×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

▼幸村双子は死神08

 それから三人で試合のビデオを観とったときやった、名前の挙動というか様子に明らかな変化があった
 それは越前君と幸村君の試合が終わりそうな時やった、名前は明らかに、誰が観ても痛々しい表情をしとる
 そらそうなや、五感を奪われとる越前君を見れば誰でも顔を背けたくなる、それだけ幸村精市のイップスは怖い技なんや

「名前、大丈夫か?」
「ええ、それにしても越前って坊や、イップスを克服し始めてるわね」
「ああ、それには当時の俺たちもびっくりやったわ」
「そう……」

 それからビデオはイップスを克服した越前君の勝利を流した、当時の迫力を今でも思い出せるくらい白熱した戦いやった
 ちらりと名前を見やれば目を見開いて今にも泣きそうに顔を歪める
 俺も財前も名前を見て驚きを隠せなかった、今日さっき出会ったばかりなのに彼女のことを過大評価していたんだ
 彼女が泣くはずない、そう頭のどこかで考えていたから、彼女の目尻から今にもこぼれそうな涙をどうにかしたかった

「名前さん、」
「立海が負けた……?」
「おん、残念やけどな……」
「っ、」

 名前は立海と何か関係がある、きっと元立海生とかそないなとこやろ、いや、たぶんそうなんやろう、立海の負けを自分のことのように悔しがっとる
 俺はなぜか知らんがフォローの言葉を必死に探した、名前のこないな顔は見とうない

「ま、まあ、こん時の幸村君は退院してすぐやったからブランクもあったんやろうな」
「あー、そういやそうっすね」

 この何気なく言った言葉が名前にとってどれだけ大きくて重たい言葉か、俺たちは気づかんかった

「退院? 何それ……?」

 名前の瞳が大きく揺れて、そこでわかった、勝敗が決まったときの幸村君に似とるんや


<< 戻る >>