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「永愛ー! 会いたかったよー」
「青子! なんだか久しぶりだね」

青子が迎えてくれるなり久しぶりと抱きついてきてくれた。彼女の頭を撫でながら中に入ると、青子のお父さんと快斗が椅子に座っていて挨拶をした。食卓には美味しそうなハンバーグが並んでいる。

私も席につき早速ハンバーグを食べ始める。やっぱり青子の手料理は最高だ。お嫁さんに欲しい。


ふと青子のお父さんが私の隣に座る快斗をジッと見つめている事に気がついた。新聞を真剣に読んでいたのかと思っていたがどうやら違うらしい。

「快斗、青子のお父さんに何かしたの?」
「いんや、何も」

小声で話しかけると快斗も青子のお父さんの方に視線を向ける。すると彼は咳払いをして新聞を読み始めた。

「そんなむすっと食べてないで美味しいとか不味いとか何とか言ったらどうなの!?」

無言で食べる私達を見て青子が声をあげた。美味しいか不味いかなんて決まってる。

「最高に美味しいー!」
「ありがとう! 永愛だけよ。そんなに美味しそうに食べてくれるのは」
「フッ、不味くても不味いなんて言えねぇだろ」
「それって要するに不味いってことじゃない!」
「だってよ。青子のハンバーグっていっつもぐっちゃぐちゃに崩れちゃうじゃねぇかよ」
「ひっどーい! 折角作ってあげてるのに」

夢中でハンバーグを食べていると二人の言い合いが始まってしまった。昔から二人はよく喧嘩をしていたが、これが二人の普通なのだ。二人の喧嘩を横目に私は黙々とご飯を食べた。

「ごちそうさま」
「ちょっと! まだ残ってる!」
「いらないなら食べるよ」
「おう。食べ過ぎて太るなよ」

席を立ち部屋を出た快斗のハンバーグを食べる。折角青子が作ってくれたのにね、と彼女に言うとまた抱きつかれた。

「でもどうしたんです? ずっと快斗の事見てましたけど」
「……あぁ、ずっと考えててな」
「いきなりどうしたのよ、お父さん。 真剣な顔で」
「快斗君は怪盗キッドだ」

「「えっ」」

青子のお父さんのいきなりの発言に二人して固まってしまった。快斗がキッド……それを疑ったことは何度かあったが違うだろうと自分に言い聞かせ解決していた。

でも急にどうしたんだろう。少しの沈黙後、青子が何寝言いってんのよと笑った。しかし彼女の父は素顔を見たと真剣な表情で訴え、更に怪盗キッドと快斗の共通点であるマジックを述べた。

「お父さん……」
「……」
「怪盗キッドは今度の日曜日を予告した」

「快斗が怪盗キッドなわけないでしょ!」
「その証拠は」
「だって快斗は……今度の日曜日三人で出かける約束してんだから! ねっ永愛!」
「う、うん!」

私も疑った事はあるし、あの怪盗の化けの皮を剥ぐ良い機会だ。

疑う父に怒った青子は自分の部屋へと向かうので私もついていく。彼女は部屋に入るなりベッドにダイブした。

「永愛はどう思う?」
「私は……。変装ばかりしてるキッドの素顔なんて分からないから、暴いてやりたいなって思ってるよ」
「私も! 今度の日曜日、快斗が怪盗キッドじゃないってお父さんに証明してやるんだから!」
「その事なんだけど、私さ……」


********************


日曜日、快斗のことは青子に任せて私は怪盗キッドが宝石を盗みにくる現場に来ていた。今のところ二人は遊園地でデート、キッドはまだ来ていない。快斗とキッドが同時に別の場所にいる事がわかれば、同一人物でない事が証明できる。前に疑っていた時そうすれば良かったのか。

しかし快斗は非常に頭が良いし、キッドも今まで捕まっていない怪盗であるから頭の回転が速いだろう。同一人物だとしたらこの状況を上手く切り抜けられる。


二人の共通点を挙げればあげるだけ本当にそうなのではないかと思ってくる。しかしあの快斗の口からあんなキザな台詞がポイポイと出て来ていると思うと想像できない。


でも本当に同一人物だとしたら……? 中森警部に快斗を差し出す? それともキッド側につく?

「永愛ちゃん、大丈夫か? 顔色が悪いようだが」
「えっ? あ、大丈夫です。今日は本当にありがとうございます。連れてきていただいて」
「協力してくれるなら大歓迎だ。今日こそキッドを捕まえてやる!」
「頑張りましょう!」

まだキッドが来るまで時間がある。その間に作戦を練らなければ。


ここから遊園地までどれくらいの時間が掛かるのか、どの交通手段が一番早いのか。考えれば考えるだけ私の頭は混乱した。コナン君を呼べば良かったものの、予想していた結果がもし起きてしまったらと考えるのが怖くて呼べなかった。

青子のように快斗がキッドなわけないと強く言えたら良かったのに。

予告時間が迫る中、私は警備員の格好に変装し怪盗を待った。

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