一通の封筒がポストに入っていた。中を見れば蒸気機関車の招待状だった。
蒸気機関車かぁー! それにしても何かのキャンペーンにでも当選したのかな。応募した覚えないけど。でもたまには一人旅っていうのも悪くないか!
ということで、来てみたわけだけど……。
東京駅に着くと見知った顔がたくさん。蘭ちゃんに園子ちゃん、それに少年探偵団と阿笠博士。思わず溢れた声に反応され皆の視線が集まった。
「もしかして、皆も……!?」
「うん。永愛ちゃんも?」
「何故か招待状が届いて」
ベルツリー急行のオーナーが鈴木財閥のようで、皆も来ていたみたいだけど園子ちゃんが招待状をくれた人じゃなかったってことはやっぱり何かに当選したんだな。
クイッと服が下に引っ張られた。目線を下げるとコナン君と目が合う。「ちょっと来てくれねぇか」そう言われた気がした。人気の少ない方へと歩く彼についていき、足を止めた。
「どうしたの? コナン君」
「今日、灰原についててやってくんねぇか?」
「哀ちゃんに? うん、良いけど」
「頼んだぜ」
「うん」
……そういうことか。詳しくは言ってくれなかったけど、つまりこの列車内で哀ちゃんが狙われるってことだろう。そうすると組織の人が……多分この前話したバーボンが乗っている。哀ちゃんについていてあげないと。
子供達と同じ車両に乗り、哀ちゃんの隣に座る。マスクをした彼女は風邪を引いているらしい。
「すごいすごーい!」
「駅、みんなすっ飛ばしてるぜ!」
「何でも終着駅までほぼノンストップらしいですから……」
列車が発車して興奮気味の子供達。私は窓から外を眺め、持ってきたお菓子を広げて食べていた。
「それより気になるのは、この列車の走行中に出される推理クイズだな」
「永愛おねーさんは謎解きは得意なの?」
「いやぁ、からっきしダメだね」
「そうなんですかー」
「俺たち少年探偵団がいるからには勝ったも同然だぜ!」
「そうだね! 頼りにしてるよ!」
子供達は嬉しそうに微笑んで更にテンションが高くなった。その時、ドアをノックする音が聞こえ、コナン君と博士が廊下に出る。しかしそこには誰もおらず、一通の手紙が落ちていた。
「おめでとう……あなたは探偵役に選ばれました……。10分後7号車のB室で事件が発生しますので、捜査されたし……だってよ」
それを聞いて嬉しそうな反応を見せた三人とは反対に、難しい顔をするコナン君。
「哀ちゃんは捜査しに行く?」
「そうね。折角のミステリートレインだもの」
「うんうん! 楽しまなきゃ損だね!」
そして博士を残して皆で7号車へ向かうが、男性が銃で撃たれる瞬間を目撃し銃を持った人が逃げた。
「スゲー! 本物みてーじゃん!」
「追いましょう!」
本当に撃たれてるように見えたけど、割とリアルに再現する推理クイズなんだなぁ。走って行く皆の後を追いかける。
「これってミステリーっていうより……」
「ただの鬼ゴッコだな」
哀ちゃんとコナン君が呆れながら走る後ろで、犯人を捕まえたら勝ちなのかなと疑問を口にしたら「多分な」と返ってきた。
少し走ると先に行った三人が立ち止まって辺りを見回していた。
「見失っちまったぜ」
「個室ばっかりだから部屋に入られたらわかりませんね」
「君達?」
後ろから車掌さんが私達に声を掛けた。そして次に言ったのだ。推理クイズは一時間後に発表される、と。
「じゃあさっきの手紙は? それに銃で撃たれてたのはっ……」
「!!」
「お、おい、コナン!?」
コナン君は7号車へと走って行った。後を追うように皆が駆けていくが、哀ちゃんは動かずにいたので顔を覗き込むと怯えた表情をしていた。
「哀ちゃん、大丈夫?」
「いる……」
「っ!」
誰だ、どこにいる。なるべく体を動かさずに目で周りを見る。後ろのドアから出てきたのは全身真っ黒の右頬に火傷の跡がある男だった。まさかあの人が組織の……。
「哀ちゃん、永愛おねーさん?」
歩美ちゃんの声でハッと我に返る。怯える彼女に小声で話しかける。
「あの人が組織の?」
「貴女、どうして……!」
「哀ちゃん見てたら分かるよ」
何となくだけど、とそう付け足せば彼女は黙った。そして歩美ちゃんにまた声を掛けられ、三人で皆の後を追った。
コナン君達と合流し、先程事件のあった7号車の部屋のドアを開けた。
「あら、コナン君どうしたの?」
しかしその部屋にいたのは蘭ちゃんと園子ちゃん、真純ちゃんだった。レディの部屋に入るときはノックぐらいしなさいよ、と園子ちゃんに言われてこの部屋は8号車と答えられたコナン君は、廊下に出てきた。
真純ちゃんも来てたんだなぁ。後でまた挨拶しようっと。
「車両を間違えた気はしなかったけど」
「仕方ないですよ。車両番号には車体しか入ってませんし、部屋の扉にはアルファベット一文字しか表示されてませんから」
「おぉ! どうじゃった? 推理クイズの方は」
蘭ちゃん達の乗る8号車からまだ1号車分しか歩いていないはずだ。それなのに扉から6号車にいるはずの博士が出てきた。皆がその事に気付き不安の声を上げる。7号車はどこに行ったの?
「どどど……どういう事?」
混乱してきた。