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▼男主のエイリア編03

 剣崎に一任された人体実験は別室で行われた
 まず名前の基礎体力を測ることから始まったのだが、彼の身体能力は中学生の一般平均を遙かに凌駕しておりその場にいた研究員を唸らせた

 実験台に座らされた名前はされるがままに様々な端子を体に装着された、アニメのワンシーンのようで良くないことが起こりそうな予感を強くするが無理矢理振り払う
 消えない不安を瞳に宿す名前に剣崎が近づく、そのこけた頬が不気味さを増し名前の不安を煽るだけだった

「まずは神のアクアの試作品から」

 差し出されたグラスには無色透明の液体が入っており、それを飲むように指示される、得体の知れない液体を体に取り込むのは気が引けるが剣崎の言うことは吉良の言葉同然、指示通りに液体をのどに通す
 刹那、体が熱く火照り筋肉が大きく隆起するのがわかる、心拍数や血圧など様々な計測を行い体力を測定する
 神のアクアとエイリア石の実験が行われたのだがそれは激しい痛みと苦しみが伴うものだった

 その日の実験が終わる頃には肩で息をし疲労も溜まっていた、額に浮かぶ汗をタオルで拭えば結果の書かれているであろう紙を持った剣崎が声をかける

「本日はありがとうございました、お陰で良いデータが録れました」

 この調子なら神のアクアもエイリア石も完成は近い、そう口にした剣崎は口角を上げ名前を一瞥した


 疲労感からか帰りの車内でも熟睡していた名前が園に着いた頃にはすでに黄昏時だった、園を出たときは昼を過ぎた頃だったので随分と研究所に居たのだと理解できた
 剣崎に次の手伝いの日程を聞き別れた名前は庭を通り過ぎ園の中へと入る、その途中サッカーで遊ぶ子や花壇の手入れを手伝う子が名前に気付き寄ってきた
 どこへ行ってたの、何してたの、遊ぼうよ、などと攻め寄られたが研究所や計画のことは極秘、適当にはぐらかして玄関へと足を運んだ

「ただいまー、あれ、風介?」
「名前!」

 玄関を開ければ体育座りでうずくまる少年が目に入り、色素の薄い特徴的な髪型でその正体の名前を呟く
 風介と呼ばれた少年は彼の声を聞いた刹那、涙で濡れた顔を上げ彼に飛び付いた、一歳しか変わらぬ少年の体をバランスを崩しつつもしっかりと抱き留めてやりその頭を優しく撫でる

「どこ行ってたの?」
「父さんの手伝いでちょっとね」
「私にも言えないようなこと?」
「父さんとの約束だから」

 父さんの名を出せば風介も仕方ないといったように折れた、しかし表情は不満そうだ
 眉間によったしわをとるように名前の指が数回往復し、額に唇を落とせばすっかり眉間のしわも取れ、頬をほんのりと朱色に染める
 きっと名前が吉良に連れられてから一日中玄関にいたのだろう、泣いていたのか目元は赤く腫れており痛々しい
 自分も実験で汗を掻いていて体が気持ち悪い、へばり付いて離れない愛おしい子の目元の腫れを引かせるためにもと足を脱衣所へと動かした

「風介、風呂入ろう」
「うん、名前と一緒に入る」


だいしゅきホールドV2



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