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「よっ!」
「いらっしゃい、快斗」

休日の朝、快斗が家に来た。ラフだけどいつもよりオシャレな格好からして何処かお出かけだろうか。そういえば最近はキッドばかりで快斗に会うのは久しぶりだ。

「今日暇だよな? 実は見せたいものがあってさ」
「暇だけど。なになに?」
「そのまま出掛けるから、ちょーっと失礼するぜ」
「えっ? えぇ!?」

大きな白い布が頭の上から被せられたかと思えば、一瞬にして自分の服が変わっていた。何が何だか分からなくて混乱する。

「じゃあ行こうぜ」
「ちょっ、今のどうやったの!?」

私の言葉が聞こえないフリをして彼はそそくさに出ていった。私も後を追ってアパートの階段を降りる。快斗は大きな黒いバイクに手を置いて待っていた。

「それ快斗の? 免許持ってたんだっけ」
「おう。乗るのは一年振りだけどな」

そういえば免許取り立ての時に子猫を避けてバイクを壊したって前に聞いたっけ。あれから一年か。

「後ろ乗せてやろうと思ってよ。初めてだろ? バイク乗るの」
「ううん。前に乗せてもらった事あるんだー」

あの時のツーリング、めちゃくちゃ気分転換になったなぁと思い出した。

「そうなのか?」
「前に友達に乗せてもらって」
「へぇ。バイク乗れる女友達いたんだな」
「いや、男の子だけど」
「……は?」
「え?」
「……」

あれ、なんで黙ったの。快斗は複雑そうな顔をしながらヘルメットを取り出した。あ、もしかしてこれは拗ねているのでは。

「快斗が一番に乗せてくれようとしてた?」
「バッ、ちげーよ!」
「ふふ、快斗は可愛いなぁ」

自分より少し高い頭を撫でると、やめろよと手首を掴んできた。ふと、この間手首にキスをされたことを思い出して顔が熱くなった。ほんと、目の前の幼馴染がキッドと同一人物とは思えない。

「なーに顔逸らしてんだよ」
「べべっべっつにぃー?」
「ホイ、これ」
「ありがとう」

二つあるヘルメットを見て、私の分も用意してくれたんだと嬉しくなった。快斗とバイクでどこかに出掛けるなんて楽しみだな。

「どこ行くか決めてるの?」
「いや、特に決めてねぇけど。どこか行きたいところあるか?」
「美味しいものが食べたい!」
「ブッ、永愛らしいな」

快斗がバイクに乗り、私も続けて後ろに乗る。掴まってろよ、と言われたが、前に服部君から言われた事を思い出して伸ばした手を引っ込めた。あの時はいきなりくっつくなって怒られたんだ。遠慮気味に快斗の服の裾を持つと、彼は不思議そうに後ろを向いた。

「もっと掴まってて良いんだぜ?」
「えっ、いや前に友達に乗せてもらった時に怒られちゃって……」
「そうなのか? ……一体どんな感じで掴まったんだよ」

服部君にした様に、後ろから快斗のお腹に手を回して自分の上半身を彼の背中にくっつける。一瞬肩がビクついた気がしたが気のせいだろうか。

「えっと、こんな感じ」
「……」
「快斗?」
「俺は良いけど他の奴にはやるなよ」
「分かった」
「その前に男が乗るバイクに乗るんじゃねーぞ。分かったな!?」
「えっ、うん。分かった。でも快斗こそ誰にでも口説いちゃダメだからね!」
「ハァ? 俺がそんな事する様に見えるか?」
「うん、見える」

飛行船の時キッドが蘭ちゃんにキスしようとしてたの見てたんだから。私が見ていた事をキッドは知ってるけど快斗は知らない。だけど、ちゃんと釘を刺しておかないと誰かに恨まれたりしたら大変だもんね。私も以前、相手の勘違いで巻き込まれて大変だったし。

バイクのエンジンがかかり走り出す。歩いている時とは違う風を感じ、いつもの街並みを見渡した。快斗すごいな、ちゃんと運転出来たんだ。

「二人で出掛けるの久しぶりだね」
「そーだな。いつも青子もいるし」
「バイクは三人乗れないもんね。……よし、車の免許取るか」
「永愛の運転は不安だから乗りたくねぇな」
「大丈夫! ちゃんと三人で遠出できるように頑張るから」
「へーへー」

それから快斗は最近あったことやクラスメイトの話をしてくれた。転校してきた紅子ちゃんって子がとても変わっていたり、ロンドン帰りの高校生探偵、白馬君。この子もとても変わっていると言っていたけど、説明が雑すぎて二人とも変な人だってことしか分からない。一体どんな人達なんだろと逆に気になってしまう。

「ねぇ、快斗って演劇部にでも入ってるの?」
「いきなりだな。知ってんだろ? 入ってねぇよ」
「じゃあ演技が得意なのか」
「はぁ? オメー今日おかしくねぇか? まるで別の俺を見たみたいな……」
「えっ?」

あ、やばい。コナン君の時みたいにうっかり口を滑らせてしまう。というかもう結構やらかしてる気がする。それに快斗は人並み以上に頭の回転が早い。正体を知っているってまだ知られたくない。

「この前快斗の顔によく似た女の人を見たの! 快斗が女装してたのかなって思って」
「俺の顔に似た女性だぁ? っていうか何で女装とかそういう発想になんだよ」
「実は女装が趣味だったりするのかなって思って……」
「バーロー。……ったくびっくりさせやがって」

何とか誤魔化せただろうか。表情が見えてなくて良かった。面と向かって話してたら絶対バレていた気がする。


それから私達はおしゃれなカフェでランチをして、綺麗な景色を見てツーリングを楽しんだ。


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