刀剣狂乱舞 | ナノ


▼ 第二十五章

 心臓の音がうるさい。息が上がる。纏わりつく着物もいとわずに、身体から水滴を飛ばしながら、大和守はただひたすらに走った。
 何度も彼の名を呼んだ。ここで彼を死なせては、加州の約束に背く気がしてならなかった。
 肌寒さに鳥肌が立っていた皮膚は、ある地点から突然肌を刺す熱さに変わった。
 構わず炎に飛び込み、落ちてくる渡り廊下の瓦礫を避けながら彼を探す。
 心の中で何度も何度も名前を呼んだ。上の方から、同じように彼の名を呼び続ける声が聞こえていた。
 全身の水は炎の熱で沸騰し、皮膚が火傷を負う。余りの熱さに目が開けられず、呼吸すら儘ならない。それでも進み続けると、とうとう地面で丸くなるその人物を発見した。
 大和守は蒸発しかけの濡れた羽織を彼に掛け、生死を確認する間もなく彼を背中に担ぎ上げた。
 そして再び走り出した。一瞬後、積み上がった瓦礫がガラガラと崩壊した。
 全身に纏っていた水分は八割が蒸発し、身体の所々に火が移り始めた。だが大和守は歯を食いしばり、痛みに耐えながら渡り廊下の端まで走った。
 橋の下は火の海でも、橋の上はまだ燃え残っている。大和守は自分の目の高さほどある橋の縁に手を掛けると、橋板を叩いて上の人間に合図を送った。
「え……!? 誰? つ、鶴さん!?」
「と、取りあえず引き上げるぞ!」
 二人の声を橋の下から聞き取った大和守は、一旦手を引っ込めると鶴丸を持ち上げ、橋板と手すりの間に無理矢理押し込んだ。後は力を込めずとも二人が引っ張り上げてくれたので、大和守は安心する。
 これで加州との約束は守れた。責務を果たした大和守は、緊張が解けて目の前が白くなった。
 ぐらりと倒れた身体は、しかし伸びてきた手によって停止する。間一髪捕まれた手を力強く引かれ、大和守もまた橋の上に救出された。
 橋の上で吸った空気は冷たかった。
「ッはぁ! ゲッホ、ゲッホ!」
「大和守……! どうしてここに」
 大和守は山姥切の疑問に返事する余裕もなくひたすら肺に空気を取り込んだ。
「ケホッ、きつ……」
 痛くて、辛くて、涙が滲む。火がこんなにも苦痛だなんて知らなかった。大和守は急に鶴丸の安否が気になって、彼の元へ体を引きずった。
 鶴丸は、丸焦げの状態で燭台切に抱かれていた。
「鶴さん! しっかりして鶴さん!」
 彼はもう虫の息だ。呼吸すらままならず、ヒューヒューと小刻みに喉を鳴らし、苦しげな表情を浮かべている。最早会話が不可能なことは明白だった。
「鶴さん、どうして僕を庇ったりしたんだい? 鶴さんは僕を殺そうとしていたんだよね? 鶴さんが何を考えているのか、僕には分からない」
 鶴丸の腕が僅かに動いた。が、それはもしかしたら大和守の見間違いだったのかもしれない。
 光の粒が、鶴丸の体から漏れ出した。とうとう限界が来てしまったか。
 何も情報を得られないまま、大和守達は内通者を死なせてしまうのだ。それは事実上、ゲームを止めようと動いていた彼ら全員の敗北を意味していた。
「鶴さん?」
 鶴丸の最期を看取る中、ふと鶴丸が笑った気がした。ピクリと動いた腕は、今度こそはっきり動き出し、胸の御守りを握る。差し出された手を燭台切が握ると、鶴丸は御守りを手放し腕を下ろした。
 途端、鶴丸を覆う光は一気に拡散し、弾けるように天に消えていった。





