それは敵に向ける笑顔
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俺らが高校生の時の話。


シンが高校一年生で、マイが二年生
そして俺が三年生だったある日。

俺らは三人とも同じ高校で
家が近かったこともあり
ほとんど毎日一緒に帰っていた。


トーマ「マイ、帰るぞ。」


マイの教室まで
迎えに来た俺とシン。

これはいつもの事だ。

いつもと違うのはマイが
まだ帰る用意をしていない事。


『あ、ちょっと遅くなるかも。』

シン「どうしたの?」

『今日私、日直で…。』


前の黒板に目をやると
確かにマイの名前が書いてあった。

その隣に男の名前。

ああ、きっと今マイと一緒に
黒板を消しているやつの名前だろう。

今日はそいつと日直なのか。


『このあと日誌書いて
先生のところ行かなきゃいけないの。
遅くなりそうだから二人で先に帰ってて?』

シン「ああ、そうなの?」

トーマ「いや、待っとくよ。」

『え、でも…。』

トーマ「大丈夫大丈夫。な?」


そう言ってシンに話をふる。


シン「あ、ああ。」


俺に押させたようにそう答えるシン。


マイを残すわけにはいかないよ。

だって俺らが帰ったらその男と
二人きりになるわけでしょ?


そんなのダメだよ。


男と二人きりで
何もないとは言いきれないし。


そして男の方に顔を向けて
にっこりとほほ笑んだ。


それは敵に向ける笑顔


シン「トーマ怖いんだけど。」


マイに聞こえないくらいの声で
シンは俺に言う。


トーマ「そう?
兄…いや、保護者としての義務だよ。」

シン「あっそ。」


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