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▼男主のエイリア編04

 手伝いという名の実験は想像を絶するものであり、完成させるための代償は重かった
 神のアクアが完成した頃にはお日さま園に来る前の施設での記憶の殆どが失われた、その現象は実験の最中徐々に現れたのだが剣崎も他の研究員たちもそれをデータとしてしか扱わず名前の記憶は完全に消えていった
 そのおかげか神のアクアは副作用の無い完璧な作品として出来上がった、しかしそれをどうしようと誰が使おうと名前は知ろうとは思えなかった
 自分はただ父さんの為に、完成品をいずれ使うことになるであろうお日さま園の子供たちのために、エイリア石を完成させるためだけに研究所へ通っているのだと言い聞かせ体を動かした
 事前にエイリア石はお日さま園の子供たちが使用するのだと聞かされていたため、大切な家族のために彼は体を張った、たとえ記憶が失われようとも


 そして有に半年、エイリア石が副作用無しにその力を発揮できる状態に成るまでにかかった時間
 その時にはすでに名前の記憶はひどい結果となっていた、実の両親との記憶を失いお日さま園に来て間もない頃の思い出すらあやふやとなっている
 園の子供たち、とくに涼野風介にはそのことを悟られぬよう振る舞っていたが気づかれるのも時間の問題、否、名前のことに関しては敏感な彼のことだ、すでに気付かれているやもしれない

 エイリア石の完成から七日と経たぬ内にハイソルジャー計画は本格的に始動した、全ての子供たちに宇宙人としての名前が与えられチームに分け、その上チームごとにランクを付けられる
 年端もいかない子供にはいきなり宇宙人だのサッカーで地球を征服だの学校を破壊だの戸惑うことばかりだが、父さんのため、その言葉の前に疑いや戸惑いは意味をなさなかった
 園内で随一にサッカーが強くエイリア石完成の手伝いをした名前には自動的にジェネシスの地位が与えられ、ダイヤモンドダスト、ガイア、プロミネンスの3チームが彼を奪い合うような形となってしまった
 だが名前にとってそのようなことはどうでも良かった、皆が無事にエイリア石を使えていることに対する安堵だけが彼を支配している
 その傍らで自分のしていたことが本当に父さんの為であったのだろうか疑問を抱き始めていた
 ジェネシス計画を知った吉良の娘である瞳子が吉良に掛け合っている所を目撃してしまい、自分のやっていることの善悪がわからない状態に陥っていた
 大切な記憶を失ってまで父さんの間違いに気づかない振りをしているべきなのか、今の状態の彼では答えなど見つかりはしなかった


見えない記憶



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