配属
 


「ツバメたんすごいんだよー、詠唱ほとんどしないで回復しちゃうの」

「いや、それしか取り柄ないし」

「プロテガも早いよな。接近戦が多い時助かる」

「タイミングが大事な魔法だし、まあ」

「虫の体液かけられた時は殺してやろうかと思ったけどね」

「ごめんなさい魔力温存したかったから……!あ、サイスさん、あれから吐き気とかは?」

「あんたのおかげで平気だよ」

「よかった、心配だったんですよ、体力も消耗してたみたいだし」


普段から大人しいとはお世辞でも言えないようなクラスだが、今日はいつにも増して騒がしい。授業の時間ではないのが救いなのだが、それにしても、と呆れる。他のクラスから拐ってきた生徒を十四人で囲み尋問のように質問攻めにしていては犯罪じみて見えてしまう。面識があるからか雰囲気は良好だ。それとも、中心で尋問を受ける少女の物腰が柔らかいから賑やかで済んでいるのだろうか。

あの日救出した少女は成り行きではあるが以前から0組を補佐していたらしい。確かに見覚えのある顔だとは思っていて、だからこそ助けてやろうという気が起きたのだろう。
それにしても流石は回復が専門の4組といったところか、あれから日が浅い割りに後遺症などは見受けられなかった。ナイン達に抱えられているときも全力で抗っていた様子だったことからも安心する。まあ、それでも楽々と拐われていたのは問題だが。

十四人からの止めどない問答に一々答えていた少女を観察していると、ふと上がった視線と重なった。
かと思えばその表情が崩れて、妙に素早く後ろを向く。なんなのだ、と見詰め続ければ彼女の顔を覗き見た女子勢から歓喜の悲鳴が上がる。だから、なんなのだ。


「ハイハーイ隊長!提案なんだけど」

「なんだ、ケイト」

「ツバメを0組に入れたらどう?後方支援タイプってこのクラスにいないし」

「えっ!ゼッ?」

「……本人に訊け」


びくりと顔を上げた少女は明らかに乗り気ではない。それもそうだろう、このクラスは実力がある分危険な任務が多い上に生徒の顔ぶれも特殊だ。そのうえ傾向ごとに組分けされる他のクラスと違い個性豊かな面々が好き勝手しているような空間だ。見る限りは馴染んでいるが、配属されるとなれば別だろう。
うなずかないことを密かに期待しながら見守る。珍しくサイスやセブンまでも交じって少女を囲み、なにやら話し合いが始まったようだった。むしろ説得のような気配で、少女を丸め込もうとしている。ぼそぼそとした説得の声と、「恋とかじゃ!」だとか「堪えられませんて!」だとかいう叫び声が時折聞こえ、最終的には鞄を抱き抱えた少女が顔を出し、「……よろしくお願いします」と深々と頭を下げた。



13.07.22



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