零花大学附属警察総合病院で公安に恨みを持つ人達の立てこもり事件に巻き込まれた私、新谷 永愛。哀ちゃんの性転換の薬で男になっていて、いつ戻ってしまうかヒヤヒヤしていた。
犯人に連れてこられて出入り口から入ってきたのは、スーツを着た眼鏡の男性だった。恐らく警察の人なのだろう。
「お前が公安の人間か」
「えぇ、貴方達の要望は聞いています。彼の解放は致しますので、ここにいる方達の人質を解放して下さい」
「あの人が解放されてからじゃねぇと、コイツらの安全は保証できねぇな。それと俺たちの逃走ルートの確保と公安からの謝罪も忘れていないだろうなぁ?」
「分かってます。逃走ルートの資料を持ってきてますので、机のある部屋に移動していただけると助かります」
「チッ、お前らついて来い」
グループのうち三人が公安の人と別の場所へ移動した。
「これを」
「?」
安室さんは私の後ろで縛られている手に何かを渡される。彼の手首を見ると縛っていた縄は切られていた。渡されたのは小さなカッターか。周りにバレない様に縄にカッターを当てる。
そこで、変装している警察達が動き出した。
「なんだお前ら! そこを動くな!」
複数の警察官があっという間に犯人達を気絶させ縛り上げる。
「警察が紛れ込んでいたのか! 警察も人質も殺せ!」
私の近くにいた一人がそう言ったが、すぐに安室さんの手によって倒れる。しかし犯人のもう一人が近くにいた子供を狙っていた。急がないと、あの子が捕まってしまう。
透かさず男の腕を掴み、胸を押した。そして体がよろけたところで腹を思いっきり蹴った。思ったより男は吹っ飛んでいってしまって、そのまま気絶していた。
「あ、あっありがとうお兄ちゃん」
「ううん。無事で良かった」
「好き勝手しやがって、この!!」
「!?」
私の背後から男の声がして振り返ると拳がそこまできていた。避けたらこの子に当たってしまう。せめて腕でガードを……。
「ぐっ!? なんだお前」
「……」
安室さんが男の腕を掴んでいた。安室さんの力が相当強いのか、男は顔を顰めて腕を痛がっていた。そして安室さんは男の首の後ろに手刀を入れ気絶させた。
「大丈夫ですか?」
「はい。助けていただいてありがとうございます」
「いえ、その子を救ってくれて助かりました。やはり君は強い」
「そんな、わ……俺より貴方の方が遥かに強いです。それよりも他の人達は……」
ハッとして周りを見渡すと、マスクをした男達は皆縛られていた。先程の眼鏡の公安の人も戻ってきていて全員無事だったことにホッとした。
「無事、全員捕まえられたみたいですね」
「はい、良かったです」
続々と警察官達が出入り口から入ってきて、犯人グループを逮捕していた。私も早くこの場を去らなければ。
「一つ、お聞きしたいことがあるのですが」
「え? 何でしょうか」
「君は新谷永愛さんをご存知ですか?」
「! ……どうしてそんなことを聞くんです?」
「やはりご存知なんですね」
「まぁ……親戚なので」
「親戚……。成程、そうでしたか。でも資料には……いや、僕は安室透といいます。よかったら君の名前を教えてもらっても?」
「聞きたいのは一つでしたよね」
彼と喧嘩する気はないので、微笑みながらそう答えた。ていうか名前なんて考えてもないし。
ーーーードクンッ
……きた、この感じ。もうすぐ薬の効果が切れるんだ。二回目だけど苦しい。それに汗が一気に噴き出てくる。
「じゃあ俺はこれで!」
「待って下さい!」
走ってその場を去るも、安室さんが後ろから追いかけてくる。やっばい、あの人足早っ!?
「この間も今も、どうして君は逃げるんです!? やっと……会えたのに!!」
「!?」
やっと会えたって、まるで会いたかったみたいな……。そんな何で。立ち止まって聞きたいけど、そんな時間はない。近くのスーパーに入り、商品棚の後ろに隠れた。
そして、体が元に戻った。安室さんにバレないよう女子トイレに駆け込み、哀ちゃんに戻ったことを伝えた。て言うか咄嗟に親戚って答えてしまったけど、今度彼に会った時に何か聞かれそうだ……。
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「そりゃ大変だったな」
「最近、コナン君の不運をもらってるのかもしれない。何かと事件に巻き込まれる……」
「バーロー。俺のせいかよ」
阿笠博士の家に行くとコナン君もいて、部屋に篭っている哀ちゃんを待っている間に会話していた。
「あっ、ちょうど良いや」
「え、何が」
「来週末空けとけよ」
「う、うん? 何かあるの?」
「おう。ゆっくりできると思うぜ」
なんだろう……。事件が起きる気しかしない。