実績はあるけれど同年代の女がコーチだなんて選手たちは納得いかないようで、案の定ピンク坊主の染岡くんなどは怪訝そうにこちらを見ている。

「芥辺名前です。容赦するつもりは微塵も無いので覚悟してくださいね」

 微笑んで見せれば何かが伝わったのだろう、選手たちに緊張が走るのが手に取るように分かった。
 監督に抱えていたバインダーを手渡せば代表選手の名前が読み上げられていく。私と久遠監督で選び抜いた選手たちは、国内では強いかもしれないけれど一度国から出てしまえば勝つのは厳しいだろう。
 その分鍛え甲斐もあるし、これからの伸びしろも楽しみなのかもしれない。

 あるいは笑い、あるいは悔し泣き、またあるいは嬉し涙を見せる結果となった選考会は最後に円堂守の名前を呼び上げられ終わりを告げた。

 早河さんが円堂や風丸に近づいているのを横目に彼らが私の元へと来て、懐かしい笑顔を向けてくれる。

「名前ってあの名前だよね?」
「そうだよヒロト。それともヒロちゃんの方が良かった?」
「もう、その呼び方はやめてよ」

 久しぶりの再会にちょっと意地悪を言って悪戯っぽく笑えばヒロトも一緒になって笑ってくれる。

「名前ちゃん! 俺も覚えてる?」
「……どちら様でしたっけ?」
「ひどっ!」
「嘘うそ。覚えてるよリュウジ」

 二人で笑い合っていると更に緑色が加わって。みんなで遊んで喧嘩して笑い合っていたあの頃を思い出した。
 本当に騒がしくて懐かしい大家族だった頃の思い出。今はお兄ちゃんとりん子ちゃんにアスタロス、それにたくさんのペットたちに囲まれ慌しくも落ち着く生活を送っている。
 二人に合うのは何年ぶりだろうか。引き取られてからはお日さま園にも連絡をして遊びにも行っていた。でも急にぱったりと連絡が取れなくなってしまい、そのまま誰とも会っていなかったので大体五年ぶりくらいだろうか。
 そのことを二人に言うと三ヶ月くらい前テレビ見てなかったのかと問われたので素直に海外にいたことを伝えると何だか複雑な顔をされた。気になる。


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