▼男主のエイリア編05 「ナマエ、こんな所にいたのかい、行こう」 「ああ……、ガゼル」 ジェミニストームが破壊活動を開始して数日が経ったが名前は宇宙人になれずにいた、心に空いた何かを埋めたくても埋めることができないジレンマから抜け出せずにいた 風介をガゼルと呼ぶことに抵抗を覚え、マスターランクチームのキャプテン三人との接し方にすら戸惑う始末、あんなに近くにいたはずなのにみんなが遠くに感じてしまう 自分のチームを持たない名前はただぼんやりと会議室で過ごす日々を送っていた、思い出せない記憶を思いだそうと時折必死に頭を唸らせる そしてガゼルが会議室に現れ彼の手を取るのだ、行き先は決まって名前の部屋 ベッドに名前を寝かせ上から多い被さるよう抱き付いて言うのだ 「過去の記憶が無くたって私たちと過ごした記憶があるじゃないか」 「ガゼル、」 「私はガゼルじゃない、名前がナマエじゃないように私はガゼルじゃない、風介だよ」 呟く声は痛々しく、名前だけを見詰める双眼からは涙が零れ落ちる、名前はそれに唇を寄せ吸い取る 「ありがとう風介、でも思い出したいんだ」 「思い出してどうするんだっ、過去の記憶なんて思い出したところでもう過ぎたことなんだ、だったら……っ!」 その先に続くはずだった言葉は名前によって奪われる、半ば無理矢理口付けられ舌を絡め取られる、酸素が足りなく頭がくらくらとぼやける しかしガゼルはそのキスが嫌いではなかった、彼が唯一頼ってくれているのが自分だからこそ、その口付けは世界で一番愛おしいキスだった ・以下、書きたいとこだけ書き留めただけ 「君は話してくれたよ、両親のこと、前の施設で出会った女の子のことを……」 「お前は私を裏切った、あんなに愛し、尽くしてきたというのに」 「おいお前、本気出せよ、それともこいつらの前では出せないのか?」 「おい名前、どういう……」 「教えてやるよ」 「っ、やめろ!」 「こいつはな、俺たちと同じエイリア学園の宇宙人なんだぜ」 「バーン!」 沈黙が痛い、それ以上にみんなの視線が痛く突き刺さる、異物を拒む眼差しに名前の表情は曇る 「そんなの嘘です!」 「春奈……」 「名前くんは短い間だったけど確かに私やお兄ちゃんと一緒に育ったし、あの時だって苛められてた私を助けてくれたもの!」 「……俺も名前を信じる、名前とは短い間だったが一緒に過ごした、名前に記憶が無くとも俺たちが覚えている」 「春奈、有人……」 「はっ、そんなこと言ってられるのも今だけだぜ、そのうち嫌でも分かるときがくるさ、じゃあな、ナマエ」 本来ならばジェネシスという名のチームができる予定だった、そのチームのキャプテンはエイリア学園でも随一に強い人だったがいなくなってしまった それ以来ジェネシスはエイリア学園の中で最も強いチームに与えられる称号となったのだ 「お前がいたらジェネシスの称号も……」 「プロミネンスとダイヤモンドダストが手を組んだ……?」 「つまりガイアがジェネシスに一番近いってことだよ、瞳子さん」 「……名前、」 「名前、あなたはベンチスタートよ」 「何故です監督! 名前の力は必要不可欠です」 「異論は認めないわ、これは監督命令よ」 「っ!」 監督命令、その言葉に鬼道は押し黙るしかなかった、鬼道の言ったとおり名前の実力は明らかに上でありそれは他のメンバーも痛いほどにわかっている、だからこと彼をベンチスタートにすることに疑問が 「おいおいまじかよ、名前を出さねえとか勝つ気ねーだろ」 皆の不安を的中させるがごとくカオスに一点を先制されアフロディのヘブンズタイムが破られ、すでに十点を入れられてしまった雷門、十一点目を円堂のメガトンヘッドが防いで見せた それにより雷門の士気が上がるが上手くリズムが掴めず未だにカオスが押している状態だった 今までの様子をただベンチで見ていただけだった名前が不意に立ち上がる、それはベンチにいた他のメンバーもフィールドで息を整える選手たちも注目した 小さく延びをした彼はトレードマークのサンバイザーを装着し直す、それを確認した瞳子が高らかに言葉を発する 「名前、後半から出てちょうだい」 「はい、みんな後半は俺にボールを集めて、点を取り戻す」 名前の自信に満ちた言葉はメンバーを安堵させ更に士気を高めた、視線を横にずらしカオスを一瞥した彼の口元には笑みが浮かんでいた 後半が始まりフィールドに立った名前はFWの位置にいた、それを見つめるガゼルは唇を噛み締め拳を強く握る 何故雷門なんかにいるんだ、小さく呟いたその言葉は誰にも拾われることなく空気に溶け込んだ 後半が開始されカオスがリードしていくがやはりダイヤモンドダストにパスを回そうとしないネッパー、そこを突いた鬼道がカットした 名前の実力はエイリア学園の者ならば嫌というほど知っている、それに加えガゼルの指示もあってか彼には数人のマークが付いておりパスを回すことができない状態だった 鬼道がゴール近くにいる彼にパスを回そうと見やるが彼は取り囲まれており不可能、仕方なく別の人へとパスを回そうした刹那、彼の声が響く 「俺の頭上にパスだ!」 「! わかった!」 名前を信じ指示通りに彼の頭上目掛けボールを蹴る、地面を強く蹴った名前は空高く飛び上がりそのままオーバーヘッドでボールをゴール目掛け蹴りつけた 「レインドロップ!」 残像により複数に分かれたボールは名前通り雨の如くゴールへと向かう 「ガゼル、バーン……俺はこの試合本気を出す」 「みんな楽しそうだね」 「グラン……」 「久しぶり名前」 |