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「涼しいなぁ、工藤。日頃の疲れも忘れるくらい心地良いで」
「そうだなー。眠くなってきた」

上を向き目を瞑ってボートの上でゆっくりする服部君とコナン君。勿論、漕いでいるのは私だ。涼しげな二人とは変わって私は汗だくだ。あっち行きたいだこっちに行きたいだとこの二人注文が多い。

「そろそろ漕ぐの変わってくれると嬉しいなー」
「前に鍛えたいって言うとったやんけ」
「俺はこの体じゃ無理だと思うぜ」
「えー、じゃあちょっと休憩」

オールから手を放すと、一方向に進んでいたボートはプカプカと波に揺られる。

「平次ー! はよこっちまで漕いできいやー」
「こいつが漕がんねん」
「あんたが漕いだら良いやないの」

遠くから和葉ちゃんが服部君に話しかける。彼女の意見に「そうだそうだー」と賛成すると、彼は川の水を手ですくって勢いよく私の顔にかけた。ビンタされたかのような水の速さだった。

「もう! 何するの!」
「お前なんか腹立つねん」
「なんかって何!?」
「喧嘩すんなって。子供じゃねぇんだから」
「「……」」
「……んだよ」
「小学生に注意された」
「悪いな工藤」
「私には?」
「うっさい」

やっぱり服部君は私の知り合いの中で一番意地悪だ。でもボートは漕いでくれるようだ。
その後、二人は過去の事件の話で暫く盛り上がっていて、もちろんその会話に入っていけない私は蚊帳の外だった。ちょっと寝てたから良いけど。

そろそろ時間よー、という蘭ちゃんの声が聞こえ、話に夢中になっている二人に伝える。

「あ、もうそんな時間か」
「話しとったらあっという間やったな」

先にボートから降りた三人の手を振る姿を見て、幼馴染って良いよねと呟くと服部君が鼻で笑う。

「誰かさんは一緒にいるやつほったらかして、幼馴染の元へ走って行きよったしなー」
「えー、ごめんってば。幼馴染見かけたら声掛けに行きたいじゃん」
「そのまま逃げ去っていくんか?」
「……どうしようコナン君、割と前のことなのにとても根に持たれてる」
「俺に振るなって。……ったく。服部、こいつあんま考えないで行動する馬鹿なんだし許してやれよ」
「ちょっ!? ば、馬鹿?」
「ハァ。そうやなこいつアホやしな」

二人して呆れた表情をしているけど、やめてほしい。幼馴染の二人が賢すぎるためか、自分でも頭が悪いのは幼い頃から自覚している。
船着き場に着いたので立ち上がると、フラっとめまいがした。視界が真っ白になっていくのが分かった。

「永愛!」
「おい!」

目は開いているはずなのに視界は真っ白いまま。そのまま私は意識を失った。


********************


「おい、大丈夫か!?」

少しの間、意識を失っていたのが分かった。目をゆっくり開けると、服部君の顔が近くにあった。
川に落ちたようだ。彼は私の体を抱き締めるように支えてくれている。

「……ごめん、どれくらい気失ってた?」
「数秒や。もう大丈夫か」
「うん、ありがとう。飛び込んでくれたんだよね」
「おん」

「永愛姉ちゃん意識戻った!?」
「うん、戻った」

岸にいるコナン君と女の子達。皆が心配そうな顔でこちらを見ている。コナン君が全身ずぶ濡れだけど、もしかしてコナン君も川に落ちた?

「永愛ちゃん、上がってこれる?」

蘭ちゃんが手を差し出してくれて、その手を掴んで岸に上がる。服部君は自分で上がっていた。三人、ずぶ濡れだ。ボートのおじさん達にも心配されてタオルを貰った。

「ちょっと。大丈夫? 貧血かしら」
「水飲める?」
「う、うん。ありがとう」
「疲れたんとちゃう? 平次! あんたずっと永愛ちゃんにボート漕がしてたやろ。見てたで」
「はぁ!? ……まぁ漕がしてたな」
「じゃあ熱中症もあるかもしれないわね。ほんと、女の子に漕がせるなんて全く……」
「いやいや! 大丈夫。和葉ちゃんも園子ちゃんもありがとう。服部君、助けに川に飛び込んでくれたわけだし。コナン君も?」
「あ、うん」

「よーし、じゃあ浴衣レンタルしたお店に謝った後、着替えて皆で温泉よ!」

水分補給したら、元気になってきた。汗だくでボート漕いでたし、軽い脱水症になってたのかも。
蘭ちゃんの話によると、倒れそうになった私の体を支えようとコナン君が手を引っ張ってくれたらしいが、支えきれず一緒に川に落ちてしまったらしい。それと同時に服部君も川に飛び込み、私達を助けてくれたようだ。

温泉に着き、タオルをレンタルして男湯と女湯に分かれる。

「コナン君も女湯来る?」
「えっ」
「ららららんちゃん!?」
「ななな何言ってんのや!」
「ふふっ冗談よ、二人ともすごい慌てようね」
「ほら男湯行くぞ、ボウズ」

冗談か。本気で言ってたらどうしようかと思った。
温泉も楽しみだし、その後の観光も楽しみだなぁ。

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