快晴
 



演習帰り、エースの歌をうろ覚えで歌いながら、レムと一緒に花を運ぶ。具合が悪そうなレムの分を抱えているので両手を花が占めていて、謝りながら柵を開けてくれるレムにお礼を言って墓場に足を進める。この先は0組以外の人も多く来るので鼻唄は控えた。
無理矢理引きずってくることに成功したマキナはどこかぼんやりと隣を歩いていて、髪に花を差してみても無反応だった。それを見つけたレムが笑って、ようやくマキナも笑う。私は満足したので先にお墓に向かってしまう。

レムと協力して一輪ずつ置いていったのだけれど、両手に抱えた花では足りないかもしれない。そう思うほどには知り合いが死んだということだった。数字では分からないけれど、こうして花を手向けると分かる、気がする。実感はないけれど。
クラサメ・スサヤの墓の前に来ると、レムが私に小さい花束をくれた。いつの間にか作っていたようだ。


「ツバメの大切な人だから、ちょっとだけ豪華にね」

「……そういう情報ってどこから漏れるのかなあ」

「日記に書いてたんだ、私。羨ましいって」


なにそれ恥ずかしい!
瞬時に熱くなった顔を手で覆って嘆こうが、マキナの態度は冷淡だ。石段に座りモニュメントをただ眺めるマキナをとりあえず睨んで、淡い青でまとめられた花束を石の上に置いて立ち上がる。レムの両手は空いていて、もう大方の人のために祈り終わったのだろうと判断する。


「ここは、怖いね。院内で忘れていられることが突きつけられるみたい」


マキナはレムの声に反応したのかこちらを見やる。
まあ、いつまでも死なない人はいない。ルシだって役目を果たせば死んでしまうし、私達だって明日には死ぬかもしれない。今すぐに皇国が攻めて来ないとも限らない、あるいは病気、事故、可能性はたくさん転がっている。


「俺が守るよ。レムもみんなもこの国も」

「私も入ってる?のろけにしか聞こえないな」

「ツバメ!もう!」

「先にからかったのはレムだよ!」


開けたこの場所は風も声も良く通る。
マキナの笑い声はついに聞けなかったけれど、微笑んでいたからよしとする。私達は忘れる理由こそを忘れてはいけないのだ。それを忘れないためにここでも笑うのだ。



13.07.24



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