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▼6bit

「士郎、佳住馬っ、フィールドを書き換えたわ、OCM!」

 私の言葉に反応した二人のアバターが同時に動き出す。
 OCMの存在を知っているのは私たち三人しかいないのでラブマシーンもただのOCMフィールドと勘違いしているのかそのままカズマに殴りかかろうと動く。

『スノーエンジェル!』

 ラブマシーンが動く前にシロウが奴の両足を氷で固めて動きを封じる。
 サッカーフィールドではないのに必殺技が出たものだからラブマシーンも理解できなかったのだろう動きが数秒止まった。
 その隙をねらって侘助くんが最後の仕上げを施した。

「奴の防御力を無くした! お前らならやれる!」

「おらああっ!」
「エターナル、ブリザードッ!」

 カズマの回し蹴りが顔面に、シロウのエターナルブリザードが後頭部に決まる。ボールはもちろん奴の頭。
 頭を前後から蹴られたラブマシーンは倒れ、我々の勝利が確定した。

 と思われた。




「カウントダウンがとまらない!?」
「うそ……、そんなことって……!」
「名前何があった!?」
「人工衛星あらましがここに向かって落ちてきてる! ラブマシーンが落としたの!!」

「!?」

 この情報が確かならばここにいては危ない。ラブマシーンの野郎は勝負に負けたけれど諦めてはいなかったみたいだ。
 管理者権限であらましの軌道を確認すれば、座標は私たちのいるこの場所。ラブマシーンはこいこいの最中に私たちの居場所をGPS探知してあらましの落下地点をここに設定したのだ。

「あらましがここに落ちてくる!」

 しかも任意コース変更は不可能な区域まで到達している。


「管理棟にログが残ってるなら嘘の情報を上書きして軌道をずらすことは!?」
「! その方法ならできるかもしれない!」

「ここは私に任せて! 士郎と健二くんはみんなを手伝って!」
「僕は名前と一緒にいる。どんなことがあっても」
「士郎……」
「ラブコメはいいからさっさとやれ!」

 侘助さんの声で現実に戻される。一応手は動かしていたのでギリギリセーフでしょ。ログを見つけ出しそれを元に誤情報を上書きしようとしたときだった。
 そこに現れたのはパスワード認証画面とそのパスワードとなる暗号である数字の羅列。生憎私はそこまで数学に長けていないのでこれを解くのには時間がかかる。
 認証画面の後ろで笑うラブマシーンが憎くて堪らない。残された時間も少ない。もうここで終わりなのかと諦めかけた時だった。

「僕がやります!」

 その声に反応して横を向けば健二くんがレポート用紙とペンを取り出して計算を始めていた。ペンの走る速度が尋常じゃない。
 さすが数学オリンピックの日本代表、になり損ねた人だと感心している内に暗号を解き終えパスワードを入力する健二くん。
 パスワードが認証され情報を書き換えようとするもすぐに鍵をかけられ新しいパスワードに書き換えられる。当然暗号も違う数列。
 ついには健二くんの手からペンが落ちる。もうダメかと思われた次の瞬間、彼の手はキーボードに伸びていた。

「え、暗算……!?」




「邪魔すんなあああぁっ!」
「エターナル、ブリザードッ!」
「よろしくお願いしまあぁすっ!」
「いっけえぇっ!」

 佳住馬、士郎、健二くん、私、それぞれの声が重なる。まるでスローモーションのように感じられた瞬間だった。

 健二くんがパスワードを入力しエンターキーを押すのと同時に私はあらましの軌道に誤情報を上書きする。どうか上手くいって。


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