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青子から休憩に入ったと連絡が入り、三人で文化祭を回ることになった。執事とメイドの格好をした二人に挟まれて、何だか少し恥ずかしい。

「どこ回るー? 永愛下向いてどうしたの?」
「何か顔赤くねぇか?」

二人に顔を覗き込まれて軽く二人の身体を押す。

「なんだかちょっと照れちゃって。かっこいい執事と可愛いメイドの間を歩くのが」
「あははっ、何それー。じゃあ永愛はお姫様ね!」
「良いなそれ。スリー、ツー、ワン!」

快斗は私に大きなローブをかけたかと思いきや、一瞬にして私の服はドレスに変わった。スカート丈は膝下で動きやすいし、頭の上にはいつの間にかティアラが乗っていた。

「わー! 永愛可愛い!! 本当にお姫様みたい」
「良いんじゃねぇの?」
「可愛いけど、今のどうやったの!?」
「じゃ行くか。体動かそうぜ」
「えぇ!?」

混乱しながら二人の後を追う。体育館ではバスケのゲームをしていて、三回連続スリーポイントシュートを入れたら景品が貰えるというものだった。

「楽勝だな。誰から行く?」
「これって一人一回ずつ投げても良いの?」

疑問を投げかけるとバスケ担当の子が大丈夫だと言ってくれたので、三人連続で投げることにした。

二人は連続で華麗なシュートを決める。私の番がきてボールを渡される。久しぶりにバスケットボールを持ったな、なんて考えながらシュートを決めた。

「さっすが永愛!」
「二人も凄いね」
「っしゃ、景品ゲット!」

近くに腕相撲で勝ったら景品ゲットという看板をみつけて、柔道部の部室に入った。柔道部員が相手をしてくれるらしい。

「一番馬鹿力なのは永愛か」
「えぇ!? 快斗でしょ!」
「見てみて、部長に勝ったらお肉くれるんだってー」
「お肉!?」

部長に勝ったらお肉、他の部員に勝ったらお菓子が貰えるらしい。お肉かー、皆で焼肉……いや、すき焼きも良いししゃぶしゃぶも。どんなお肉なんだろう。

「部長をお願いします!」
「もう目が肉になってるじゃねぇか」
「永愛大丈夫かな」

周りからの歓声を受けながら体格の良い男子生徒が出てきて、肘を置く台を挟んで私の前に立つ。

「お姉さん、大丈夫かい? 俺は力には自信があるぜ」
「どんとこいです」

腕まくりをして台に肘を置き、部長と手を握り合う。手にグッと力を込められたので私も負けずに握り返すと、目を丸くしていた。
そしてスタートの合図があって数秒後、私は部長に勝っていた。お肉ゲット。

それから他のクラスも回って、景品を沢山もらったところで学校のチャイムが鳴った。どうやら文化祭は終わりに近づいているらしい。
在校生のみで行なわれる後夜祭に二人は参加するので、私は景品を持って帰ることにした。二人と同級生だったらどれだけ楽しかっただろう、と何度も思ったことを改めて思った。

「じゃあな、気をつけて帰れよ」
「また永愛の家遊びに行くね」
「うん。じゃあ二人とも楽しんでね。……あっ、快斗。服返してほしい。このままじゃ恥ずかしいし」
「おう」

元の服に戻してもらって、二人とわかれる。二人とも頭良いし運動神経も良いからすごかったな。楽しかった。


********************


帰り道、高架下で眼鏡の男性と話している安室さんがいた。横を通り過ぎるのも気まずいし道を変えた方が良いかな。

「あの眼鏡の人、何処かで……」

誰だっけ、何処でだったっけ。……あっ、以前病院で立てこもり事件の時にいた公安の人だ。公安の人と話しているってことはやっぱりコナン君が言ってたように、安室さんは公安の人なんだ。
脅された時は怖かったけど敵じゃないと分かった今、彼にどういう感情を向けていいのか分からない。


道を変えて歩き出すと、後ろから名前を呼ばれた。この声……安室さんだ。恐る恐る振り返ると、微笑んでいる安室さんが立っていた。

「お久しぶりです。ちょうど見かけたので声をかけてしまいました」
「お、お久しぶりです。……えっと、はい。お久しぶりですね」

何を話したらいいのか分からず、よく分からない返事をしてしまった。
そういえば紅子ちゃんの予言で一人でいるのは凶って言われてたっけ。

『今日これから起こることを教えてほしいです』
『そうね……、一人でいるのは凶よ。変な人に絡まれるわね』

ドンピシャで当たってる。あの子凄いな。彼女の言う変な人が安室さんに値するのが申し訳ないような気もするけど。

「すごい荷物ですね。買い物ですか?」
「あ、いえ。幼馴染の文化祭に行ってて。……全て景品です」
「そうですか。良かったら家までお持ちしますよ」
「えっ!? いや、大丈夫です。ありがとうございます」
「予定がないので永愛さんさえ良ければ送らせて下さい。近くに車をとめてるので」
「…………はい」

この笑顔を断るなんて誰ができるだろうか。やっぱり安室さん、かっこよすぎる。

私の手から荷物を取って車の場所に案内される。車に乗り込むとエンジンがかかり動き出す。

「何かありましたか?」
「え?」
「この間まで敵意を向けられていたのに、今日は違うようだ」
「っ、ゲホッ!」

感づかれて思わず噎せてしまった。流石の観察力で誤魔化すことが出来そうにない。私が答えるのを彼は待っている。墓穴を掘らないようにしなければ。

「安室さんって、私の周りの人たちをどうする気もないですよね。私、悪い人だとばかり思っていたので」
「……キミはどこまで知っているんですか?」
「危ない組織があってそこに安室さんが入っているってことくらいしか」
「それだけじゃ僕は悪い人間のままですが……。まさか……」
「貴方を信じたいなと思っただけです。今までの行動からして安室さんって悪い人には見えないので。何か事情があってそこに入っているのかもって勝手に思ってて」

本当は彼の正体を知っているんだけど、それを正直に伝えてしまったらコナン君と赤井さんに迷惑がかかる。彼が公安だってことは知らないふりをしていた方がきっと良いはず。

隣の彼は何を考えているのだろうと隣を見る。彼は困ったように眉尻を下げ、口を開いた。

「永愛さんは、不思議な人ですね」

それから安室さんは何も聞いてこなかった。





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