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赤いシャムネコは私達が乗る飛行船の喫煙室に、殺人バクテリアをばら撒いたと言う。喫煙室に入った人達が次々に感染し、隔離された部屋へ連れて行かれた。

皆でラウンジへ移動するが、哀ちゃん以外の子供達がいない。そういえばさっき部屋でトランプするって言ってたっけ。

「動くな!!」

突然扉が開かれ怪しい男たちが入ってきた。全員銃を持っている。顔に傷がある男がアンプルは見つかったか、と怪しい笑みを浮かべた。と言う事はこの男達が赤いシャムネコという事か。

「この船内に爆弾を仕掛けた。大人しく言うことを聞いていれば爆破したりはしない」

はぁ。今回はキッドだけだと思ってたのに、まさか今話題になっている赤いシャムネコが現れるなんて。銃に爆弾……。コナン君もいないしこの状況をどう乗り切ろうか。とりあえず今は大人しくしてよう。


「バンッ!!」

男が突然カメラマンのビデオカメラに向かって銃を撃った。やっぱりあの銃本物ですよねぇ。
そして男の指示に従って、乗務員は全員ダイニングに集められた。しかし子供達の姿は見当たらないまま。別の場所で危ない目にあっているなんて事にはなっていないだろうか。緊迫した空気に包まれている中、いびきが聞こえるなと思っていたら毛利さんが呑気に寝ていた。

携帯電話を回収され通信手段が失われたが、少年探偵団が持つ探偵バッジで哀ちゃんが誰かと連絡をとっていた。多分コナン君だろう。


「ねぇ、そういえば子供達がいないんじゃない?」

レポーターの女性がカメラマンの男性に向かって呟いた言葉が、顔に傷のある男の耳に届き、男は眉を顰めて聞き返した。

「子供?」
「えぇ……。確かあの子と同じくらいの男の子が三人と女の子が一人いたはず」

男は仲間二人にコナン君達を探すよう命じた。

「余計なことを……」

近くにいた阿笠博士が呟いた。同感だ。すぐに哀ちゃんがコナン君に今の状況を伝える。しかし応答がないようで何度もコナン君を呼び続けていると、ウェイターの女が探偵バッジを奪い取った。

「シャレたことするじゃない」
「君!?」
「フッ」

バチン!と頬を叩く音が響いた。女が哀ちゃんの頬を叩いたのだ。まさか子供に手をあげるなんて思ってもなかったから怒りが込み上げてくる。

「何をするんじゃ!」
「大丈夫!? 哀ちゃん」
「子供を殴るなんて最低!」
「今度妙な真似をしたら、殺すわよ」

バチンッ!!

「……っ痛いわね! 何なのアンタ! 殺されたいの!?」
「ふざけないで。アンタと同じことをしただけでしょ」

頬を押さえた女に銃を向けられるが、恐怖より怒りが勝っていて全く怖くない。

「その女を縛っておけ」

傷のある男にウェイターの女は従い、私の腕を縄で縛りつける。縛り終えた後、舌打ちされて肩を蹴られたので蹴り返そうかと思ったが、ウェイターの男性に止められた。蘭ちゃんとさっき話していたウェイター……、この人も奴らの仲間だろうか。もしそうだとしたらこの船内、敵が多くないか!?


********************


それから数分後、子供達が見つかってしまった。彼等は船内に仕掛けられた爆弾を処理していたらしい。流石としか言いようが無い。

「お前らがやったのか!」
「やったのはボクさ。コイツらは関係ないよ」
「良い度胸だ」
「!?」

男はコナン君の服の襟を掴み、あろうことか飛行船の外へ投げようとした。まさか本当に投げる気じゃ……。こんな上空から落下したら命はない。助けたいのに縛られた縄が邪魔して動けない。

「うわぁぁぁ!!」

投げた。男が、コナン君を……。無力な自分への怒り、そして絶望。色んな感情が混ざり合って声が出なかった。

「いやぁ!! コナンくーん!!!」
「待て!」

ウェイターの男性が蘭ちゃんを止めて、窓から自ら落下した。一般人じゃ助けれるわけがない。

ーーそう思っていた。だがコナン君を助けに行った男性はキッドだった。彼なら何とかしてくれる。そう思うと目尻が熱くなった。あぁ、しっかりしないと。幼馴染に負けてはいられない。

皆がキッドの登場に喜ぶ中、私は蘭ちゃんの発した言葉を聞き逃さなかった。さっきキッドが窓から飛び降りた時、新一君の名を呼んだのだ。何か彼女は勘違いをしているのかもしれない。キッドがウェイターの男性に変装して忍び込んでいたのはここにいる全員が分かったはず。それでも新一君の名前を呼んだということは、キッドの正体が新一君だと思い込んでいる可能性が高い。確かに顔は似ているが何故そんな勘違いをしているのだろうか。

それは後で本人に聞くとして、今は二人の無事を祈るのと……この状況をどうにかしなければならない。




********************


皆が沈んだ表情で席に座り私は縄で縛られたまま、大阪へ向かう飛行船。急に蘭ちゃんが席を立った。何か作戦があるのだろうか。

「蘭? 蘭!?」

園子ちゃんが蘭ちゃんを呼び止めるが、彼女は静かに男達の元へ歩いていく。彼女の腕をよく見ると赤くなっている。まさか蘭ちゃんも感染してしまったのか。赤くなった腕は誰かに掴まれた跡の様だった。

「!!」

藤岡さんというおじさんに掴まれた跡だ。あの人もウイルスに感染している。でも腕を掴まれただけで感染するなんて。飛沫感染と聞いていたが一体どういうこと……。

悶々と考えている間に、蘭ちゃんは隔離された喫煙室に連れて行かれた。どうしよう、蘭ちゃんまでいなくなるなんて。万事休すか。




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