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▼2.この子が私の悪魔です

「代表の選考会は明日、これが選手名簿だ」

 昨日久遠監督に手渡された名簿に目を通しながらアスタロスと共に雷門中へと向かう、どうやら久遠監督は今日の選考会で私にも選手の選考をして貰いたいようだ
 昨夜は準備で忙しく目を通す暇が無かったので雷門中へ向かう道すがら読み込んでいる、そのためアスタロスを召喚し名簿に集中している私が無事目的地へ着けるように案内させているのだ
 羽を出していないアスタロスはさながら外国籍の男の子で、人間たちの前に姿を現しているが悪魔だとは誰も気づかないから丁度いい
 私は名簿を読みながら無事に目的地に着けて、アスタロスは心酔している私の役に立てて、まさに一石二鳥だなんて言ってみる

 そうこうしているうちに目的地である雷門中へ到着したようだ、腕時計を見れば言われていた時間ぴったりだ

「名前着いたよ。さあ褒めて!」
「うん、よしよし。アスタロス偉いわね」

 この子のイケニエは能力などを使ったら頭を撫でてあげること。アザゼルなどのほかの悪魔と違って物を欲しない、確か恵も同じタイプだったはず。
 自分からこれが好いと言ったので、頭を撫でてあげるとき一緒に褒めてあげることにしている。するとより一層嬉しそうな顔をするのだ。それを見ると私も心がほかほかする。
 雷門中は公立中学校にしてはそこそこ大きい方だった。しかし私の通っている学校の方が馬鹿ほどに大きいのであまり驚くことは無かった。

「人がいっぱいだ」
「はぐれないように手繋ぐよ」
「うん!」

 肩にかけたトートバッグに名簿を仕舞い、アスタロスの手を取って中に入れば、この日を待ち望んでいたかのように沢山のギャラリーが集まっていた。
 それもそうか、今日この場で日本の代表が決まってしまうのだから。私たちはいかにも一般人を装って校門をくぐった。
 より試合の見やすい場所を探していると木の陰で娘さんと一緒に試合を見ようとしている久遠監督がいた。久遠さんが私を見つけると軽く会釈をし、視線を遠くにやる。
 その視線の先を追えばどうやら選手たちのベンチで。ドリンクやタオルを準備している女の子たちがいるではないか。
 まさか変な目で見ているのでは、と今すぐにでも110番しうかと本気で悩むのも束の間、彼の視線の意図に気付いた。
 ストレッチをしている選手たちに対して必要以上に声をかけている煩い子がいて、それが件の早河楓であることはすぐに分かった。

「あの女が例の……まあ顔はそこそこ良いみたいだけど名前ほどではないね!」
「わかってるじゃない。さすがね」

 もちろんボクほどでもないけど、と自信たっぷりに言い放つアスタロスを尻目に私はグラウンドの選手たちに目をやった。
 ここに来るまで名簿に大体目を通したし、どの選手も髪の色などが個性的なので気になった人はすぐにチェックすることが出来そうだ。

 ストレッチやアップの仕方一つでも普段の練習が見えてくるものだ。誰がどのポジションかはもちろん誰が素人かなんてのはすぐに分かっちゃうのだ。
 念入りなウォーミングアップが終わり、図体が大きくサングラスをかけたバンダナの男性が始まりを告げ、日本代表選手の選考会が始まった。


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