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「赤いシャムネコ、ねぇ……」

テロ組織"赤いシャムネコ"が微生物研究所から殺人バクテリアを盗んでいったというニュースで世間を騒がしていた。そんな中、コナン君に誘われてやってきたのは、世界最大級の飛行船"ベル・ツリーI世号"だった。招待元は勿論園子ちゃんだけど。

「みんな早くー!」

歩美ちゃんが皆を呼びながら、元気いっぱいに飛行船につながる階段を登っていった。しかし途中で躓いてしまい、転ぶ前に作業員の人に助けてもらっていた。遠くから見てたけど作業員の人、ナイスキャッチだ。

そこへ蘭ちゃんが走って行ってお礼を言い、怪我をしていたのか絆創膏を作業員の人に渡していた。その光景を見て隣に居た哀ちゃんに声を掛ける。

「優しいね、蘭ちゃん」
「そうね。……何その大荷物」
「トランプとかお菓子とか持ってきたんだけど」
「貴女ね、子供じゃないんだから」
「えぇー、いらないの!?」

哀ちゃんに呆れられてしまった。そして私達も飛行船に乗り込もうとするが、先程の作業員の人と目が合う。

「……あれ、快斗?」
「どうかされましたか?」
「!? すみません。人違いでした」

快斗に似てたから思わず声をかけてしまったけど、眼鏡かけてたし声も低かったし違う人だった。恥ずかしい。こんなところでバイトしてるわけないよね。


飛行船に乗ると中はとても広くて、思わず「わぁ」と声に出てしまった。そして乗って間もなく飛行船は雲の上を飛んでいた。飛行船の中には宝石が展示してあって、夕方にキッドが盗みに来ると予告しているらしい。……ってことは快斗が来るんだ。

しかしそれよりも、皆の話の話題は赤いシャムネコだった。盗まれた殺人バクテリアは飛沫感染してしまうと大人達が話していた。怖いなぁ、なんて思いながらも窓の外を見ていたら景色が綺麗で恐怖は吹き飛んでいった。

「ふわぁぁ……」
「何だ、寝不足か?」
「うん、ちょっとね。コナン君がどこに行くのか当日まで教えてくれなかったから緊張しちゃって」
「あー、悪い事したな」

「みんなー。次郎吉おじさまがスカイデッキを案内してくれるってー」
「ビッグジュエルが見られるわよ」
「「「やったー!」」」

子供たちがはしゃぐ中、私はあくびが止まらなかった。眠気って急に来る。

「園子ちゃん、蘭ちゃん。スカイデッキ、後でも見に行ける?」
「えぇ、いつでも行けるわよ」
「どうしたの? 眠い?」
「うん」
「どうせまた楽しみすぎて昨日の夜眠れなかったんでしょ。鍵渡すから部屋で寝てなさいよ」
「ありがとー」
「寝過ぎちゃダメよ」
「はーい」

園子ちゃんから部屋の鍵を受け取り、皆がスカイデッキへ向かうのを見送った。本当、どっちが年上なのか分からないや。スマホでアラームをセットして、ふかふかのベッドの上で目を閉じた。


********************


アラーム音で目を覚まし、髪と服を軽く整えてから部屋を出ると、蘭ちゃんとウェイターの人がエレベータから出てくるのが見えた。

「蘭ちゃ……」
「ねぇ!」
「おっ」

蘭ちゃんがウェイターさんを呼び止める。そして顔を背けながら気まずそうに口を開いた。

「私……、信じてないから」
「では失礼します」

えっ、ええぇー!? どういう事!? どういう展開なの。あの二人知り合いなの!? 信じてないって何を? 突然の出来事に混乱してしまう。ウェイターさんは階段を降りて行ってしまったけど。

思い詰めた顔をしている彼女の背後からこっそりと近づく怪しいおじさん。蘭ちゃんも考え込んでいるせいか、おじさんの存在に気付いていない。

「蘭ちゃん、うしろ!」
「!?」

怪しいおじさんは彼女の二の腕をがっしりと掴んだ。何かされるのではと蘭ちゃんのそばへ駆け寄ったが、彼女は掴まれた腕を振り解き、攻撃体制に入っていた。

「ターイム!」
「藤岡さん!」
「いやー、失敬失敬。流石空手の関東大会チャンピオンだ。良い筋肉してる」
「……!」

笑い声をあげながら藤岡さんというおじさんは去って行った。

「あ、なんだ。蘭ちゃんの二の腕に触りたかっただけか」
「もう、やめてよ。永愛ちゃんぐっすり眠れた?」
「うん。それよりさっきのウェイターさんと知り合い?」
「えっ!? あ、いや全然!?」

そして逃げるように蘭ちゃんはウェイターさんとは真逆の方へ歩いて行った。……怪しい。もしかして、彼氏? いや元彼? まさか好きだった人?
なんだろうー! めちゃくちゃ気になる!!


「あの、すみません!」
「ヒョッ!? ……ゴホン。どうされましたか?」

ウェイターを追いかけ声をかけると、彼は変な声をあげて驚いた。ジッと見つめるが、私の知っている人ではない。

「蘭ちゃんと……どういう関係ですか?」
「今日知り合ったばかりですよ」


********************


「……あやしい」
「何がだよ」
「コナン君は知らない方がいいと思う」
「はぁ?」

「お待たせしました。デザートのケーキです」

テーブルにとても美味しそうなケーキが置かれた。ケーキに気を取られてしまったが、よく見ると運んできたのは先程のウェイターだ。蘭ちゃんが気まずそうにありがとう、とお礼を言った。

「うわー! 待ってました。美味しそう」

喜ぶ園子ちゃんの隣に座る蘭ちゃんは、ウェイターをジッと見つめていた。やっぱり何かあるんだ。

「蘭ってば! なに深刻な顔して見つめてんのよ」
「え?」
「あんな子が蘭の好みだっけ?」
「そうなの!? 蘭ちゃん。惚れちゃったの!?」
「別にそんなんじゃ」
「旦那に言いつけちゃおっかなー」

園子ちゃんが知らないってことは学校で知り合ったわけじゃなさそうなのかな。あー! 気になる!

「あーん、待ち遠しい! 早く大阪に着いてキッド様に会いたーい。そして願わくはその不敵な唇に私の唇を重ねて……」
「ダメダメ! そんなの絶対だめー!」
「「えっ」」
「えっ、あ。キッドは犯罪者でしょ。そんなの不謹慎よ」
「何ムキになってんのよ」
「別に」

どうしたんだろう蘭ちゃん。やっぱり何かあったのかな。園子ちゃんや私には言えないことなんだろうか。


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