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▼Girl of white tiger.


 私のヒーローコスチュームはノースリーブの上着に揃いのスカート、それとショートブーツ。左腕には要望通りアームカバーが着いている。

「轟さんのコスチューム、ワイプシみたいだね!」

 緑谷君の言う通り、このコスチュームは動物をモチーフとしたワイルド・ワイルド・プッシーキャッツを彷彿とさせるデザインであった。
 しかし、それ以上に、このコスチュームがかつてヒーローとして活躍していた“タイガーレディ”のそれにそっくりなのだ。
 彼女のコスチュームはここまで露出度は高くなく下履きもパンツタイプだったが、


「タイガー、レディ……」

 緑谷君の言葉で私はこの衣装デザインがかつての母の姿を思い出す。



 私はGのヒーローチームで、上鳴くんと耳郎さんとの唯一のトリオチームだ。対するは八百万さんと峰田くんのCコンビ。

 推薦入学者同士の対決に周りは盛り上がる。


 耳郎さんが個性で彼らの居場所を探し当てる。
 向かう途中、私も聴覚を活かして彼らの会話を聞き取る。

「ヒーローチームは四階。何か金属的な物で扉を塞いでるっぽい」
「マジかー。八百万の個性だな、どうする?」
「関係ないよ。私が金属ごと扉を蹴破る」
「は!? 蹴破るってマジ!?」

 私の言葉に上鳴くんが目を丸くする。

「あー、轟、さん……」
「名前で良いよ。轟二人でややこしいし」
「じゃ、ウチも響香で。……名前が虎の個性で身体能力高いの知ってるけど、音的に結構頑丈そうな金属だよ。大丈夫?」
「うん、余裕」

 峰田くんの個性はあの髪のボールみたいやつだから、それさえ気を付ければいい。
 八百万さんは個性こそ素晴らしく、強力ではあるが本人の知識と思考が頼りである点が最大の弱点となる。
 つまりは、創造する暇さえ与えなければ対して脅威ではない。

「私が扉を蹴破ったら響香が先に突入して個性でヒーローチームの気を逸らして。上鳴くんは個性使わずに陽動お願い。そしたら私がすかさず確保テープを巻くから」

 用心深い八百万さんのことだ、きっと核に触れられないよう何かしらで覆っていると考えて良いだろう。
 ならば、確保テープを巻きつけるのが最短にして、最良の策だ。
 私の考えを聞いた二人は、
体力テストで私の瞬発力の高さを目の当たりにしている二人は静かに頷く。

 小型無線は必要ないしあるとかえって邪魔になるので救命用品が収納されている腰のポーチに仕舞っておく。
 どうせこんなの無くても聞こえるし。

「勝負は最初の数秒……!」

 作戦会議は終わり、それ以降は物音を立てないよう静かに移動する。
 獲物を狩るスイッチが完全に入った私は気配を消し、足音一つ立てずに階段を上がる。きっと私の尻尾は山なりになっているだろう。




 四階、ヴィランチームがいる部屋の前に到着すると、予定通り私が扉の前に、上鳴くんと響香が左右に分かれて扉から少し離れた場所に立つ。
 響香の個性対策に私は耳に適当な布を詰め、アイコンタクトで二人に最終確認を取る。二人とも準備は万端なようで、しっかりと頷いた。

 勝負は最初の数秒で決まる。静けさを保ったまま、その作戦は実行された。

 私は白虎の個性を最大限に引き出し脚に力を入れ、一回転し、その勢いに乗せて扉を蹴る。

 CLAAAASH!

「のあっ!?」
「なっ……!」

 勢い良く蹴破られた扉は派手な音を立てて吹っ飛び、破片が飛び散る。
 中にいた二人が呆気にとられているうちに上鳴くんと響香が中へ侵入し、それぞれ陽動し、ヴィランチームに隙を作る。
 室内には峰田くんの個性であるボールのようなものが散らばっており、二人の足を床と接着させる。しかし陽動が目的である二人には関係ない。

 私は勢い良く跳び上がり確保テープを取り出しながら最も脅威である八百万さんの背後へ移動する。
 彼女の個性で防がれないよう彼女の肌が露出していない腰回りを中心に素早く巻いた。

「一人目っ!」
「っ、しまった! 峰田さん!」
「ああああ耳がああああ……ってうわあああ!?」

 ボールに触れないよう注意し、耳を塞いで叫び声を上げている峰田くんの許へ跳び、そのまま確保。

『そこまで! ヒーローチームの勝利だ!』

 作戦決行からヴィランチーム確保まで、その間僅か37秒であった。


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