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▼OP→T&B 04

「バウワウッ!」

 千切れんばかりに尻尾を振った大型犬が飛びついていたのでしっかりと抱き止めてやる。
 ただの犬に押し負けるほど柔ではないのでじゃれようとする彼をしっかりと抑える。
 赤犬なんて呼ばれているお偉いさんの数万倍愛嬌があり、好感が持てる。

 それからワンテンポ遅れて飼い主らしき男性が彼のリードを握り飼い犬の名前を呼ぶ。

「ジョン、それ以上はいけない!」

 飼い主の声に従いジョン君はじゃれるのを止めた。が、私の上から降りる気は全くないらしい。
 どうしたものかと飼い主は肩をすくめ、困ったように笑った。

「すまない、ジョンは君を気に入ってしまったようだ」
「いえ、気にしていませんよ。可愛らしい犬ですね」
「あ、ああ! ジョンはとても可愛い。そして凛々しい!」

 私の言葉に気を良くしたようでにこにこと満面の笑みを浮かべる飼い主。
 ペットは飼い主に似ると言うのは強ち間違いではないようで、もし彼に尻尾があるならば飼い犬同様激しく揺れているのだろう。
 むしろこの場合は飼い主がペットに似ているのかもしれない。

 先程は、聞こえてしまったからか謝罪の言葉が口をついて出てしまい不快な、というより不可解な思いをさせてしまった。
 しかし周りの声で状況把握しようとしたらプライバシーな声まで聞いてしまっただけであって、故意ではない。
 随分と昔に極めた見聞色の覇気も、戦う時以外は滅多に使用しないためプライバシーを侵害してしまうケースが多々ある。もう少し融通の利く能力にならないものか。
 幸い、本人も気にしていないようで良かった。

「隣、いいだろうか……」
「ええ、どうぞ」

 彼は笑顔を少々緊張させてから隣に腰掛けた。それから、ジョン君の頭を撫でる私を、ちらちらと確かめるように見てくる。
 どうやら会話するきっかけを掴みあぐねているらしい。その姿が初々しく、微笑ましく感じる。

「その……さ、さっきの鳥の群は凄かったね!」
「私、鳥に好かれてしまう体質なんです。驚かせてしまったならごめんなさい」
「いや、とんでもない! むしろジョンが吠えてしまって私の方こそ……」
「いえ、ジョン君には助けてもらいましたから。あのままでしたら窒息してたかもしれません」
「ちっ……!? それはいけない!」



「君は、何故ここに……?」

 ここに、とはこの広場にという意味なのか、それともこの世界にという意味なのか。
 もしも、万が一後者ならばこの世界には異世界を行き来する技術が盛んと言うことで、私が元の世界に帰る日はそう遠くないことを意味する。
 まあ、そのような文化がないことは鳥たちとの会話から把握済みである故に単なる妄想に過ぎず。
 例えそんな技術が存在したとして、彼は私が異世界から来た人間であることは知らないのだから、十中八九前者だろう。


「歩いていたら偶然、この広場に着いたんです」

「私、この街に知り合いもいなくて……」


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