 どうして僕らが破壊される時、光が散るのだろう。
 その光景は死とは対極の美しさで、その場にいたものの目を奪う。

 堀川と別れた後、大和守は一人審神者寝所の周りを漁っていた、
 植木から盆栽から茂みの中まで、あらゆる場所を探したが自身の刀は見つからず、そうこうしているうちに小さな焚き火はボヤにまで広がっていた。
 早く燭台切達と合流しなければいけないのに、自分の刀はどこにいってしまったのだろう。付近を粗方探し終えた大和守は、まさかここじゃないだろうと目を背けていた池に足を向けた。
 本丸の端から端まで続く小川のような池。景趣と同じく、審神者の術で水流もある。
 大和守はゴクリと喉を鳴らした。今日は晴れているとは言え肌寒い。北風も吹いている。できればこの中には入りたくはなかったが、大和守は男らしく覚悟を決めた。そして数分泳いだところで、見事自分の刀を発見したのだ。
 思わず「やった!」と一人で叫んでしまうほど、大和守の感じた達成感はここ最近で一番のものだった。
 これでようやく皆の役に立てる。
 大和守は濡れた着物もそのままに燭台切達の元へ急いだ。
 砂利を踏み鳴らし、庭を突っ切って別邸を目指す。
 別邸に続く長い渡り廊下が見え始めた時、とうとう大和守は蜃気楼の中に鶴丸含む三人の姿を見つけた。
 間に合った、と思った。直後、鶴丸が橋から落ちた。
 あとは冒頭の通りだ。

 鶴丸が死んで、大和守はいつまでも感傷的な気持ちに浸っていたかった。
 だが時は待ってはくれない。
 今はこれ以上の犠牲を出さないために(最初にそう言ってから何人の仲間が死んだだろう)気持ちを切り替えなければならない。
 大和守が何を言わずとも、燭台切も山姥切も自ら気持ちを切り替えて、既に鶴丸に託された御守りに目を向けていた。
「開けるよ」
 燭台切が御守りの紐を引き、袋の口を開く。
 口に指を突っ込み、中身を取り出すと、中からは二枚の紙切れが出てきた。
 紙は小さく折られ、一見おみくじのようにも見えた。だが折り目を開くと、すぐにそれが何か分かった。
 一つ目の紙には『帰城』と書かれていた。
 もう一つの紙には『出陣 鶴丸国永顕現一周年記念日』と書かれていた。
「これ、式符じゃないか!」
 大和守は喉が痛むのも忘れて声を張り上げだ。ゲホ、ゲホと咽る。
「おい、どういうことだ。何故鶴丸がこんなものを持っている」
「ケホッ、これ、確か鶴丸が顕現一周年の日に主に貰っていた御守りだよね。ってことはこれも政府に指示?」
「違うよ」
 否定したのは燭台切だった。
 穏やかな声ではあったが、間髪入れず突っ込まれ、多少不満げに燭台切を見た大和守は彼を見て驚いた。
 燭台切は、涙で瞳を潤ませていた。
「し、燭台切?」
「ううん。何でもない。やっぱり山姥切くんの言うとおりだった。この本丸に仲間を思っていない人間なんていない。確かに鶴さんはゲームに協力的だったけれど、望んで殺し合いをしていたわけじゃなかったんだ」
「どういうことだ」
 山姥切が聞く。
 燭台切は、笑顔を浮かべてこう答えた。

