よくできましたと頭を撫でる
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食器を洗いながら
リビングの時計を見る。

針が指のは、12:20。

マイと約束をした時間は12:30。


そろそろ来るかな、と思っていると
インターホンが鳴った。


『おはよう!』

トーマ「いらっしゃい…って
『おはよう』より『こんにちは』だぞ。」

『あ、こんにちは!』

トーマ「まあ、入れよ。」

『おじゃまします。』


そう言うと
靴を脱いで俺の家に入るマイ。


部屋に入ってすぐくらいに
俺は口を開く。


トーマ「で、どれだ?」

『ああ、この…。』


マイはゴソゴソとカバンの中を探る。


今回マイが家に来たのは
大学の課題がわからなくて
解き方を教えてほしいと言ってきたからだ。


付き合っているわけでもないのに
こうしてマイと俺が
会ったりしているのは、幼なじみだからだ。

それ以上でも、それ以下でもない。

少なくても俺はそう思っている。

…いや、そう言い聞かせている。


『ここなんだけど…。』


そう言って指を指した問題は
何度も書いて消して、を
繰り返している事が、わかるものだった。

それを見て、ほんと
マイは昔から頑張り屋だったよな
と、思った。


トーマ「これはこうして…。」


せっかく頼ってもらえたからには
理解してほしいと思う俺は
熱心に教える。


トーマ「こう。
これでなんとなくわかった?」

『うん、バッチリ!
今から解いてみるね。』


マイは俺の顔を見て笑う。

ただそれだけなのにとても嬉しかった。


『トーマ、出来た出来た!』

トーマ「ん?
…おお、正解。」


よくできましたと頭を撫でる



それが俺に出来る
幼なじみへの精一杯の愛情表現。


『また頼ってもいい?』

トーマ「ああ、いつでも頼っていいぞ。
俺はシンとマイの兄代わりだからな。」





(お題配布元「Overture」)


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