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『緊急連絡です! 只今当列車の8号車で火災が発生致しました! 7号車と6号車のお客様は念の為、前の車両に避難していただくようお願いいたします!』

列車内に放送が鳴り響いた。6号車にいた皆は一緒に逃げるだろう。でも、私は哀ちゃんを見つけ出さないと。スマホを取り出して蘭ちゃんに電話をかける。

「蘭ちゃん?」
『もしもし? 永愛ちゃん今どこにいるの!?』
「大丈夫、私は安全なところにいるから。蘭ちゃん達はちゃんと避難してる? それと哀ちゃん見てないかな?」
『私は園子や子供達と一緒に前の車両に来てるんだけど、哀ちゃんはまだ見つかってなくて……』

一体哀ちゃんはどこに行ったんだろう。でも蘭ちゃん達と合流してないってことは7号車か、もしくは……火元の8号車。

危険かもしれないけどもし哀ちゃんがここにいるのなら連れ戻さなければならない。ふと茶髪の女性の後ろ姿を見つけた。あの髪型、見たことある。もしかしてあの子、大きくなっているけど……。

「あの、哀ちゃん……だよね!? 元の姿の!」
「!?……っんでオメーが!」
「え?」
「こっちに隠れてろ! ぜってーここから出るんじゃねーぞ!! いいな!?」
「えっ、は、はい」

8号車の後ろまで抱えられて小さな部屋のようなところに降ろされる。哀ちゃん力持ち……。

「誰が来てもオメーは静かにしてろよ!」

目の前の彼女は哀ちゃんの様で哀ちゃんじゃない。しかし正体が誰であれこんな必死な顔でここにいろと言われると、何か危険なことでもあるのかと不安になる。

薄暗い所に毛布のような物を頭から被せられた。大人しく腰を下ろすが心臓の音は大きくなるばかりだ。彼女の8号車へ戻っていく遠ざかる足音とは別にコツコツと大きくなる足音が聞こえた。

「さすがヘル・エンジェルの娘さんだ……。よく似てらっしゃる」

男性の声がする。誰だろう、でもよく知っている声だ。


「初めまして、バーボン……これが僕のコードネームです」

この声は、安室……さん?
今バーボンって……? バーボンといえば危険な黒の組織の一人であり、哀ちゃんの命を狙う人物。そんな、あの人が悪い人だなんてあり得ない。そう思って毛布を被りながら、恐る恐る声のする方へ歩く。

そこには哀ちゃんだろう女性の後ろ姿と、怪しげな笑みを浮かべる安室さんがいた。やっぱり、声の主は安室さんなんだ。

気付かれないように元の場所へ戻り、腰を下ろす。


じゃあ毛利さんの弟子になったのも、ポアロでアルバイトをしていたのも全部哀ちゃんに近づくため? 皆に、私にも優しくしてくれたのも全て……。

「嘘だったってこと?」

ガツーン、と頭を叩かれた様な感覚だった。とても信頼していた人に裏切られるなんて。


「では手を挙げて移動しましょうか。8号車の後ろにある貨物車に……」

二人はこちらへ移動してくる。バーボンに見つからないように身を縮める。見つかったら私も持ってる銃で殺されるのかな。組織の人って平気で人を殺すんだよね。怖いなぁ、あの人がそんな人達と同じだなんて。

頭の中がいっぱいで二人が会話しているのも殆ど聞こえない。ぼーっとしていると急に手を引っ張られ、その直後爆風によって吹き飛ばされた。

「えっ……!?」
「大丈夫ですか? お姫様」
「は、はい? その口調、それに白いハンググライダー……もしかしてキッド?」
「えぇ」

さっきの爆音と爆風で意識がはっきりとしてきた。私と哀ちゃんの姿をしたキッドは、ハンググライダーで空を飛んでいる。そしてキッドにお姫様抱っこされている事に気が付き、少し恥ずかしくなる。後ろを見るとさっきまで乗っていた列車が燃えていた。

「何でそんな変装して……」

そう聞こうと思ったら着信音が鳴った。

「その話は後で。私のポケットに携帯電話が入っているので、取ってスピーカーにしていただけますか? 恐らく名探偵からだと思うので」

彼のポケットに手を入れて携帯電話を取り出す。そして言われるがままにスピーカーのボタンを押した。するとよく知った声が耳に届く。

「おー、無事だったか?」
「聞いてねぇぞ! 何なんだ!? あの危ねぇ奴らはよ! それにコイツがいることもな!」
『コイツ?』
「新谷 永愛だよ!」
『ハァ!? そういえばいねぇなと思ってたけど……。無事なんだろうな!?』
「そういえばって……。それに作戦あるならちゃんと教えてよ……」
『永愛! 無事で良かったぜ』
「ハンググライダーを貨物車に隠してなかったら、今頃二人一緒に黒コゲだぞ?」
『オメーの事だからそんぐらい用意してると思ってよ。まぁこれで貸し借りはチャラってことで』
「当たり前ぇだ!」
『あ、その携帯と永愛もちゃんと探偵事務所に送り返してくれよな!』
「な……あ、おい!?」

一方的に切られた電話。コナン君、私の扱い雑じゃない!?

「キッドってコナン君に対してはそんな感じなんだ」
「私が優しくするのは女性限定なので」
「キザだなぁ……。さっきの話からするにコナン君に頼まれて哀ちゃんの変装をしたんだよね?」

私の問いかけに頷いた彼は、ここまでの経緯を教えてくれた。どうやら哀ちゃんは別の場所で保護されていた様だ。私は自分から危険に足を踏み入れていたのか。

その後、私を家の近くまで運んでくれ携帯を渡され彼は去って行った。また髪に口づけされた。

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