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いつもより低い声、高い身長、短くなった髪。私はまた性転換の薬の実験台になっていた。昨日大学の帰りに偶々寄った阿笠博士の家で哀ちゃんに、改良したから飲んで欲しいと言われ家に持ち帰った。

そして次の日薬を飲んで出掛けたは良いけど、特に何もすることがない。平日の昼間だから皆には会えないし。因みに私は講義がないから大学は今日は行かなくても良い。

カフェでも入ろうかなと思ってカフェを探していたら、道端でお婆さんが倒れていた。駆け寄って声を掛けるが返事がないのですぐに救急車を呼んだ。

付き添いで零花大学附属警察総合病院に来たが、お婆さんは持病の薬が切れ病院に行く途中で倒れてしまったようだった。病院について三十分くらい経っただろうか。お婆さんのいる病室に案内された。

「松永さん、この方が松永さんを助けてくれた方ですよ」
「あら貴方が。ありがとうね、助けてくれて。名前を聞いても良いかい?」
「いえ、ご無事で何よりです。新谷と言います」
「新谷さん。本当にありがとう。また今度お礼させておくれ」
「そんな、」

突然大きな爆発音が聞こえ、私の声はかき消された。

「今のは!?」
「大きな爆発のような音だったね……」
「ちょっと確認してきますね」

看護師さんが病室から走って出て行ったので、病室の窓から辺りを確認する。ここからは遠いが、病院から煙が出ている。

「何かあったのかねぇ」
「煙が出てます。爆発があったのかもしれません」

でも何となくそれだけじゃない気がした。逃げる足音と怒鳴る声が微かに聞こえ、先程の爆発は何かの事故ではなく意図的に行われた事だと思った。

「看護師さんも帰ってこないし、様子を見に行った方がいいのかね?」
「いえ、今は動かない方が良いかもしれません。寧ろ隠れた方が……」

ガラリと病室のドアが開いた。誰だ、どうしよう……心臓の音が煩い。恐る恐る振り向けば、安室さんがそこに立っていた。

「ここは危険です。早く安全な場所へ……。貴方は……!」

彼は私を見るなり目を見開いた。そういえば以前この姿で会ったことあったな。

「えっと、危険ってどういう事ですか?」
「……今、銃や爆弾を持った複数の人間がこの病院にいます。人質はここに居る僕達全員です」
「!? 立てこもり事件ですか。犯人の目的は?」
「刑務所にいる仲間の解放です」
「成程……。でも安全な場所なんて一体どこに」
「警察が逃走ルートを一つだけ確保しています」


逃げ遅れている人がいないか確認しながら、安室さんに着いて行く。しかし犯人グループに見つからないように逃げるのは大変で、ある程度の人数を脱出させることが出来た後で私達も見つかってしまった。

「病人が少ないと思ったらここから逃してたんだなぁ!? ふざけた事を……」

銃口が私と安室さんに向けられる。どうしよう。松永さんは外に脱出することが出来たけど、私達は逃げ遅れてしまった。銃を向けられたまま歩かされる。多分人質を集めている場所があるんだ。隣を歩く安室さんは焦った様子もなく冷静で一瞬驚いたけど、そういえばこの人は黒ずくめの組織の一人だったと思い出した。


広い受付ホールには医療従事者や入院患者が手足を縛られており、周りには銃を持ちマスクで顔を隠した人達が十人程並んでいた。私達も手足を縛られ、座らされる。

さて、どうしようか。この姿のまま事件に巻き込まれてしまった。出来る事なら犯人グループを全員倒して、女に戻る前にこの場から立ち去りたい。多分そろそろ薬を飲んで一時間だ。改良されたとはいえ、いつ戻るか分からない。

「動ける人質は全員縛ったな。警察と……いや、公安と連絡は取れたか」
「はい。こちらの要望を伝えました。五分後に公安の一人がここに来ます」

犯人達が会話する中、安室さんが口を開いた。

「一つよろしいですか?」
「あ? 何だ」
「何故公安なのでしょうか。何か恨みでも?」
「お前には関係ないだろう!」

犯人グループのうち一人が安室さんに対してそう叫んだが、もう一人の冷静な男が口を開いた。

「……いや、話してやるさ。アイツら公安は俺達の仲間を裏切りやがったんだよ。アイツらの裏切りによって仲間は逮捕され重い罪を被ることになった」

彼らが話している内容はさっぱりだけど、公安警察に恨みがあって今から公安の人がここに来る。それで犯人の要望は刑務所にいる仲間の解放。……ハァ、病院を巻き込まないでよ。

安室さんから犯人達が離れ、こっそりと彼に話しかける。ここは協力しないと解放されなさそうだし。

「何か策はあるんですか?」
「えぇ、まぁ」

警察が既に何人か変装してこの場にいるらしい。犯人グループをここから別の所へ誘導し逮捕。見張り役で残った犯人がいれば、ここにいる変装した警察が逮捕すると言う作戦のようだ。


さて、犯人達が捕まるのが先か、私の体が元に戻るのが先か。……急がないと。

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