「ゲームを終わらせられるよ」





 場所を移した三人は、元いた場所とは真逆に位置する天守閣を目指していた。
 南西にある天守閣。現在三人は北東にいるので、本丸をぐるっと半周する形で移動することになる。
 移動中、大和守は燭台切達に別行動後に起こった出来事を話して聞かせた。
 和泉守、堀川が高い確率で死んでいること、そして同田貫、鶯丸が仲間を殺そうとしていること。逆に大和守は、太郎太刀がこの場にいない理由を知った。
 これで、生き残った味方側は燭台切、山姥切、大和守、太郎太刀の四人であること、敵側に鶯丸、同田貫がいること、そしてあと会っていないのは宗三だけということが共有された。
 次に、三人はゲームを止める方法について話し合った。
 まず話を振ったのは大和守だ。
「燭台切はこの式符を見て『ゲームを終わらせられる』って言ったけど、それって過去に遡ってゲームを止めるってこと?」
 歴史を守る立場にある刀剣男士にとって、過去改変は御法度。大和守はその意味を込めて燭台切に聞く。
「過去は変えてはいけない。もちろん、それは前提条件だ。鶴さんだって過去を変えるためにこの式符を持っていた訳じゃないだろう。過去を変えずに、未来を変える。そのためにこの式符を使うんだよ」
「だが、そんなことが可能なのか」
 今度は山姥切が質問した。燭台切以外の二人には、そんなことが可能だとはとても思えなかった。
 だが、燭台切は山姥切の質問をあっさりと肯定する。
「可能だよ」
「!」
「ゲーム二日目に鶴さんに会った時、彼は過去を変えることを否定していた。つまり彼は、過去を変えなくてもゲームを止められる方法をちゃんと用意してくれているってことだ」
 唯一、事前にゲームのことを知っていた鶴丸には、ゲームを止める策を用意する時間があった。ゲームが正しいと信じる鶴丸には、その方法は使えなかったけれど。
「皆、ゲームが始まる数日前のことを思い出してみてよ。何か変わったことが起きていなかった? いつもと違う出来事が、一つだけあったんじゃない?」
 少し考え込んで、山姥切と大和守は「あ!」と同時に閃いた。
「端末!」
「そう。鶴さんの顕現一周年祝賀会の翌日、主が端末を紛失しているんだ」
 主が所有する、手の平サイズの四角い機械。
 普段の出陣と違い、演練などで政府の元へ赴く際、それを操作することで特別なゲートを開く。
「刀剣男士総出で探して、それでも見つからなかったなんて、おかしな話だと思わないかい? 多分、鶴さんが絶対に見つからない場所に隠したんだ」
 二人は目を見開いた。いよいよゲームを止める手立てが現実味を帯びてきて、気持ちが高ぶる。
「なるほど。つまり僕達の誰かが式符を使って過去に遡り、鶴丸が端末を隠した場所を特定すればいい訳だ」
「そういうこと。端末の隠し場所を知るだけなら、過去を改変したことにはならないからね。問題は誰が過去へ飛ぶかだけど――」
「それを議論する意味はあるのか?」
 燭台切がそれを言い終わる前に、山姥切が口を挟む。大和守の意見も同じだ。
「そんなの一人しかいないよね」
 二人は真っ直ぐに燭台切を見た。
 式符が一枚しか無いのだから、誰が行くかは決まっている。
「……良いのかい? もし失敗したら」
「誰が行ったって同じだ」
「燭台切で失敗するなら僕達にだって無理だよ」
 昔の自分達のいる場所へ飛ぶ以上、彼らとの鉢合わせは御法度だ。普段の出陣とは違い、身近な場所への跳躍はそれだけタイム・パラドックスの危険性が増す(と、前に主が言っていた)。
 あくまで行動は慎重かつ隠密に。その理屈で言うなら、過去へ飛ぶべきは隠蔽の優れた山姥切ということになるが、二人は意見を変えなかった。
 話し合いの結果、行動は決まった。
 天守閣にたどり着いた三人は、早速過去に飛ぶための準備をした。といっても、やることと言えば式符を体に貼り付けるくらいだが。
 燭台切は躊躇なく二枚の式符を体に吸い込ませると、鳥居の前に立った。
 三階構造の天守閣の内部は、天井がすべてぶち抜かれ、その中にでかい鳥居が一つ置かれている。この鳥居が、審神者の神通力に反応し、過去と今を繋ぐゲートを作り出すのだ。一城の象徴と言われる天守閣に相応しく、ここは時間を遡る役割を担っていた。
「出陣、鶴丸国永顕現一周年記念日」
 燭台切の声に反応して、鳥居の内側が白く光る。
「じゃ、行ってくるね」
「ああ」
「任せたよ」
 大和守達が見守る中、燭台切は一歩を踏み出した。
 目の前の鳥居をくぐり、一面真っ白な空間に身を委ねる。次の瞬間には、もう辺りの景色は変わっていた。





