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小学生の頃、家が近所で登校班が同じだった私達三人は、快斗と青子が人懐っこい性格だった為かすぐに仲良くなった。年が離れているのも気にせず、よく家に遊びに行ったりした。

当時から友達が少なかった私にとって二人はかけがえのない存在で、二人がいるから毎日が楽しかった。


中学生になると当たり前の事だが年下の二人はまだ小学生で、私一人になってしまった。

「私も二人と同じ年が良かったな……」
「そうだね……。青子も永愛と同じ気持ちだよ」
「俺達もすぐ中学生になるんだし、それまで友達いっぱい作って待ってろよな」
「ハァ、私に友達なんてできないよ。それに二人が中学生になる頃には私は高校生なんだよ」
「大丈夫! 永愛の笑顔ってとっても可愛いんだから!」
「まずは誰かに声を掛けてみれば良いんだよ」

二人が背中を押してくれて、中学生の初日から勇気を持ってある女の子に声をかけた。そしてその子と意気投合し、それからずっと一緒にいた。高校生になるといつの間にか中学生の幼馴染の二人ともと仲良くしていて驚いた。

その子はいつも口癖のように「永愛ってあの二人に愛されてるわね」と言っていた。

いつも私の事を大切に考えてくれる二人にいつまでも迷惑をかけてられない、と大学は少し離れた所を選び、一人暮らしを始めてみたけどやはり寂しい気持ちが強かった。それでも二人は変わらず会いに来てくれる。


「会いたくないなんて……なんで言っちゃったんだろうなぁ……」

フーッと溜息を吐く。自分が何をしたいのか分からない。快斗を信じてあげられない自分が醜い。キッドの正体が快斗である確率が高いだけで、事実では無いんだから私が勝手に裏切られたような気持ちになっているだけだ。

ベッドに腰掛けた時、インターフォンが鳴った。そして玄関の向こうからよく知った女の子の声。どうしたものかと迷いながら玄関のドアを開けると、手を掴まれた。

「永愛! 出掛けよう!」
「あ、青子……。ごめん今そんな気分じゃ」
「バーゲンが始まっちゃうから早く着替えて!」
「えっと……、うん」

彼女の押しには昔から弱い。出掛ける用意をして彼女の隣に並ぶ。

「この間、永愛先帰っちゃったじゃない?」
「うん、ごめんね」
「どうして永愛が謝るのよ!体調悪かったんでしょ。無理して付き合わせちゃってごめんね」

快斗がそう青子に言ったのだろうか。とりあえず今は話を合わせることにしよう。

向かった先は大型のショッピングモール。セールだからと青子は服や小物を沢山買っていた。気持ちを切り替えるためにも私も沢山買って気を紛らせよう。




********************


「たっくさん買っちゃったねー」
「あはは、そうだね」
「バッグの争奪戦は激しかったよね。青子二つしか取れなかった……あ」
「……?」
「快斗」

前から快斗が歩いてくる。私たちが立ち止まっていることにより、彼も私たちに気づいて立ち止まる。

「よ、よう! 奇遇だな。買い物か?」
「そうよ。永愛と二人でデート中なんだから。羨ましいでしょー」
「うらやましいわけ……」
「……青子、先行くね」
「えっ!? 待って青子も行く!」

彼の視線が気になったが、あえて目を合わさずに通り過ぎた。後ろで大きなくしゃみが聞こえる。

「あーあ、だからこの前すぐに家に帰るよう言ったのに」

彼の方を向いてため息混じりに呟いた彼女の一言が気になり、どういう事か尋ねた。

「この間の遊園地で永愛が帰った後、快斗ね……噴水に落ちそうになった子供を助けて自分が落ちちゃったのよ。それですぐ帰ってお風呂に入ったらって言ったんだけど、心ここにあらず状態で暫くボケーってしてて」
「そう……」
「学校でもくしゃみや咳してるし、多分風邪引いてると思うんだけど、俺は風邪なんか引いてねーって言うのよ!? 折角心配してあげたのに!」

きっと私のせいだ。振り向くと遠くにいる快斗の後ろ姿があって、またくしゃみをしていた。悪化しないと良いけど……。

「快斗が心配?」
「えっ」
「顔にそう書いてあるよー。まっ、どうせ快斗の事だから、永愛に失礼な事でも言って怒らせたんでしょ」
「……」
「何があったかは知らないけど、快斗めちゃくちゃヘコんでるみたいだから、ちょっとだけ許してあげて?」
「……っ、うん」
「じゃあ今日は買い物付き合ってくれてありがと!」
「こちらこそ。……気分転換になった、ありがとう」

青子は良かった、と言って笑顔で帰って行った。気を遣わせてしまったのかな。快斗と青子のちょっとした喧嘩は日常茶飯事だけど、私と二人のどちらかが喧嘩する事は滅多にない事だし。


沈んだ気持ちを追い払うように両頬を叩いた。


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