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青子との買い物から一週間程経った休日の夜、彼女から電話があった。快斗が私の家に来ていないか、と。来ていないと返事をしてスマホを机の上に置いたのと、玄関のドアが音を立てたのはほぼ同時だった。

ドアスコープから覗いてみると少年が立っていた。キャップ帽を被って下を向いているため、はっきりとは分からないが恐らく……いや絶対、快斗だ。

青子に快斗が来ていたというメッセージを先に入れておいた。でも青子は何故彼が家を出ている事を知っていて、こっちに来ていないか聞いたのだろう。そんな疑問を持ちながらドアを開けた。

「永愛っ……」
「えっ、ちょっと!?」

ふらりと倒れてくる身体。慌てながら彼の身体を支え、自分の体制を整える。息が荒く熱い身体。思い当たることがあり溜息を吐いた。

「……熱があるのに来たのね」
「へへっ、顔が見たくてよ……」

顔が見たいって……。風邪引いてる時は寂しくなるし気持ちは分からなくもないけど、私は母親か。肩を貸しながら自分のベッドまで歩く。寝かせて彼の上に布団を掛けた。

冷蔵庫からスポーツドリンクを出して快斗に飲ませた。私はどこに腰掛けようかと少し迷い、ベッドからは離れたところに敷いてある座布団の上に座る。彼とはもう長い付き合いだが、こんな気まずい雰囲気になったのは初めてかもしれない。

「快斗、あのさ……」
「ごめんな。永愛」
「えっ?」
「オメーを……巻き込みたくねぇんだ」
「それって」
「ぐー……」
「え?」

振り向くと彼は眠っていた。寝言か、そう思うとふっと気が抜けた。

巻き込みたくない……。そっか、そうなんだ。彼がそう望むなら知らない方が良い。彼は私の大切な幼馴染に変わりはない。心にあったモヤモヤが吹き飛んだ気がする。

彼の額に冷えピタを貼った後、私もいつの間にか眠ってしまっていた。




********************


目が覚めると窓越しに見える空は真っ暗だった。快斗はいびきをかきながらぐっすりと眠っていたので、体調が回復したのだろう。

もう一度眠ろうかとそう思っていた時、彼の半分開いた目と目が合った。

「……永愛?」
「えっと、おはよう?」
「わりー、寝てた。今何時だ?」
「十時前だね」
「あー……寝るか」

そういって彼は私の腕を引っ張り、自分の方へと引き寄せた。寝ぼけているのかどうかはわからないが、彼の腕の中は落ち着くのでそのまま目を閉じた。




********************


ピンポンピンポンと目覚ましのように鳴り続けるインターフォンの音で目が覚めた。快斗も目が覚めたようだが、昨晩のことに覚えがないのか同じベッドに寝ていることに非常に驚いている様子だった。

「もしかして……、同じベッドで?」
「うん。快斗が引っ張ったんだよ?」
「覚えてねぇ」
「体調は大丈夫?」
「あぁ。ていうかずっと鳴ってっけど行かねぇの?」

はーいと返事をしながら玄関に走ると、コナン君の声が聞こえた。


「快斗! 前に話してた小学生のコナン君って子が来てるんだけど上げても良いかな?」
「ハァ!? ちょちょちょっと待て!!」
「どうしてそんなに焦ってるの」

焦る快斗を無視してドアを開けると、コナン君がスケボー片手に立っていた。

「こんにちはー」
「よう。中騒がしかったけど大丈夫か?」
「うん。あの幼馴染が騒いでただ……け。あれ?」

快斗のいた方を指すとそこには誰もおらず、私もコナン君も首を傾げた。ベランダの鍵が開いているので、あそこから外に出たのかもしれない。

「どーした?」
「うーん、幼馴染が消えた」
「オメーの幼馴染は忍者か何かか?」

コナン君には乾いた笑いを返すしかなかったが、一体彼はどこに行ったんだろう。二人は初対面のはずだけど、快斗が顔を合わせたくないという事は、何らかの形でコナン君を知っていることになる。

そう考えてハッとした。キッドの正体は快斗で合っているはずだ。そうするとコナン君はキッドの天敵なのか。道理であんなに焦っていたわけだ。


「ごめん、それで何か用だった?」
「明日、空いてるか? ホテルでパーティが開催されるんだけどよ、そこにキッドが現れるらしい」
「空いてるけど……。キッドねぇ」
「じゃあ決まりだな。明日十一時、博士の家の前集合な!」
「強引ですね、君は」

キッドの正体を知ってから会うのは初めてだ。周りから不審に思われないよう気をつけなくちゃ駄目だな。

快斗の秘密を知ってしまったという事は、暫くの間本人には内緒だ。



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