「ゴホン。それでは、鶴丸国永一周年記念を祝しまして……!」
「乾杯ー!」
 楽しかった記憶が、燭台切の目の前で再現されていた。
 燭台切は建物の影に隠れて、鶴丸を監視しつつ時間をやり過ごす。
 この日は昼過ぎまで宴会をした後、片付け等で一旦解散し、全員で夕餉をとった後はそれぞれの時間を過ごした。主は片付けの後からずっと執務室に篭っていたから、鶴丸が端末を盗み出すなら片付け後から夕餉までの数時間しかない。
 食事を終え、長谷部の「そろそろ片付けるぞ」という声が聞こえると、皆がわらわらと移動し始めた。各々厨に食器を運んだり、飾り付けを外し倉庫に運んだり、バーベキューの火消しをしたり。その中で、鶴丸は皆から貰ったプレゼントを両手に抱えて屋敷へと入っていった。
 燭台切は鶴丸を追うか迷った。鶴丸を追うには屋敷内に入らなければならないため、誰かと鉢合わせるリスクが高い。だが鶴丸を見失いたくない気持ちもある。数秒考えて、燭台切は審神者執務室に先回りすることにした。
 屋敷の外を回り、無事審神者執務室の前までやってきた燭台切は、縁側から室内に侵入する。部屋を突っ切って廊下に出ると、左隣にある書庫へと身を潜めた。
 審神者執務室の隣には近侍執務室もあるが、こちらはいつ長谷部が来るか分からないので身を潜めるには向かない。一方、この書庫はおもに主が使用する資料や報告書の類が置かれているだけなので使用頻度は少ない。身を隠すにはうってつけの場所だった。
 そこまで広くない部屋に、本棚が三つと無造作に積まれた書類。茶色を基調とした部屋と、古い資料から漂う独特の匂い、窓からの光に反射する埃。それらに、緊張していた燭台切の心が安らいでいく。
 ――ここがこんなに落ち着く場所だったなんて知らなかったな。
 一年以上住んでいたのに、まだまだ燭台切の知らないことが沢山ある。この部屋のことも、仲間のことも。
 この本丸を失いたくない。燭台切は改めてそう思った。
 そうこうしているうちに、陽は傾き、部屋の小窓から差し込む光は徐々に橙に変わる。
 ひた、ひた、と廊下を歩く音が聞こえて、燭台切は緩みかけていた気を引き締めた。
 ――来た。
 書庫の入り口から僅かに顔を出すと、丁度鶴丸が審神者執務室の襖を開けているところだった。
 燭台切はじっと彼が出てくるのを待った。
 ガサゴソとしばらく部屋を漁る音が聞こえたと思ったら、ピタリと音が止む。
 燭台切は生唾を飲んだ。そろそろ出てくるだろうか。彼はちゃんと端末を持っているだろうか。
 しかし、襖から出てくると思った鶴丸の姿は一向に現れない。おかしい。
 耳をそばだて偵察をフル稼働させると、障子を開く音と、縁側を軋ませる音、それから庭の草を踏み鳴らす音が聞こえ燭台切は思わず動き出した。
 鶴丸は縁側から外に出て、どこかに端末を隠すつもりなのだ。
 ここで彼を見失っては元も子もない。燭台切は書庫を出て、物音を立てないように審神者執務室の前まで移動すると、そっと審神者執務室の中を覗いた。
 既に鶴丸の姿はない。
 燭台切は審神者執務室に侵入し、今度は障子の影から外を見渡した。
 ――居た。
 鶴丸は燭台切に背を向け、目の前の花畑を真っすぐ歩いていた。
 しばらく様子を伺っていると、花畑を抜け左に曲がり、茶室の影に消える。
