目が覚めると泣いていることがある。
そんな話は4組でよく聞いていたけれど、こんな世の中だからかよくあることらしかった。
きっと、夢で彼と会ってたのね。
墓地でそう言っていたクラスメイトはいつもしていた指輪を撫でて笑っていた。実感はなくても、無くしちゃったんだと分かるものだと言っていた。死んじゃったんだろうねと小さな花を手向けて。


「どうした」


頬を撫でられて、そう声を掛けられて目を覚ました。
どうやら椅子に座ったまま転寝してしまったらしい。
ベッドで寝ていたはずのクラサメさんが、わざわざ膝をついて私を覗き込んでいる。ここからだと頬の火傷がよく見えるな、なんてどうでもいいことが頭をよぎる。
頬が冷たい。クラサメさんが触れているところがあたたかい。瞬きして零れたものを、クラサメさんの指がなぞって拭う。


「……私、」


なにかを言おうとして、言葉にする前に感情が過ぎてしまって何も言えなくなる。口も目も閉じてしまって、彼の手に私の手を重ねた。覚えていない、のに、こんなに、分かりやすく愛情を表現するから。
私も、それだけ彼を好きだったのだろうか。分からない。息が苦しい。


「クラサメさんは、なんで私にそんなに優しいの」


声も何もひどい質問をしたものだ。自己嫌悪で俯きながら返事を待つと、珍しく笑った彼が私の頭を撫でる。髪を撫でるような、慣れない仕草で。


「君にもらったものを返しているだけだ。ツバメはただ、受け取ってくれればいい」


それが苦しいのだと、反論もできずにまた泣いた。どうして泣いているのか分からないままに。
外は雨だ。雨のせいで泣いているのかも知れない。



13.07.06



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