壊れゆく世界の中心
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マイを檻に入れてから
もう1カ月がたつ頃。


トーマ「マイ、飯できたよ。」

『…。』


俺の方を無言で見るマイ。

檻を開けて飯を差し出す。

ゆっくりとスプーンを手に取り
ゆっくりと食べる。

スローモーション映像のように。


トーマ「そろそろ檻もいらない?
もうさすがに逃げたりはしないよな?」

『…?』


マイはすっかりおかしくなっていて。

人格も、動きも。


最近は走るどころか
歩くこともやっとになってきた。

そんなマイを見て
「これなら安全だ」と思っている俺は
やっぱり狂っているんだろう。

自分で自覚はしているものの
やはりどうしようも出来ないわけで。

マイに危険が及ばないのなら
もうなんだっていい。


マイがどんなにおかしくなっても
俺が守る、俺が愛する。

だから、そう、大丈夫だ。


トーマ「ほら、ちゃんと食べろよ。」

『…うん…。』


たまに声を出したかと思うと
消え入りそうなほど小さくて短い返事。

そのうち何も話さなくなるのかな。

もしかしたらこっちを見る事さえ
しなくなるのかな。


ちょっと、さみしいかもな。


…でも無事ならなんだっていいか。


壊れゆく世界の中心


中心は俺?

それとも…マイ?


『トー…マ…?』

トーマ「まだちゃんと俺の事わかるの?
ははっ、嬉しいな。」





(お題提供元「不在証明」)


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