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昨日の安室さんとの食事は、空腹に耐えきれず結局ご馳走になった。そして取引は止むを得ず、結ぶ事となった。私の周りの人に危害を加えられるのだけはごめんだ。私が黙っているだけで良いなら今のところは黙ってる事にしよう。コナン君も彼の正体は知っているし。


朝食を食べ終え、郵便受けの中を確認すると新谷宛てと書いた封筒が入っていた。なんだこれ。まさか安室さんが……?

封筒の中は大阪行きの飛行機のチケットが入っていた。他に何か入っていないか確認していると、机に置いてあったスマホが鳴り響き、早足で取りに行く。知らない番号からの電話だ。怪しいけどとりあえず出てみるか。

「はい」
『チケット届いてるやろ? 大阪来いや』
「あっ間違い電話ですね。切ります」
『オイコラァ!! 切んなアホォ!』

成る程、このチケットは服部君の仕業だったのか。切ってもまたかけてくるだろうと思いスマホを耳に当てた。

「というか大阪来いやってどういう意味? 何しに行けばいいの?」
『暇してると思ってな、誘ったったわけや』
「暇じゃないですー。悩み事が多いんです私ー。お断りしますー」
『そのチケット今日しか使われへんしな』
「それは勿体ないことをしたね」
『和葉も楽しみに待ってるんやけどなぁ』
「うぐっ……いっ行きます」

和葉ちゃんが待っていてくれるんだったら何としてでも行かなくちゃ。


********************

大阪の空港に着き外へ出ると、服部君らしき人がいたので駆け寄った。隣にはバイクが止めてあるが和葉ちゃんの姿は見当たらない。

「おう! こっちやこっち」
「こんにちは。和葉ちゃんはどこに?」
「おるわけないやろ。それよりお前ちょっと太ったか?」
「んなぁっ!?」

和葉ちゃんが待ってるっていうのは嘘だったってこと!? ムカついて変な声を出してしまった。肩パンをお見舞いしようと思ったけどあっさりとかわされ、馬鹿だと笑われる。剣道をやっているだけあって反射神経は良いのか。

「ムカつく……。それでここからとっても離れた所に住んでいる私を呼び出したわけは?」
「俺が暇やったから」
「はぁ!? もう! バカアホ! 自己中!」

こんな自分勝手な人生まれて初めて出会ったよ!? 暴言を吐き並べると、小学生かいなと呆れられた。あぁもう本当意味が分からない。

「そんな怒らんでもえぇやろ」
「逆に怒らない人なんている!?」
「ツーリングでもしよか」

ヘルメットを頭に被らされた。そしてヘルメット越しに上から頭をバンバンと叩かれる。痛い。

来てしまったわけだしいつまでも怒ってても仕方ないか。目の前のバイクを見てこれに乗せてもらえるのかな、と頬が緩んだ。

「乗ってみても良い?」
「まぁええけど」

エンジンのついたバイクに跨りテンションが上がる。うわぁ、なんか感動する。手に力を込めると服部君が「ちょお待て!」と叫んだ。

「免許あるんか?」
「え? ないけど」
「アホか!! 無免許運転する気か!」
「いてっ」

思いっきり後頭部を叩かれた。そして無理矢理降ろされ、服部君がバイクに跨る。

「お前は後ろや」
「はーい。私バイク乗るの初めてなんだよね」
「ならしっかり掴まっとけよ。落ちるで」

後ろに乗ればゆっくりと走り出す。初バイクだ。ギュウっと前の彼に捕まると、何故かスピードが遅くなり止まった。

「え、どうしたの?」
「いきなりくっついてくんな! ビックリするやろ!」
「だって掴まっとけって……」
「あー、もうえぇわ!」


それからの話は最近工藤はどうしてるんや、とか工藤の推理は俺の推理に負けてへん、とか工藤工藤工藤……。新一君の事どれだけ好きなんだ、と心の中でつっこんでしまった。声に出すと言い合いになるからやめたけど。


次第に道が渋滞してきて進んでは止まっての繰り返し。会話もなくなってきたし、段々眠くなってきた。


「オイ! バイクで寝る奴がおるか! 落ちたらどないすんねん!」
「つい……ごめん」
「全く、お前にはびっくりさせられっぱなしじゃ。次の信号曲がったら車通りも少なくなるから起きとけよ」
「はーい」

服部くんの言う通り、渋滞はなくなりバイクのスピードが徐々に上がった。いつの間にか横の景色は海で、風が気持ち良い。

「ねぇ服部君」
「なんや」
「ツーリングって楽しいね」
「せやろ。気分転換したい時にちょうどええねん」
「えっ、私が気分転換したいって何でわかったの!?」
「ハァ? 分かるわけないやろ。俺がや、俺が」

一瞬驚いたが、服部君はいつも通りの服部君だなぁ、と笑ってしまった。昨日はずっと神経を尖らせていて疲れたから、今日はいつもより気が抜けてしまう。

「……何かあったんか」
「まぁね」
「相談に乗ってやってもえぇで」

あの服部君が人の悩みを……。珍しいなと感じながらもどう答えようか迷う。正直に打ち明けてしまえば、彼の身も危なくなるかもしれない。それに新一君の耳に入ってしまうだろう。

「……」

どうしよう。なんて言おう。何か他に悩み事……。悶々と考えているとバイクが急に止まり彼がバイクから降りる。

「ど、どうしたの……?」
「……フン」

私のヘルメットを取りあげたかと思えば、私の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でた。突然の事に混乱する。彼の顔を確認しようと見上げると、眉間にはシワが出来ていた。

「な、なに!?」
「うっさいわボケ」
「……あー、えっと、その、ありがとね」

何となく心配してくれた気がしてお礼を言う。照れくさいのか彼は私から目を逸らし自分の頬をかいていた。



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