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「腹減って動けねぇ」
「じゃあお弁当にしよっか!」

元太君のお腹の音がさっきからずっと鳴りっぱなしだ。歩美ちゃんと笑いながら、肩から荷物を下ろす。
猪から何とか逃げ切った私達は、岩場で食事をとることにした。光彦君がレジャーシートを敷き、その上に皆が持ってきた食べ物を並べる。

「永愛、これみんなパーティー会場から?」
「うん、美味しそうでしょ?」
「おいおい……」

皆でこうやってご飯を食べる事なんて、あまり無いから遠足のようで楽しいな。並べられたサンドイッチやピザはとても美味しかった。流石お金持ちのパーティーの料理なだけある。

「美味しいね!」
「星空の下で食べるなんて最高ですね」

わいわいと騒ぐ子供達を見る快斗の目はとても優しくて、彼も意外とこの状況を楽しんでいるようだった。

「えーと、次は……」

光彦君が何を皿に取ろうか迷っていたところ、元太君が人参を乗せた。

「光彦、人参も食えよ」
「あー、人参苦手なんですよー」

「新一お兄さんは嫌いな物ないの?」
「あー、俺は魚がダメ」

歩美ちゃんからの質問に素直に答える快斗。でもそれ新一君じゃなくて、快斗が苦手な物じゃん……。

「魚がダメって、怖いんですか?」
「あはっ! おっかしー!」

魚が嫌いということが面白かったのか、子供達に笑われていた。そんなにおかしいか? と不思議そうに尋ねた快斗に、私も笑ってしまった。




********************


お腹が満たされた私達は、再び怪盗キッドを探しに歩き出した。もう暗くなってきたし、タイミングを見計らって皆でホテルに戻らないとな。

「何かあるよー!」
「何だあれ?」
「トロッコです!」

ちょうど五人が乗れるサイズのトロッコを見つけ、乗ることになった。段々とスピードを増すトロッコに、テンションが上がる。

しかし、何故か分岐レバーが動いたのが見えた。人は確かにいなかった筈だが、レバーが勝手に動いたのだ。

「ねぇ」
「あぁ、切り替えられた。……うわぁ!?」
「「「わぁっ!?」」」

レールが途中でなくなってるのが見える。しかもこの先は崖だ、このままだと下に落ちてしまう。どうにか出来る訳もなく、せめて子供達だけでも無事に、と思い皆覆い被さるように手を広げる。

「永愛! 俺に捕まってろ!」

快斗は私の手を引っ張り自分の首へと回す。そして子供達を抱きながら、落下した。


衝撃は受けたものの、快斗が守ってくれたので私や子供達は無事だった。しかし背中から落ちた彼はすぐに起き上がらなかったので、サァーと血の気がひく。

「かい、快斗!! 大丈夫!? ねぇ!!」
「……バーロー。大丈夫に決まってんだろ。……いててっ」

顔をしかめながらも起き上がった快斗にホッと安心した。

「かいと? 永愛さん、その方は新一さんじゃないんですか?」

「エッ!? いや、かいと……う! えっと怪盗キッドを探しに行かなきゃダメでしょ!? 新一君!」
「おおおおおおっおう!! そうだな!」

危ない危ない、誤魔化せただろうか。……って別にこの男が快斗だろうが新一君であろうが、隠す必要はないのに。

「あーーー! これ見て!」

歩美ちゃんが何かの箱を手にして、声を上げた。確認すると箱の中身は宝石だった。

「ん?」
「なんだなんだ?」
「アルテミスの涙です」
「キッドが落としてったんだ」

子供達が興奮する一方で、焦りながらズボンのポケットを確認している快斗を見て、確信した。アレはさっき盗んできた宝石だということに。

「歩美ちゃん、大手柄ですよ!」

皆がまじまじと宝石を見る中、快斗はこの宝石が偽物だと言い放った。本物と偽物の見分け方まで説明するものだから唖然とした。

「宝石に詳しいんだね、知らなかった」
「お、おう。まーな!」

「何か聞こえねぇか?」

そう元太君に言われ、耳を傾けると草むらから猪が飛び出てきた。

「またぁ!?」

再び出現した猪に驚きながら皆で逃げる。早くこんな危ない森抜け出さないと……!

「扉があります!」
「何でもいい! 逃げ込め!」

何でこんな洞窟の中に部屋が、という疑問は捨てて部屋に入り扉を閉める。無事猪から逃げ切れた。
部屋の中へ進むと、偽物の宝石が沢山置かれていた。どうやらパーティの主催者である根津社長は、宝石や美術品を偽造していたらしい。

「どうやら見てはいけないものを見てしまったようだな」
「「!?」」
「秘密を知られた以上、死んでもらう」

根津社長とその部下達から、こちらに銃口を向けられる。どうしよう、武器はない。隠れる場所もない。この状況で子供達を守れるだろうか。


「心配すんな、俺を信じろ」
「……っ、うん」

ーーその一言で煩かった心臓が静かになった。冷や汗が治まった。不安だった気持ちがなくなった。快斗と一緒なら大丈夫。


すると突然、根津社長達の方へ見覚えのある大きなサッカーボールが飛んできた。そして快斗がトランプ銃でサッカーボールを打ち破裂させる。その間にコナン君がスケボーで攻撃。……今普通にトランプ銃使ったけど、あれっていつもキッドが使ってるものだよね? 見てないフリするから良いけど。

いつの間にか敵は皆倒れていた。銃を持った相手でもこの二人が力を合わせれば、怖いもの無しだ。

「ありがと、快斗」
「おう。子供達を頼むぜ」
「うん」

コナン君にもお礼を言い、子供達とホテルへ帰る。何やら二人は話があるようだったので、残して帰った。しかしコナン君はこの後ホテルに戻ってくるとして、快斗はハンググライダーも壊れてるしどうするんだろう。お金、ちゃんと持ってきてるのかな。


……まぁいっか。

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