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▼幸村双子は死神07

 なんやかんやで名前の家で夕飯を食べることになっとって、財前と手伝いをする
 炊きたての白米に肉じゃがと焼き魚に冷や奴、さらにサラダは温野菜になっとってなんとも美味しそう、即席とは思えへん品数と豪華さや

「めっちゃ美味い!」
「ほんま即席とは思えへんっすわ」
「ふふ、誉めても何も出ないわよ……、そう言えば二人ともテニスをするのね」

 楽しく食事を続けているとふと名前が思い出したように話題を変えた
 テニス、その言葉を発した名前はどこか懐かしそうに、それでいて悲しい表情やった

 その表情を見て気付いたが誰かに似とる、少しくせのある藍色の髪に紫色の瞳、この姿を俺は知っとる気がした

「せやけど……、名前はテニス苦手なん?」
「いいえ、むしろテニスは好きよ、生前はテニス部のマネージャーをしていたくらい」

 切ない顔しとったからテニスが苦手なんかと思ったら違ったらしい、ならどうしてあんな顔したんやろ
 さっきとは打って変わって笑顔のまま食事を続ける名前に俺は、そや、と思い出したようにテニスバッグを漁る
 あったあった、今日持って帰って整理しよ思うとった試合のビデオテープをテーブルの空いた所に積んでいく
 中学から六年間の試合記録、と言っても全国大会だけやけど、ビデオテープのラベルを見た名前は顔色を更に明るくする
 財前もデザートの善哉を食いながら、懐かしいっすね、と呟いた

「名前これ観るか?」
「観たい、食器片付けないといけないから、悪いけどセットしてくれる?」
「まかせときー、ごちそうさまでした」

 とりあえずてきとーにビデオを取ってデッキにセットすれば、財前がテレビの電源をいれた
 ちょうど俺が中学三年の時の四天宝寺と青学の試合だった、ダブルスなのに千歳と手塚君がシングルをしとる何とも奇妙な試合

 名前は食器を洗いながらその試合をじっくりを見ていた、才気煥発やら百鎌自得やらを見ても眉一つ動かさずに観とった
 この試合が終わると場面は青学と立海の試合に変わる、そこで初めて名前が眉間にシワをよせた
 手塚君と真田君の試合は今観ても凄まじいわ、俺は映像を見てあの時の空気を思い出した、あれから三年も経ったんか

『入らんかーっ!』

 真田君の気合いの入った一言が室内に響いたところで食器を洗い終えた名前が食事をしたときと同じ場所に座った

「真田は相変わらずね」

 真田君の勝利が確定したと同時に名前がぼそりと呟いた


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