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 蘭ちゃん、園子ちゃんに誘われてとある島の山奥にあるホテルを満喫していた。何といってもお菓子とドリンクが食べ飲み放題でサービスが充実していて最高のホテルだった。
 蘭ちゃん達は山の上から景色を見に行くと言ってホテルを出ていき、毛利さんは少し離れた席でお酒を飲んでいた。お菓子を食べながらソファで一人くつろいでいると、コナン君が難しい顔をして歩いていた。

「どうしたの。何かあった?」
「さっき新一の方の電話に着信があってよ。今晩、このホテル近くの灯台の前に来いって」
「えぇー、また厄介なことに巻き込まれてる」

 周りに人がいないか確認し、彼に黒ずくめの組織絡みなのか聞くと分からないとのことだった。約束の場所に新一君が来なければこの島を爆破すると脅されているらしい。

「何が目的なんだろうね。熱烈な告白かなぁ」
「バーロー。こっちはキッドの予告状が出て忙しいってのに」
「え、ここにキッドが来るの?」
「移動中園子が騒いでただろ。このホテルの横の美術館にあるビッグジュエルを狙って……ってオメー移動中寝てたな」
「あはは。でもさ、そっちに着信があったってことは、新一君の姿じゃないと駄目ってことだよね。どうするの?」
「どうすっかなぁ」

 頭をかきながら彼は私の隣へ腰を下ろした。

「永愛、変装とかできねぇよな?」
「……まさか新一君の恰好をしろと?」
「灰原はいねぇし夜までにこんな山奥に薬を持ってきてもらうのは不可能だろ?」
「それで私に頼るのはどうかと思うな、探偵さん。夜までに電話の相手を特定したら良いんじゃないかな?」
「それしかねぇか」

 コナン君は考え込みながらまた歩いて行ったので、何か手伝えることがあれば言ってね、とだけ伝えておいた。変装は無理だけど。新一君に脅しの電話、そしてキッドの予告状。大変だな。

 一度部屋に戻ろうと廊下を歩いていたら、部屋のドアをじっと見つめる男性を見かけた。確かあの部屋はコナン君の部屋だ。その男は怪しげな雰囲気を纏っていて、物陰に隠れて様子見する。
 もしかしてコナン君の知り合い? それとも例の電話はあの男? だとしたらコナン君の正体が新一君だと知っている?

「誰だ!」
「っ!!」

 しまった、考え込んでいたら男に私の存在がバレてしまった。こちらに近づいてくる男は、帽子とマスクをしていてはっきり分からないが、切れ長の目に太い眉の若い男だ。どうする、戦うか逃げるか。武器を持っているかもしれないし他に仲間がいるかもしれない。ここは逃げた方がよさそうだ。
 ホテルから飛び出し、全速力で走ると最初は追ってきた男も諦めたのかいなくなっていた。


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 一方、コナンは信じられない光景を目にしていた。目の前には自分の元の姿である工藤新一がホテルのロビーで蘭と話していたからだ。

「新一! どうしてここに!?」
「よぉ。怪盗キッドが来るって聞いて俺も捕まえるのに協力しようかと思ってよ」

 一体この男は誰だ、とコナンがジッと見ていれば、工藤新一に変装した男は自分に向けてウインクをした。その動作でコナンは男の正体が誰だか分かったが、蘭がこの場から離れるまで黙っておこうと口を閉じた。

「ここのホテルに泊まってんだろ?」
「うん。……あっ、私達の近くの部屋が空いてないか園子に確認してくるね」
「サンキュー」

 蘭との会話が終わると自分に扮する男の腕をコナンは下へ引っ張った。

「なんでオメーがここにいるんだ! 怪盗キッド」
「そりゃ情報収集にはちょうどいい格好だしな。……にしても、厄介なことに巻き込まれてんだろ、名探偵」
「ちょうど今オメーにな」
「俺じゃねーよ。脅されてんじゃねぇのか?」
「!! 何でそれを……」
「うちのお姫様が見ちゃってんだよな、犯人の顔」
「何!? ……って誰だようちのお姫様って」
「だから今回は協力してやるよ」

 ニッと口角を上げる男にコナンは腹を立てたが、工藤新一になれるのは今はコイツしかいないと腹をくくった。

「オメーに手を貸してもらうなんて気が乗らねぇが、仕方ねぇな」
「やけに素直だな」
「相手が誰で目的が分からない以上、下手な行動は出来ねぇからな。仮に危険な奴だとしてもオメーなら何とかするだろ」
「オイオイ」

 コナンはキッドに交換条件を出した。新一に変装するのを許す代わりに今晩灯台の前に行ってほしいと。何故キッドが脅しの電話を知っているのか、電話の相手は誰なのか、そしてお姫様が誰を指しているのか、謎が増えるばかりで少年は頭を抱えた。


 遠くから自分を呼ぶ蘭の声が聞こえ、コナンは蘭の元へ走っていった。工藤新一もといキッドはホテルの隣にある美術館へと足を運ぼうとしたが、よく知っている女に声を掛けられた。



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