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ここ最近一ヶ月くらいは大学が終わるとすぐにバイトに行っている。土日もずっと。暇な時間が無いくらい。

安室さんの前では強がっていたが、家に帰って一人になると思い出して毎日体が震えた。所詮私はただの一般人。怖くて怖くて仕方がない。いつ自分が殺されるのかも、私の周りが殺されるのかも分からない。

ずっとバイトしているのも何も考えなくても良いからっていうのが理由。以前は接客業が多かったが、今はなるべく人と関わらないような梱包作業ばかり。最近誰ともコミュニケーションを取ってないな、とため息を吐いた。


バイトが終わり自宅へと歩いて帰る。スマホで時間を確認すると23時半だった。明日も朝から講義、昼から深夜までバイトだ。

家の付近まで帰ってきたので家を確認すると、窓から明かりが漏れている。快斗かな。……、会いたくないな。今日はどこかに泊まろうか。

家に背を向け歩き出そうとした時、腕を掴まれ立ち止まる。

「やっといた!」

聞き慣れた声に安心感を抱くが、それと同時にやってくる逃げ出したい気持ち。

「かっ、いと……」
「帰るぞ」

顔を後ろに向ければ真剣な表情をした快斗がいた。何でバレたんだろう。ここから家までまだ距離があるのに。
話したくないな、そんな気持ちが私の足を重くした。しかし思っている事は彼には伝わらず、掴んだ腕を離してはくれない。そうして腕を引っ張られたまま、家まで帰らされた。

家に入ると座らされ、テーブルにお茶が置かれた。そしてテーブルを挟み快斗も腰を下ろす。

「永愛、最近何してんだ」
「何って、バイトだけど」
「平日の夕方も中々帰ってこねぇし、土日もずっと出てるだろ」
「大袈裟だなぁ。毎日家には帰ってるのに」
「……身体、壊したらどうすんだよ」
「……」

快斗は眉を八の字にして悲しそうな顔をした。彼を悲しませてどうする。悲しむ顔は見たくない。ダメだダメだ、気持ちを切り替えなきゃ。

「気をつけるよ。そういえばこの間はありがとね。助けてくれて。あの後無事に帰れた?」
「この間? ……あぁ、船漕いで帰った」
「船を漕いで? ていうかどうして快斗はあの森にいたの?」

少し意地悪な質問だろうか。答えは知っているのに。目の前の彼は目を見開いた後、汗をだらだらと垂らしていた。分かりやすく焦っている。

「えっ、いやその……はっ、ハイキングに! 最近クラスで流行っててよ!」
「今時の高校生の流行りはハイキングなんだ。知らなかった」

よし、快斗も私もいつも通り。快斗は観察力が優れているから気を抜けない。

「事件が解決した後、コナン君と話があったみたいだけど面識あったの?」
「あ、あぁ。いや、初対面だけど助けてもらったしな。お礼に」
「本当に初対面? 前に私の家にコナン君が来た時、逃げたじゃん」
「あん時は急用を思い出したんだよ」
「へぇー」

快斗と話してたら元気になって来た気がする。最近誰とも話してなかったから気持ちも沈んでいたのかも。


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「永愛、やっぱ何かあっただろ」

さっきから無理して笑う目の前の幼馴染に、そう言い放った。永愛は下手くそな笑顔を崩し、今にも泣き出しそうな顔をした。

「なんにも、ない」
「……っ」

どうして俺に会った瞬間打ち明けねぇんだ。いつもそうしてんじゃねーか。

悩んでる時は俺に相談しろ。弱っちぃくせに。

一人で抱え込むな。他の奴じゃなくて全部俺に言えよ。


だって俺は……、永愛が……。

「俺は、永愛が……」
「ごめん」

「……ヘッ?」
「心配、かけたよね」
「お、おう」

焦った。てっきりフラれたのかと。ドクドクと心拍数が一気に早まった。

「でも、快斗にも言えない」
「……他の奴には言ってんのか?」

永愛は首を横に振る。誰にも言えないことか。何だ、コイツはいつの間に何に関わってんだ。ずっと平凡に暮らしてたのに。

「何で言えねぇんだよ」
「言えない、の」

これ以上は何も話さないとでも言いたいのか、下を向いてしまった。

「でも快斗と話せて元気出た。ありがとう」

また下手くそな笑顔。そんなに無理に笑うんじゃねぇよ。本当は泣きたいくせに。
お前は俺が守る。そんな気持ちを込めて、俺は永愛の頬を両手で包み込んだ。

「言えねぇならもう聞かねぇけど、俺はオメーのためなら何でもするから」
「あはは、何でもは無理だよ」

冗談じゃねぇんだけどな。この怪盗キッドーーオメーの最強の幼馴染に出来ないことはねーんだよ、バーロー。


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