 燭台切は鶴丸の影が消えた時点で素早く動き出した。同じように花畑を抜け、茶室の外壁に背中をつける。
 どうやら、鶴丸は本邸の外側に沿って歩いているようだった。本邸の北側からぐるりと左回りに進み、畑を突っ切って南へ向かう。燭台切もひっそり後をつけた。
 鶴丸がわざわざ畑の中を歩いているのは、どこかでついてきているかもしれない未来の誰かを配慮してのことかもしれない。自分の背丈ほどあるトマト畑は、燭台切を上手い具合に隠してくれる。
 畑の目の前には大広間前の庭があり、傍から短刀達の笑い声や長谷部の指示が聞こえてきて、燭台切は胸が痛くなった。
 畑を通り抜け、人気のなくなった庭を
鶴丸はペースを上げてザクザク進んでいった。
 納屋の裏を通り、馬小屋の裏を通る。
 燭台切はこの時点で、端末の隠し場所について大体察しがついた。
 もし自分が鶴丸なら、どこに端末を隠すか。それを考えれば自ずと隠し場所は見えてくる。
 お目当ての場所についた頃には、空は群青色に変わっていた。
 鶴丸はその場所に座り込むと、どこからともなく取り出したスコップで地面を軽く掘り始めた。燭台切は思わず呆れ笑いをしてしまった。
 ――なるほど。これじゃあ、いくら大掃除しても出てこないよなぁ。
 燭台切はゲームが始まる四日前、刀剣男士総出で端末を探し回ったことを思い出す。端末を探していたら本丸内の埃が気になって、結果大掃除に発展してしまったんだよなぁ。大変だったけれど、今思えば楽しかった。
「これは独り言なんだが」
 燭台切は心臓が跳ねた。唐突に、鶴丸が空に向かって喋りだしたのだ。
「もしこれを誰かが聞いているなら、きっと俺はもう死んでるんだろうからな。死んだ人間の遺言ってことで、好きに言わせてもらうぜ。どっかの誰かさんも、聞く気があるなら、どうかそのまま聞いてくれ」
 燭台切は体を硬直させながらも、彼の声に耳を傾けた。
「知っての通り、俺はこれから起こるゲームに賛同している。やり方はどうであれ、俺は政府のやり方は正しいと思っている。その上で、身勝手ながら言わせてもらうが――」
 そこで、彼は言葉を止めた。
 燭台切はじっと彼の表情を見つめる。
 彼は迷っているようにも見えた。
 それを言うことが、とても勇気のいる事だとでもいうように、ゆっくり、言葉を溜めて、その言葉を口にした。
「もし、出来るなら」
 サァッ、と緩やかな風が木々を鳴らす。
 木の葉が地面を擦る。
「どうか、この本丸を、仲間を、」
 肌寒い空気に、音が震える。

 ――俺を、

「助けてくれ」

 空に向かって放った言葉は、空気に溶け、されどしっかり燭台切の耳に届いた。
 一文字だって聞き漏らさなかった。強く強く心に刻んだ。
 任せてくれ。そう言って強く拳を握りしめ、燭台切は鶴丸に背を向ける。
 鶴丸の顔は見ない。これ以上ここに留まる必要はない。
 早く帰らなければ。自分を待つ大和守と山姥切のために、まだ生き残っている仲間のために、死んでいった者達の遺志を継ぐために、この本丸を助けなければ。
 燭台切は息を吸った。
『帰城』
 心の中でそう唱えて、現代に帰る。
 燭台切の体は空気に溶けるように、過去から未来へ飛び立った。

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