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「蘭ちゃーん! あーそーぼ!」

土曜日の朝、遊ぶ約束をしていた蘭ちゃんの家へ訪れた。ハイテンションでドアをノックすると、ガチャリとドアを開けてくれたのはコナン君だった。

「小学生みたいだね! 永愛姉ちゃん」
「やだなぁ。コナン君ったら」

小学一年生に言われたくないぞ、と微笑みながら屈み、コナン君の両頬を外側へと伸ばした。目に涙を溜め痛がっているが反省するまでやめないんだから。それを蘭ちゃんに見られ、子供をいじめちゃダメよと怒られた。

今日は蘭ちゃんとコナン君が私を大阪に連れて行ってくれるらしい。何でもそっちに友達がいて、観光スポットを案内してくれるという。なんて親切な友達なんだろう。


********************

「へぇー! アンタが蘭ちゃんが話してた永愛ちゃんか」

いつの間にか大阪に着いていた。新幹線でぐっすりと眠ってしまってたから気付かなかった。和葉ちゃんと服部君というこれまた美形な二人。四人は同性同士、とても仲良さそうに見える。

「ごっつ美味いお好み焼き屋連れてったるからついてき」

前を歩くコナン君と服部君に着いて行く。さっきから服部君がコナン君のこと工藤と呼んでいるけど、どうしてだろう。

「永愛ちゃんは大阪来るん初めてなん?」
「うん。関西自体初めてで。今日が楽しみ過ぎて夜眠れなかったぐらい」
「だから新幹線で爆睡だったのね」
「何やおもろい子やなぁ」

人懐っこい笑顔で接してくれる和葉ちゃん。両側に美人さんがいてデレデレしちゃう。きっと今だらしない笑い方してると思う。

「昼までまだ時間あるし色々見て回らへん? なぁ平次達もええやろー?」
「別にええけど」

わーい、と和葉ちゃんの提案に喜んだ。専門店が多く入っているという大きな建物に入りエレベーターに乗る。しかし、ここで事件は起こった。急にエレベーターが停止した。勿論停電もする訳で。

「きゃあ! 何!?」
「何なん!?」

ガラス張りのエレベーターではなかったので、外からの光は全く入ってこないため、目が慣れるまで動けない。ふと横を見ると目を疑う事が起きていた。

「服が、浮いてる!?」
「何!?……ってそれ平次兄ちゃんだよ」

腕時計型のライトを服部君に当てるコナン君。服部君は明るい服を着ていたので、真っ暗な所では服が浮いて見えたのだ。

「あ、そうなんだ。肌が黒くて見えなかった」

私の一言にコナン君をはじめ蘭ちゃんや和葉ちゃんも笑う。エレベーターが止まっているというのに、何とも不思議な光景だ。

「何やこの失礼なねーちゃんは!」

まぁ服部君は怒ってたけどね。気にしない気にしない。数十分後にはエレベーターは動き、出ることができた。今日は誰かが死んだりする大きな事件が起こらなくてよかった。

「急に止まって怖かったけど、永愛ちゃんのお陰で怖さが吹っ飛んじゃった」
「せやなぁ。ありがとうな」
「ううん」

「俺をコケにして笑いとったっちゅうんは腹立つけどな」
「まぁまぁ、しゃーないしゃーない」
「変な関西弁つかうなドアホ! イントネーションが違うんじゃ」

関西に馴染もうと思って関西弁をつかってみたのに怒られた。呆れた顔をしたコナン君にボソリと話す。

「ねぇコナン君。服部君って煩いね」
「そーだね」
「聞こえとるぞボケ」

その後はショッピングをしてから、オススメのお好み焼き屋へ行った。服部君はお好み焼き屋の店長からとても気に入られていて、店長から皆へとサービスをしてもらった。それまでにも道行く人に彼は声をかけられていた。

「服部君って人気者なんだね。意外と」
「意外は余計やっちゅーねん。何せ俺は西の名探偵やからな!」

テーブルの前の鉄板からお好み焼きの良い匂いがしてきた。もうすぐ食べれるかな。お腹がさっきからぐーぐーと鳴ってる。

「西の名探偵が服部君なら、東の名探偵は新一君?」
「アホ! 当たり前やがな。知らんのかい」
「まぁ言ってねーからな」

コナン君の声がいつもより低く小声だったので、はっきりと聞こえなかったけど、服部君には心を許しているのか少年探偵団の皆への対応と同じだった。

「ほら永愛ちゃん、焼けたで」
「わー! ありがとう和葉ちゃん。美味しそう!」

和葉ちゃんが皿に盛ってくれた。ホカホカと湯気が出てソースが輝いてて美味しそうだ。一口食べて美味しいー!と叫んだら微笑ましい顔で二人に見られていた。

「永愛ちゃんて妹みたいやわぁ」
「ふふっ、そうよね。あ、口にソースついてる」
「……」

蘭ちゃんに口元を拭ってもらうと、近くで噴き出す音が聞こえたと思ったらコナン君だった。あの子肩を震わせて笑ってる。くそぉ、もっと大人らしくしなきゃ。

「美味しいし家で作ってみようかなぁ」

ボソリと呟くと服部君が私の肩に手を置き、もう片方の手の親指を自分に向けて立てこう言った。

「ほんならこの服部平次様が作りに行ったろか?」
「いいよ。いちいち煩そうだし」
「永愛、言うたか。お前人を怒らせる天才ちゃうか?」
「え、私何もしてないのに。服部君が勝手に怒ってるだけなんじゃ……」
「ほんま腹立つやっちゃのー。なぁくど……こ、コナン君」

今また彼はコナン君に向かって工藤って言おうとした。その瞬間のコナン君は服部君に言うなって顔で睨んでたし、これは怪しいぞ。

まぁ疑うのは後にして、今は冷める前にお好み焼きを食べよう。もぐもぐとお好み焼きを味わっている間に、女の子二人はこんな会話をしていたらしい。

「なぁ蘭ちゃん。平次とあんなに言い合うなんて、あの子意外と度胸あるよな」
「そうね。今日が初対面っていうのに」

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