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▼エピローグ

「ほんとに結婚しちゃえばぁ?」
「まずは付き合ってからでしょ」

「大好きです!」

 ちゅーしろちゅーしろという大人たちの茶化しに対して夏希は少し照れながらも瞳を閉じて唇を健二くんに向けた。赤い顔をした健二くんの頬にキスをひとつ。あ、鼻血出した。

「ひゅーひゅー!」
「健二くんも大変だねぇ」

「ほーら。名前と士郎くんも!」
「えっ!?」
「おー! ちゅーしろちゅー!」

 さっきまで夏希たちを冷やかしていた伯父さんたちが矛先を私たちに向けてきたのでただただ驚くしかなかった。
 それに釣られるように一族みんなに見られているんじゃないかってほどの視線を浴びて、一気に顔が熱くなる。
 キスなんて普段からしているけどいざこうやって大衆の前でとなると恥ずかしくて溜まらない。健二くん冷やかしてごめんね。
 里香伯母さんに肩を捕まれ士郎と向き合わされる。
 何で栄お婆ちゃんの前でこんな羞恥プレイをしなければいけないのやら、目の前の士郎を見れば同じく頬が少し赤く照れている。

「士郎男を見せろ!」
「ちょっと僕はまだ認めてない!」
「ほらほら!」
「夏希たちはしたんだからさ!」
「顔真っ赤にしちゃって可愛い〜」

 お願いだからみんなもう黙っててよ! なんて言っても聞かないのは百も承知だから言わないけど、冷やかされればされる程心臓が五月蝿くなる。

 覚悟を決めた士郎がふぅ、と息を吐いた次の瞬間先程までの羞恥は消えいつもの格好いい士郎の顔に戻っていた。
 右手は私の手を握り左手が頬に添えられる。それを合図に私は空いている手を士郎の胸に当て中学の頃より高い位置にある碧の瞳を見詰める。冷やかし達の声が一層大きくなる。

「名前、愛してるよ」

 士郎の言葉に応えるように私はそっと目を閉じた。


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