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目を覚ますと布団の上にいて、私の部屋じゃなくここは工藤家なんだと分かった。カフェに行った後からの記憶がない。気を失ってしまったのかな。
眠っていた間、心地良かった気がする。それに頭がポカポカする。なんでだろう。

リビングに行くと沖矢さんの後ろ姿が見えた。多分匂い的にカレーだ。

「沖矢さん」
「おや、目が覚めましたか」
「すみません。ご迷惑を……」
「いえいえ。ゆっくり眠れましたか?」

コクリと頷くとテーブルにカレーが二つ置かれた。時計を見ると二十時前だ。私が起きるのを待っててくれたのだろうか。お礼を言って椅子に腰を下ろす。

「寝てる間に私の頭にあったかいタオルとか置いてくれてました? 頭がポカポカするんです」
「あぁ、良い夢を見れるように頭を撫でてましたよ」
「なっ撫で……!?」
「苦しそうな顔をしてたのでつい」
「えっ、あっ……ありがとうございます」

さらりと恥ずかしい言葉を言う人だなぁ。私一人で照れてしまう。カレーを口にパクパクと運んでいると、沖矢さんの手が止まっているのに気づき私も手を止める。

「……カフェに向かう途中、つけられているのは分かってたんです。まさか店員になりすまして接近して来るとは思いませんでした。あの後店側に聞いてみましたが、誰も知らないとの事でした」
「……」
「でも犯人は変装していない。若い女性だということは分かりました。後一歩で捕まえられます」
「若い女性……」
「えぇ。何か恨みを買ったり、心当たりは?」
「特には……」

あのカフェのウェイトレス……。あまり覚えてないけど、確か黒髪の女性だった気がする。犯人はバーボンだと思ってたけど、そうじゃなかったのかな。仲間がやってる可能性は残ってるけど。


********************


次の日、朝から出かけた沖矢さんに家でじっとするように言われたが、昼食がなかった。冷蔵庫に食材があったけど料理は苦手だし、勝手に貰うのも申し訳ないので近くのスーパーに向かう。ご飯を買ってすぐ戻るつもりだったので自転車で出かけたが、いつもとどこか違うような気がしていた。

なんだろう、この違和感は。違和感を覚えながら自転車を漕いでいると、右から車が走ってきたのでブレーキをかけようと手に力を込めるが、ブレーキが効かない。

「やっばい……!!」

咄嗟に自転車を降り、自転車を止める。そんなにスピードを出してなかったので車がくる前に止めることができた。

……やっぱり、自転車に細工されていたんだ。大人しく家で過ごしてないとダメだな。それにしても私、そんなに恨まれるような事したっけ。安室さんの正体も誰にも話してはいないし、やっぱりあの女の人に何かしてしまったのだろうか。殺したくなる程の恨みを……。

自転車を押して帰っていると、家の前で仁王立ちする沖矢さんが見えた。

「沖矢さん、ただいまです」
「永愛さん? 家にいて下さいって言いましたよね?」
「えっ!?」
「言い、ましたよね?」

めっちゃ怒ってるー! 圧がすごいんだけど……!? 約束破ったらめちゃくちゃ怒るタイプの人ですか。

「えっと、ご飯を買いに……」
「それでどうして自転車を押して帰ってきてるんです?」
「あー、何かブレーキが効かないように細工されてまして」
「やはり……。見たところ怪我はなさそうですね。ハァ、コナン君の頼みとはいえ君を預かっている以上、危ない目に遭われては困るんですよ」
「すみません。気をつけます」
「えぇ、よろしくお願いします」

ほんと外出るとすぐ狙われるから気を付けないと……。家に入ると昼ご飯が作ってあったので、買ってきたものは冷蔵庫にしまった。

「この後、夜まで出掛ける予定ですが、くれぐれも外出は控えるようにして下さいね。もし外出するならコナン君を呼んで下さい」
「分かりました。……あ、でもどうして今家に? 今日は一日出かける予定だったんじゃ」
「何となく永愛さんが出かけてる気がして戻ってきたんです。まさかその予測が当たるとは思いませんでしたけど」
「あー、すみません」

そして昼食を終えた沖矢さんはまた出かけて行った。まるでお昼ご飯を作りに仕事から帰ってきてくれたお母さんじゃん。彼の言う通り家で大人しくしてよう。


それから一時間後のことだった。インターホンが鳴ったのでモニターを確認するが誰もいない。ピンポンダッシュかと思ったが、ポストを開ける音が聞こえて気になって外へ出た。

外には誰も居なくてポストを確認しに行った。中には手紙と地図が入っていた。

<誰にも言わずに来い>

手紙にはそう書かれていた。地図に記された場所は、毛利探偵事務所近くの歩道橋かな。……誰にも言わずにか。歩道橋って事は上から突き落とされるのが予想出来る。

勝手に行ったら沖矢さん怒るだろうし。無視して家で大人しくしてよう、と思った時、封筒からもう一枚手紙が落ちた。

<来なければ大切な人を同じ目に合わせる>

考え読まれてるじゃん……。大切な人ね。バーボンと同じ脅し方。やっぱり犯人は彼なのだろうか。だとしたらカフェで見た女性はバーボンの仲間……?

「あーー! もう!」

行くしかないか。探偵事務所の近くだし、私に何かあったらコナン君が見つけてくれるはず。……それが命を落とした後だとしても。ううん、今は暗いことを考えるのはよそう。

「犯人を……捕まえてやる」

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