はじめまして
 



彼女に初めて会ったのは作戦時だった。0組の生徒からの通信は事務的なものが常で、珍しいこともあると思ったものだ。

指定区域の殲滅は済んだ。息のある候補生を一人拾って欲しい。

希望だけを一方的に伝えた通信は、すぐに戦況を伝えるものに切り替わり生徒逹は次のミッションへと意識を切り替える。もう、候補生の事など頭から消してしまっただろう。それでも、あの子達の珍しい要望が気になった。救援に向かった帰り、通信のあった区画に向かう。血が散乱する地面に半ば同化して、血塗れの少女が倒れていた。これは、間に合わなかったのかもしれない。上体を起こして息を確認する。微かだが胸が上下していて、ただ疲弊して倒れているのだろうと判断して肩に担ぎ上げた。治療を施せば十分間に合う。この子は、生きられる。

突然、発砲音がした。
彼女を担いだ、死角側。いつものように身体を動かそうとして、人一人抱えていることに思い当たる。敵兵は一人のようだが、残党がまだいるとも知れない状況だ。走り抜けてしまおうか、と考えていると目の前に壁が出現した。半透明のそれは、銃弾を中空で受け止め無効化する。戸惑う敵兵を無視し駆け出せば、肩の少女がうめき声を上げた。意識が戻ったらしい。


「……怪我、」

「今から救護班の元に行く。心配するな、」


言い終わる前に体が軽くなる。何事かと少女を見れば、自身ではなく私に回復魔法を掛けた直後らしかった。よし、と言って、少女はまた脱力する。力を使い果たしたようだった。
あの子逹が助けたがる訳だ、と納得する。少女は呆れるほどに変わっているようだった。





「たいちょー!命の恩人さんを拾ってきちゃったよー」

「いやああぁ人拐いいい!人体実験はせめて意識のない時にしてくださいぃぃ!」


再びの再会は、ジャックとナインに担がれたツバメが半泣きで暴れているというどうにも困る状況で果たされた。



13.07.19



前へ 次へ
サイトトップ

 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -