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「私が一番に見つけちゃったか」

 私と赤井さんと安室さんはコナン君を探しにそれぞれ別の方向へ向かった。しかし二人より先にコナン君を見つけたのはどうやら私らしい。

「事件は解決出来そう? 探偵さん」
「あぁ。恐らく犯人はまだこの建物の中にいる」
「なにそれ怖い」

 だけどまだ分からない点があるんだよな、と話すコナン君に先程の出来事を話した。

「じゃあ安室さんが公安だって本人から聞いたのか!?」
「うん。あとで口止めされると思うけどね……」
「オメーってほんとタイミングわりーよな」
「自分でもそう思う」

 頑張れよと慰められた。公安の人だって分かったから前のような脅しはないにしても、何を言われるのか恐ろしくて聞きたくない。逃げれるものなら逃げたい。

「それより怪我してんだから医務室に戻ってろよ」
「それを言うならコナン君もね。医務室、なんか視線が気になってゆっくり出来ないんだよね」
「視線?」
「怖い顔した人ばっかりでしょ。それに負傷した男の人もめちゃくちゃ怖い顔してたし」

 そう言うとコナン君は顎に手を当てて考える仕草をした。なんかおかしい事言ったっけ?

「俺達の他に負傷してたのは警察官だけだったが、他にもいたのか?」
「うん。多分一般人だと思うよ」
「……、一旦戻ろうぜ」

 コナン君の後についていき医務室に戻ると、その男の人はいなかった。いなくなっている事をコナン君に伝えると、突然彼は走り出した。

「次はここで爆発するかもしんねぇ!」
「ええ!?」

 この建物の中で爆発するかもしれないの!? 私はどうしたら……! コナン君置いていかないで!?
 すぐに見えなくなったコナン君を追いかけようとしたら後ろから声が掛かった。

「ボウヤは見つかったか?」
「見つかりました! そしてまた行っちゃいました! 早く、こっちです」

 赤井さんの腕を引っ張りながら、コナン君が走って行った方へと向かう。

「赤井さん足遅い!」
「君が俺の腕を引っ張っているからだろう」
「えっ! そうなんですか」

 走りながら腕を解放したら、赤井さんは私より前に出る。

「コナン君が走って行った方向分かるんですか!?」
「いや……」

 彼はハッとした顔をしていて思わず笑みが溢れる。この人、しっかりしているかと思いきや意外と抜けているところもあるのかもしれない。

「何が可笑しい」
「いえ、ギャップにびっくりしているところです」
「ギャップ?」
「可愛いところもあるんだなって」
「可愛いのは君だろう」
「えっ」

 ドキリ、胸が高鳴った。私の動きが一瞬止まるも、彼は気にせず続ける。

「可愛いと言う言葉は女性につかうものだろう」
「あ、そうですよね」

 びっくりした。私に言われているんじゃなくて、男性に可愛いって言うのはおかしいだろってことか。

 曲がり角の向こう側からコナン君と知らない男の人の声が聞こえてきた。穏やかではない感じだ。赤井さんも向こう側の様子を察したのか、拳銃を取り出した。角を曲がるとコナン君が男の人に飛びついているところで、投げ飛ばされてこっちに飛んできた。

 叫びながらこちらに飛んでくる小さな少年。それを赤井さんがキャッチし私に預け、彼は男を取り押さえた。

「コナン君、大丈夫?」
「あぁ。……あ、赤井さん! 犯人はその男だよ!」

 気づいたら男は気絶していて、騒ぎに反応した警察官が集まってきた。


********************


 怒涛の一日だった。彼らの推理により犯人は捕まり、その後FBIとの情報交換も無事に終わったらしい。帰ろうと荷物を持った時に安室さんから言われていたことを思い出した。彼の姿は見当たらないし、今日は帰ってもいいだろうか。
 ふと見たことのある眼鏡の男性を見つけた。確か公安の人だ。安室さんと話していたのも見たことがある。そうだ! あの人に伝言を頼もう。声をかけると鋭い目を向けられた。

「安室さんに、あの話は黙っているとお伝え願えますか?」
「一体何のことを……」
「そう言えば彼は分かってくれるはずなので!」
「……伝えておこう」

 クイっと眼鏡を指で上げながらそう言ってくれた。良かった、これで一安心。
 ここから出て早く家に帰ろうと警視庁本部から出たら、後ろから腕を掴まれた。まさか安室さんじゃ……。

「暗くて危険だろうから送ろう」
「あ、赤井さんかー。良かったぁ」

 彼は私の反応に首を傾げていたが、少し考えて分かったのか鼻で笑っていた。大人しく彼についていき、開けられた助手席のドアから車に乗ると、驚いた顔をされた。

「随分素直になったな」
「そうですか? 以前より赤井さんがどんな人か知れたからかもしれません」
「フッ、そうか」

 車を走らせて少し経った頃、ポケットに入れていたスマホが鳴った。チラリと赤井さんを見ると出ていいぞと言ってくれたのでスマホの画面を確認すると安室さんとの文字が。見なかったことにしようと思って電話を切ろうとしたら横からスマホを奪われた。

「ちょっと、赤井さん!?」

 あろうことか彼は安室さんからの電話をとった。スマホ越しに安室さんの声が聞こえる。

『永愛さん、今どこにいますか?』
「俺の車の中だ」
『その声は!』
「彼女に口止めでもするつもりか?」
『また邪魔をするのか!』

 二人の言い合いが始まってしまった。やめて、これ以上厄介なことにならないで……。

「あのー、私、安室さんが公安だって誰にも言いません。言う相手もいませんし」
「彼女もこう言っているだろう」
『口では何とでも言える!』
「どうやったら信じてもらえますかね……」

 私が悩んでいる間に赤井さんは安室さんに何か伝えたらしく、電話が切られスマホを返される。この人達に関わったらろくなことがない。


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