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快斗が家に来てくれた日から、バイトの時間を少しずつ減らした。一人の時間が不安な時は快斗や青子の家に遊びにいったり、コナン君達のところへお邪魔していた。

大学に向かう途中、前を歩くスーツを着た男性の鞄から小さな箱が落ちた。男性は落としたことに気づいていない。箱を拾い上げ、男性に声をかける。

「あのすみません。落とされましたよ」
「えっ、あ! ありがとうございます!」
「いえ」

安堵の表情でその箱を受け取った男性は、それを大切そうに両手で包み込んでいた。

「大切な物なんですね」
「え?」
「……あっ、いや!」
「実は彼女に渡す物でして」

小さな箱、大切、彼女に渡すもの……もしかして。

「指輪ですか!?」
「えぇ、まぁ」
「良いなぁ、頑張って下さい!」
「ありがとうございます」

はにかむ男性にエールを送った。プロポーズかぁ。良いなぁ。私もいつかされてみたいなぁ。その前に彼氏をつくらないとだけど。なんだか朝から幸せをもらえた気がする。


ーーしかしその次の日から、私の周囲で異変が起き始めた。

とある日、信号待ちの交差点で後ろから背中を押された。その時は何とか耐えたが、もう少し押される力が強ければ危うく車に轢かれるところだった。

そしてまたある日、突然上から植木鉢が落ちてきた。落ちる前に上から音がしたので気付いて避けることができたが、当たっていたら死んでいたかもしれない。


そう、起こっている異変とは"誰かが私を殺そうとしている"ということ。とうとうバーボンが動き出したのか。……いや、でも私は誰にも彼の正体をバラしていない。最近周りの人との接触が多かったから疑われているのだろうか。


考え込んで歩いていたせいか、私は頭上に落ちてくるレンガに気付くのが遅れてしまった。

「危ない!」
「っ!?」

突然誰かに腕を引かれた。視界の端で見えたのは私の顔スレスレで落ちるレンガだった。まただ、私は誰かに狙われている。腕を引かれていなかったら……、って今の声は。

「大丈夫でしたか?」
「……安室、さん」
「怪我は無いようですね。良かった」

大丈夫? 怪我はない? 良かった? 貴方がした事なのに何故そんな言葉を私にかけるんだ。もしかして私を安心させたところで、他の方法を使って殺されるのか。

「一体誰が……」
「白々しい」
「え?」
「助けていただいてありがとうございました。では」
「待って下さい。永愛さん!」

掴まれた腕を払って逃げるように走った。怖い。次は何をされるのだろう。恐怖で足に力が入らず、転けてしまった。体を起こしたくても足が震えていうことを聞かない。すると目の前に小さな手が差し出された。顔を上げるとコナン君がいた。

「ド派手に転けたな。大丈夫か?」
「へへ、恥ずかしいな。何も無いところで」
「ほら、掴まれよ。ひでぇ顔だけど何があったのか?」
「ありがとう。そ、そんなに酷いかな」

コナン君は小さな手で私の体を起こしてくれた。いま私酷い顔してるのか。

「何があったか無理に聞く気はねぇけどよ、暇ならそこの公園で休んで行くか?」
「うん」

近くの公園のベンチに腰掛けると冷えた缶ジュースを渡された。いつの間に自動販売機で買ってくれてたんだろう。行動がイケメンすぎる。コナン君にお礼を言い、ホッと一息ついた。

「バーボンってさ、あの蒸気機関車の時から何もしてきてない?」
「あぁ、特に何も。何だよ急に」
「……」

コナン君には話しても良いだろうか。バーボンの正体を知っているわけだし。

「狙われてるの。最近ずっと、何度も殺されそうになってて」
「!? どうしてそれを早く言わねぇんだよ!」
「ごっごめん」

「でも妙だな。永愛だけを狙ってるなんて。何かしたのか? それか本当にバーボンに狙われてるのか?」
「刺激はしてしまったのかもしれない。それに思い当たるのがバーボンしかいなくて」

そして今までの事を全て話した。コナン君は真剣な顔で顎に手を添え考えている。

「つまりバーボンの姿は見てないが恐らくバーボンだろうと」
「うん」
「うーん。今日は二回も狙われてて、しかもさっきは安室さんに助けられた。まだ分かんねぇけど、殺そうとした相手を助けはしないと思う」
「他に誰かいるって事……」
「そうなるな。犯人が分かるまで一人で行動するのは危ないだろうし……。蘭の家に居候できるか聞いてみるぜ」
「ダメだよ! 蘭ちゃんや毛利さんも巻き込みたくない。それにバーボンでないとしても組織の人かも分からないんだよ」
「オメーにしては正論だな。そうだなぁ……」

コナン君は首を傾げてうーんと唸った後、何か思いついたのかあっ、と声を漏らした。

「俺の家だったら安全だぜ!」

俺の家ってもしかして、工藤家……? そしてもしかしなくても沖矢さんがいるんじゃ……?



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